ブラッド・メルドー『ライド・イントゥ・ザ・サン』ジャケット写真

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 ブラッド・メルドー(Brad Mehldau)が、最新作『ライド・イントゥ・ザ・サン』を8月29日に全世界同時リリース。また、同日に日本盤もリリースする。

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 今作は、メルドーが敬愛しているというシンガーソングライター エリオット・スミス(Elliott Smith)の楽曲を、本質はそのままに独自の解釈で編曲した“ソングブック的作品”だ。日本盤は、メルドー本人による詳細なライナーノーツの完全翻訳や、歌詞/対訳を掲載した別冊ブックレットを同梱したSHM-CD仕様となり、メルドーの深遠な解釈を日本語でより分かりやすく理解できる内容となる予定だという。

 また、今作にはグリズリー・ベアのメンバーとしても活動するシンガーソングライターのダニエル・ロッセン、パンチ・ブラザーズのシンガー/マンドリン奏者のクリス・シーリーがボーカルで参加し、ベースはメルドーとも共演したことがあるフェリックス・モーズホルム、ドラムはマット・チェンバレンが担当。さらに、メルドーが2010年に発表したアルバム『ハイウェイ・ライダー』でも指揮を務めたダン・コールマン率いる室内オーケストラといったアーティストたちも参加している。エンジニアとミックスはジョン・デイヴィスが手掛けた。

 収録楽曲は、エリオットによる楽曲10曲に加え、「エリオットの作品にインスピレーションを受け、サウンドに反映させた」というメルドーによるオリジナル楽曲4曲や、エリオットもカバーしたことがあるビッグ・スターの「サーティーン」、メルドーが「エリオットの先見の明のあるゴッドファーザー」と語るニック・ドレイクの楽曲「サンデイ」を追加した全16曲となる。

 なお、今作より先行し、「トゥモロウ・トゥモロウ」と「ベター・ビー・クワイエット・ナウ」の2曲が現在配信中。マシュー・エッジントンの監督による、これらの楽曲のレコーディング風景を捉えたビデオもメルドーの公式YouTubeチャンネルで公開されている。

 エリオット・スミスというアーティストに焦点を当てた作品を完成させたメルドーは、長年にわたり自身のレパートリーの一部となった敬愛するアーティストと初めて知り合い、彼の音楽を聴き始めたころを振り返り、「(ニューヨークで数年暮らした後ロサンゼルスに移り住んだ時、)ラルゴというクラブに集まる、素晴らしいシンガー・ソングライターたちのシーンが存在していた。そこにはルーファス・ウェインライトやフィオナ・アップルといったアーティストがいて、エリオットもそこにいた。そして、しばらくそのシーンで活動していたミュージシャンたちが、金曜日の夜にジョン・ブライオンが率いるギグに参加しにやってくるようになった。私はジョンと共に、エリオット自身の楽曲を演奏していた。その経験は、数年にわたり花開いたソングライティングのルネッサンス的なものだと感じた」と語っている。

 続けて、メルドーは「エリオット・スミスは、独特のハーモニーを通してだけではなく、明暗の融合を巧みに表現する稀有な才能の持ち主だった」としており、「具体的には、メジャーとマイナーを見事に組み合わせる独自の手法を持っていたんだ。それは、私がこのアルバムでも取り上げている楽曲『トゥモロウ・トゥモロウ』の最後のヴァース・パートの直前に彼が用いた、独特かつ魅惑的なコード進行にも表れているよ。私は今回のこの楽曲を演奏する際、その進行を使い、ピアノ・ソロに展開させているんだ。こうしたマイナーとメジャーの組み合わせによる序盤の展開というのは由緒ある手法で、僕はシューベルトやブラームスなどの音楽から影響を受けている」とコメント。

 さらに、「とあるブラームスの伝記作家が、自身の作品の1つについて“涙を浮かべながら微笑む”ようだと語った。その表現は、アルバムの1曲目を飾るエリオット・スミスの楽曲『ベター・ビー・クワイエット・ナウ』にピッタリだと思った。この曲は、恋人との別れを歌った優しくもとても切ない歌だからね。その歌詞の中で主人公は、悲しく微笑みながら、さようならを言うんだ」と話す。

 また、「アルバム・タイトルの『ライド・イントゥ・ザ・サン』は、収録した楽曲の1つ『カラーバーズ』の歌詞の中に出てくる美しい響きを持った一節だ」とメルドーは言う。「エリオットのオリジナル楽曲の歌詞はこんな感じだよ、<みんな、僕が太陽の中に飛び込むのを待っている/Everyone wants me to ride into the sun>ってね。楽曲を聴いた時、もうこの世には存在しない誰かと一体になったかのように感じた。“ああ、彼は今ここにいるんだ”って。<太陽の中に飛び込む>と言うのは、おそらく“彼”と一緒に終わることのない太陽への旅に乗り出すということなのだと思う。うまく言えないけど…何か神秘的なものを感じる」と明かした。

(文=リアルサウンド編集部)