大学生アスリートが部活をしながらアルバイトをするそれぞれの理由に迫る【写真:中戸川知世】

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人気は飲食店…アルバイトに励むそれぞれの理由、陸上関東インカレで聞いた

 大学入学を機に、多くの学生が行うアルバイト。学費や生活費、娯楽の費用という経済的な理由から、社会経験を積むためなど理由はさまざまだ。一方で、体育会学生として大学生活を陸上に捧げる大学生アスリートは、学業と部活の両立で多忙な日々を送るが、同じようにアルバイトをしている選手も少なくない。

 5月8日から4日間、神奈川の相模原ギオンスタジアムで行われた陸上の第104回関東学生競技対校選手権(関東インカレ)。関東No.1の称号を懸けて、熱戦が繰り広げられた。大学生活を陸上に捧げる学生たちはどんな日常を過ごしているのか。大会を取材した「THE ANSWER」はアルバイト事情を聞いた。

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 現場では、さまざまな大学生アスリートの日常が浮かび上がった。

 アルバイト先として最も多かったのが飲食店。「大戸屋(時給1163円)」「バーミヤン(時給1400円)」「味ん味ん(時給1250円)」などのチェーン店から自営業の店までさまざま。飲食店を選ぶ理由は「賄いが食べられるから」という意見が多い。特に一人暮らしや寮生活を行う学生にとって、食費は大きな出費の1つ。大戸屋は300円で定食が食べられたり、自営業の店では無料で提供してもらえたりと自己負担を減らせるメリットがある。

 学校の特性を生かしたアルバイトもある。スポーツ推薦がない難関校の慶大や一橋大では塾や家庭教師のアルバイトをする学生が多いという。家庭教師で小学3年生を教える1500メートルの選手(1年)は時給2000円、「受験生を担当すれば3500円くらいになる」と教えてくれた。

 アルバイト代の使い道についても、それぞれの事情がある。前提として学費に加え、一人暮らしの場合は生活費用、そのうえに競技費用がかかる。一般学生と同じように保護者の金銭的支援を受けていることが多いが、「一人暮らしで仕送りだけだと、陸上費用が賄えないから」と、競技費用捻出のためにアルバイトに励む選手たちが多い。

 メーカーからの用具提供があるトップクラスでない限り、自費で試合用や練習用のスパイク、ウェアをそろえるのが当たり前。なかには社割を利用できるスポーツ用品店で働く選手もいる。さらに「娯楽」「奨学金の返済」といった理由もある。

 トップアスリートも「デュアルキャリア」を大切にする時代。大学生活で競技を引退し、就職活動をして一般就職する選手の方が多い。働く理由を「社会勉強のため」とする学生や、「自身が通っていた学童保育に恩返しをしたい」と話す学生もいた。

 一方で、今回話を聞いたなかには「特別な事情がない限り禁止」「1年生のうちは禁止」など、規則が設けられている大学もあった。この規則について「お金はない」と本音を漏らす学生がいたが、「そんなに気にならない」「お金がないから夏休みは寮でゲームをする」と正直に打ち明けてくれた。

今大会優勝した選手たちも勉強に部活、アルバイトを両立

 学生トップクラスで全国区の選手でありながら、アルバイトをしながら競技に励んでいる選手もいる。

 女子1部・800メートルで優勝した勝くるみ(筑波大・3年)も飲食店でホールスタッフとして働く。多い時は週2回、4時間程度。筑波大は対校戦の今大会、女子1部総合得点で2位に入った強豪だが「アルバイトは8、9割がやっている。『バイトやってる?』ではなくて『どこでやってる?』が普通の会話」という。

 男子1部・4×100メートルリレーを制した中大の4走を務めたエケジュニア瑠音(3年)は授業と練習の合間で、限られた空き時間を活用。「自分の時間、ペースでできるので気持ち的にも楽」という理由で、日雇いのフードデリバリーで働き、陸上費用などに充てている。

 こうした風潮や文化もあり、アルバイトと両立した大学らしい競技生活に胸を膨らませる新入生もいる。女子1部・100メートルと4×100メートルリレーで2冠を達成した杉本心結(青学大・1年)は「カフェでバイトするのが憧れ」と目を輝かせ、「先輩たちもイタリアンや居酒屋でやっている」と教えてくれた。

 学業と部活に加えて、アルバイトもこなす学生たち。大学に通ううえで、保護者が負担できる範囲や奨学金の返済の有無など、お金の事情は選手によって異なる。だからこそ「陸上一筋」と部活に打ち込める環境や、フレキシブルに活動できる環境など、個人に合ったやり方を選べることが学生の選択肢を広げることに繋がるかもしれない。

(THE ANSWER編集部・山野邊 佳穂 / Kaho Yamanobe)