J2熊本の16歳FWは何者? 出場時間203分で5得点。クマシロケイトという名前を覚えておいて損はない【平畠啓史コラム】
強化担当とは、チームを強くするために他のチームの選手の動向はもちろんのこと、Jリーグ以外のカテゴリー、大学生からユース年代までくまなく調査。良い選手がいるという話を聞くと、全国各地に足を運び自分の目で確かめ、チームにフィットするか? 大学生やユース年代ならプロで通用するか? を判断しなければならない。
得点能力の高い大学生がいた。チームにとって素晴らしい補強になると確信した強化担当は選手獲得をクラブに打診した。「点が取れる良いフォワードがいます」とクラブに伝えると、逆にこんな質問をされたという。
強化担当の答えは全て「いいえ」だった。そしてクラブから獲得は却下された。失敗を恐れるお金を出す側は、点が取れる理由を欲した。
しかし、サッカーにおいてゴールが決められるというのは、もっとも必要な才能だ。練習を重ねたり、ポジショニングを工夫したりすれば、ある程度改良される可能性はもちろんあるが、敵がいるスポーツで常時得点を重ねるなんて常人のできることではない。
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真似しようにも真似できない天賦の才の持ち主である。J2ロアッソ熊本に所属する神代慶人は2007年10月25日生まれの16歳。今シーズン、3月20日の第5節、仙台戦でプロデビュー。3月30日の第7節、千葉戦でプロ初ゴール。16歳5か月5日というJ2最年少得点の記録を更新した。
初ゴールはPKだった。蹴り方が特殊というより、蹴るまでが独特。ボールをセットしてから、動きを止めて微動だにせず、なかなか動き出さない。ゴールキーパーのタイミングをずらすというより、自分の心を整えている趣。
見ている側からすると、あれだけ間を開けるとプレッシャーがかかりそうに思えるのだが、心が整うと意を決してボールに向かいPKを決める。
そのメンタル的な強さを感じる蹴り方はまさにストライカーで、大事な場面で16歳にPKを、ロアッソの選手たちが神代に任せた時点で、彼がチームから信頼を得ていることが分かる。
ここまでスタメンでの出場は1試合のみ。14試合で5ゴール。なんと出場時間203分で5ゴール。そのうちPKが3ゴールとはいえ、素晴らしい数字である。
6月29日、第22節・愛媛戦には89分からの出場だった、アディッショナルタイムが5分だったので、実質6分程度のプレーだったが、神代は90+4分の大崎舜のパスに反応し、キーパーの手前で触ったシーンをシュートとカウントすれば、3本のシュートを打っている。
味方がパスを出したくなる動き出し。シュートシーンでの冷静さ。身体の使い方の巧みさ。左右遜色ないキック。ボールが寄ってくるのか? ボールを呼び込んでいるのか? 神代の元にボールが集まり、彼はそのボールをシュートまで持ち込むことができる。
この日、ゴールはなかったが、約6分間に神代の非凡な才能が詰まっていた。サッカーにおいて最も重要な才能を持ち、ゴールを決めるために生まれてきたと言っても過言ではないクマシロケイトという名前を覚えておいて損はない。
取材・文●平畠啓史
