「宅配ピザ店」の倒産が倍増で過去最多 原材料費の高騰や深刻な人手不足が影響
〜 2023年(1-11月)「宅配ピザの倒産動向」調査 〜
コロナ禍に急成長した「宅配ピザ店」の倒産が急増している。 2023年(1-11月)の「宅配ピザ店」の倒産は13件(前年同期比116.6%増)で、前年同期の2.1倍に達した。これは「宅配飲食サービス業」の集計を開始した2009年以降、最多だった年間6件(2017年、2018年、2022年)を上回り、過去最多を大幅に塗り替えている。
宅配ピザ店では5月、関西を中心に人気宅配ピザ店「シカゴピザ」を展開していた(株)シカゴピザ(大阪府茨木市)が、人件費高騰などの煽りを受け、約15億円の負債を抱えて破産した。また、大手宅配ピザチェーンのFC店でも倒産が発生し、「宅配ピザ店」倒産のうち、負債1億円以上は46.1%とほぼ半分を占めた。2023年(1-11月)の飲食業倒産に占める負債1億円以上の構成比は13.9%で、「宅配ピザ店」は事業規模にかかわらず厳しい状況にあることがわかる。
2022年後半からの原材料費の上昇や価格転嫁など、「宅配ピザ店」の屋台骨は揺らいでいる。さらに、深刻な人手不足で宅配に不可欠な配達員の確保もネックになっている。これからクリスマス・年末年始と書き入れ時に入るが、人手不足は機会損失や信用低下に直結しかねない。
コロナ禍で巣ごもり需要の恩恵を受けた「宅配ピザ店」が、一転してアフターコロナを迎えて生き残りをかけた苦境に直面している。
※ 本調査は、日本産業分類の「宅配飲食サービス業」の2023年(1-11月)に発生した倒産(負債1,000万円以上)から「ピザ」を扱う事業者を抽出し、集計・分析した。
「宅配ピザ店」の倒産が過去最多
2023年(1-11月)の「宅配ピザ店」倒産は13件(前年同期比116.6%増、前年同期6件)で、すでに2009年以降の15年間の年間最多を更新した。
コロナ禍では巣ごもり需要を取り込んで好調だったことから、13件のうち、「宅配ピザ店」のコロナ関連倒産は2件(構成比15.3%)にとどまる。一方、人手不足関連倒産は5件(同38.4%)発生した。宅配ピザ店は配達員の確保が必須で、人手不足の影響が売上に直結する。配達を伴わない持ち帰り割引の導入など、配達員不足への工夫も見受けられるが、「配達」の強みを手放せばレストランなどとの競合も避けられず、宅配ピザ業界は重大な局面を迎えている。
原因別 4社に3社が『不況型』倒産
原因別では、最多が「販売不振」の6件(前年同期比50.0%増、前年同期4件)で、宅配ピザ店の倒産に占める構成比は46.1%だった。
以下、「既往のシワ寄せ」が4件(前年同期ゼロ)、「事業上の失敗」(同1件)と「設備投資過大」(同ゼロ)。「その他」(同1件)がそれぞれ1件ずつだった。
『不況型』倒産(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)は10件(前年同期比150.0%増、同4件)で、構成比は76.9%を占め、「宅配ピザ店」倒産の4社に3社にのぼった。
形態別 すべて「消滅型」
形態別では、最多の「破産」が12件(前年同期比200.0%増、前年同期5件)で全体の92.3%を占めた。「特別清算」の1件(前年同期ゼロ)と合わせ、2023年(1-11月)の「宅配ピザ店」倒産は、13件すべてが「消滅型」だった。
『不況型』倒産が「宅配ピザ店」倒産の8割近く(76.9%)を占めるなか、事業の立て直しのめどが立たず、再建型でなく「消滅型」を選択していることは、いかに事業継続が難しいかを示している。
負債額別 規模が二極化
負債額別では、最多レンジは「1千万円以上5千万円未満」の7件(前年同期比75.0%増、前年同期5件)で、構成比は53.8%と「宅配ピザ店」倒産の過半数を占めた。
一方で、「1億円以上」も6件(前年同期ゼロ)発生し、うち1件は「10億円以上」の大型倒産だった。
1店舗のみで展開する小規模な「宅配ピザ店」だけでなく、複数の店舗を構えるチェーン店でも倒産が発生している。事業規模にかかわらず厳しい状況が続く「宅配ピザ店」の倒産は、負債規模が二極化した。
地区別 関東が最多の5件
地区別では、最多が関東の5件(前年同期比150.0%増、前年同期3件)だった。以下、近畿と中部が各3件(前年同期各1件)、東北(同ゼロ)と九州(同1件)が各1件だった。
都道府県別では、東京4件(前年同期1件)、愛知2件、宮城と埼玉、静岡、大阪、滋賀、兵庫、大分で各1件だった。競合の多い都心部を中心に、「宅配ピザ店」の倒産が目立った。