その一方で、「ああいう状況のなかで何ができるかを選択する、判断することをもっと研ぎ澄まさなきゃいけない」とも述べており、「皆さんがイメージする自分たちのサッカーというものを、選手のなかでそれが必要な時と、そうじゃない時、というものを共有」させることが自らの仕事なのだとしていた。

 つまり谷口と鬼木監督が言及する状況判断の大事さとは、自分たちで判断してサッカーのスタイルを使い分けることだということになる。

 そういう意味で、ベテランの登里享平と大島僚太の大会期間中の負傷は地味に痛かった。鬼木監督は「ACL期間中に復帰する予定」で帯同させていたが、間に合わず。指揮官は、過密日程と実力のある選手だということを念頭に「居てくれれば、当然心強いです」と彼ら2人の不在について述べている。

 もちろん出場できないことについては、切り替えていたと話すが、両選手が試合に関われていたら大会の結果が違ったものになっていた可能性はあった。
 
なお鬼木監督は、どんな環境でも自分たちのサッカーができる個人の技術向上にも言及していた。

「しっかりと(ボールを)止めれないと、ああいうグラウンドだったら次蹴れない」と指摘する鬼木監督は、厳しいピッチコンディションでも「(自分たちのサッカーを)やれるもの(技術)を作っていく」ことの重要性を口にしていた。

 これは余談になるが、川崎の前からの守備について、蔚山の天野純が初戦で戦ったあとのチーム内の感想として、チームメイトが川崎のサッカーを嫌っていたと話していた。Kリーグでは蔚山に対して、なかなか前から挑んでいくチームがないためだろう。その蔚山には1分1敗の結果だったが、紙一重の戦いだった。

 なお、キックオフ時間の大幅なズレも敗退の理由としたいところだが、これは理由としては弱いので参考程度に書き記しておく。
 
 当地マレーシアは、グループステージ開催期間中、イスラム教にとって最大の行事であるラマダンの最中で、それを理由にJDTは、6試合中5試合が22時のキックオフに。川崎、広州は6試合中4試合を、また蔚山は5試合をまだ日が残る17時キックオフで戦う必要があった(現地時間)。

 ただし公式記録上、川崎の試合の気温は、17時キックオフの初戦の蔚山戦が29度、第2戦の広州戦が27度。第5戦の蔚山戦が31度で、第6戦の広州戦が29度なのに対し、22時キックオフのJDTとの第3戦が28度、同クラブとの第4戦も29度と記録上は大差が見られなかった。

 体感的にはもっと大きな差を感じたが、数字上はそこまでではなかった。ただし試合時間の5時間のズレは、チームスケジュールを動かす必要があるという点で難しさになっていたとのこと。とくに第4戦のJDT戦、第5戦の蔚山戦のキックオフ時間の変更については、地味に難しかったようだ。

 いずれにしても今季も川崎はACLを獲れなかった。その理由を、川崎がJリーグを席巻してきたスタイルと、アジアの環境との親和性の悪さに求めるのは簡単だ。だが鬼木監督は、スタイルを使い分ける状況判断と、悪コンディションでもサッカーができる技術力の向上でそれを解決しようとしている。

取材・文●江藤高志(川崎フットボールアディクト)

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