元々、半導体産業は米国で起きた。米国は世界で最初にトランジスタを発明し、それに続いて集積回路(IC)を発明、先導的役割を果たしてきた。

 牧本さんは自らの著作『日本半導体復権への道』の中で、「米国では国民の間で広く、『半導体は国防の要である』という認識が共有されている」と指摘。大陸間弾道ミサイルなどの軍需用や宇宙ロケットなど宇宙開発での活用が中心だったと、日本との開発の違いを歴史的に叙述する。

ロボットで半導体復活を
 半導体の民生用活用ということで言えば、日本はソニーが1955年(昭和30年)にトランジスタ・ラジオを発売。間もなく世界中で好評を博し、敗戦国・日本の『安かろう・悪かろう』のイメージを一変させた。

 続いて白黒テレビ、電卓、時計、カラーテレビ、VTR、ウォークマンなどの製品が世界市場に投入され、日本の半導体産業も勃興。

 しかし、日米半導体交渉で敗北。以後、凋落の道をたどった。

 日本はテレビやVTRなど家電系生産では世界をリードしたが、80年代後半から90年代前半のパソコンの登場、そして2000年代に入ってのスマートフォン時代になると、アップルなど米企業が世界をリード。

 半導体の需要先であるパソコン、スマホ分野で日本は劣勢に立たされ、日本の半導体弱体化につながった。半導体の次の主要な需要先はロボットとされる。

「ロボット分野は、日本にも地の利があります。ロボットと人間の共生へ向けて、世界トップのロボットをつくり、それに必要なAIチップを開発していくという国家目標が必要です」と牧本さんは語る。

 戦略的政策づくりと共に国の役割も問われている。

藤井・東大総長の対話路線
 東京大学第31代総長の藤井輝夫さん(1964年=昭和39年4月生まれ)は対話を重視する大学運営を訴える。

 藤井さんは東大工学部船舶工学科を卒業(1988)後、大学院工学系研究科へ進学、経歴からも分かる通り、産学連携を推進。大学の使命、役割として研究、教育(人材育成)があるが、「物質的、経済的発展だけでは、人類のさらなる繁栄・幸福は実現できない」という基本理念で大学運営を図っていきたいという。

 大学運営に3つの視点(パースペクティブ)を藤井さんは掲げる。

「知をきわめる、人をはぐくむ、そして場をつくるの3つです。場とは、自ら起点となって社会との架け橋を創っていく。そのためには対話で包摂していくという多様性を重視していきたい」

 東大の年間予算規模は約2500億円。国からの交付金だけでは間に合わず、学内の知的資産を活かし、産学共創で「多様な財源の効果的な活用を図っていく方針だ」と言う。

 昨年秋には、200億円の大学債を初めて発行。近く、2号債を発行する予定。この他にも1000億円程度の『法定基金(仮称)』を創出するなど、東京大学基金の拡充を図りたいとする。

 藤井さんは、「対話が創造する未来」を大学運営理念に掲げる。「知るために問う」、「問いを共有する」といった言葉に藤井色が表れる。東京大学の対話力が注目される。