茨城空港と常磐道を直結する「アクセス道路」が全線開通しました。東京方面からの所要時間が大幅に短縮されるだけでなく、渋滞の回避で「時間が読める」ようになる点もメリット。特にクルマ派にとって恩恵は大きいようです。

「待ちに待った開通」茨城空港アクセス道路

 茨城空港が、以前より「近く」なりました。2021年6月16日(水)、空港と常磐道を直結する茨城空港アクセス道路が全線開通したのです。

 今回、常磐道の石岡小美玉スマートIC(SIC)から空港まで、約12.6kmが1本の道路で結ばれました。従来は石岡小美玉SICのひとつ南の千代田石岡ICから、石岡市街地の国道6号や国道355号経由で空港まで約35分かかっていましたが、石岡小美玉SIC・アクセス道路経由ならば、所要時間は16分短縮の19分だといいます。


2021年6月16日に開通した茨城空港アクセス道路(画像:茨城空港)。

 東京方面からだと、常磐道の三郷ICから空港までの所要時間は、従来の千代田石岡IC・国道355号経由で70分だったのが、石岡小美玉SIC・アクセス道路経由で1時間をきり、54分まで短縮されました。

「従来ルートは国道6号の渋滞で時間が読めないことがありましたが、アクセス道路経由は渋滞しません。定時性が確保され、利便性は格段に上がりました」。茨城県の空港対策課はこう話し、「待ちに待った開通です」と喜んでいます。

 茨城空港へは、関東鉄道が東京駅から直通の高速バスを運行していますが、2021年6月現在、新型コロナの影響で運休しています。県空港対策課によると、高速バスの従来ルートからアクセス道路経由への変更についても「前向きに検討いただいている」ということでした。

 高速バスの時刻表上の所要時間は、東京駅から茨城空港まで1時間40分(空港→東京駅は2時間30分)です。仮にアクセス道路経由となった場合、単純に「16分短縮」を当てはめれば、東京駅から1時間半をきることになります。

 なお、東京駅〜茨城空港線の高速バスは航空便利用者であれば片道500円で利用できましたが、2020年4月から県による補助が打ち切られたため、大人運賃で1530円となりました。

狙うは首都圏の「クルマ派」

 茨城空港は2010(平成22)年の開港以来、着実に利用者数を伸ばし、コロナ前の2019年には過去最高の年間80万人を記録していました。

 要因としては、国内線でスカイマークが増便していたほか、発着枠が満杯となっていた羽田や成田の代替として、中国など海外からのチャーター便が多く発着していたことが挙げられます。ただ、新型コロナの影響によって海外需要が霧消してしまったことは言うまでもありません。

 県の空港対策課によると、仮に海外需要が戻ったとしても、アクセス道路の開通が国際線の旅客にとって有利に働くかはわからないといいます。「そもそも茨城空港は羽田・成田と比べて鉄道がないことが圧倒的に不利です。国際線を利用する外国人のお客様などにとっては、道路が開通したところで、それほど大きなメリットには映らないでしょう」とのこと。

 しかしながら、「国内線には効果が大きい」と話します。茨城空港の大きな武器は「駐車場」であり、アクセス道路の開通はクルマの利用者にとって大きなメリットになるからです。

 茨城空港に発着する航空便の利用者は、駐車場を無料で、何日でも利用できます。このため茨城空港は従来から、羽田・成田まで遠い北関東を中心に、クルマの利用者を取り込んできました。なお、一時は駐車場の有料化も検討されましたが、無料を継続する方針だそうです。


茨城空港(百里飛行場)は航空自衛隊との共用空港。ターミナルビル(奥)の近くに戦闘機なども展示されている(乗りものニュース編集部撮影)。

「茨城空港に比較的近いものの、利便性などから羽田・成田を使っている人を、いかに取り込めるかが重要です」(県空港対策課)

 具体的には茨城県南部の土浦、つくば、千葉県の柏、松戸、野田、埼玉県の越谷、春日部、三郷、このほか圏央道沿線などを挙げ、特にこれら地域へ、アクセス道路の開通と駐車場無料をPRしていきたいと話しました。

 ちなみに、茨城空港からの定期国内線は、スカイマークが札幌、神戸、福岡、那覇を結んでいます。