左からゴー☆ジャス、加藤

 芸能人が続々とYouTubeデビューし、いまや群雄割拠のゲーム実況界。だが、じつはまだ動画を観たことがないという読者も多いのでは?

「他人がゲームをやっているのを観てるだけで何が楽しいの?」

 そんな疑問にお答えするべく、初心者でもわかるゲーム実況の奥深さを、パイオニアである2人が解説。これで、あなたも視聴者デビューだ!

ゴー☆ジャス(以下、ゴ)「このキャスティングを聞いたときは、ドッキリかと(笑)。ゲーム実況界で、加藤さんは雲の上の存在ですから」

 自虐的に語るのは、芸人のゴー☆ジャス。ゲーム実況者としても活動中だ。

加藤純一(以下、加)「いやいや、そんなことないですよ! 逆に『お笑い向上委員会』に出演されてる方と、僕なんかが共演できるなんて」

 加藤純一は、2009年から実況を始めた。いまでは、配信のたびにネット掲示板にスレッドが立ち、まとめられるほどの人気実況者だ。

加「でも、小学生の『つきたい職業』(2019年)の男子1位がYouTuberになったり、異様なことが起こってるのは、たしかなんですよ。

 僕が配信を始めたころ(当時は『ニコニコ動画』)なんて、ほんとにアングラで、泥水すすってたような時代でしたから。10年前の自分に今の状況を説明しても、信じてくれないでしょうね」

ゴ「市民権を得た、きっかけってなんだと思います?」

加「これは明確で、HIKAKINさんのブレイクです。彼が、YouTuberの地位を引き上げてくれた。僕としては、こっそり楽しんでた世界をバラされちゃったような感覚もありますが(笑)。最近は、ゲーム実況にも、芸能人の方が続々参入してますよね」

ゴ「狩野英孝くんの『バイオハザード2』は、むちゃくちゃおもしろくて。嫉妬どころか、感動さえ覚えちゃったな」

加「あー、あれはクソ笑いました! ゾンビを撃って脚が弾け飛ぶのを見て、『うわ、こいつゾンビみてーだ』って(笑)。やっぱりテレビに出てる方って、天才的なところがあるんだなって思いました。

 あばれる君さんの配信も、おもしろくて。ゲーム画面に、彼の顔が浮かび上がってるんです」

ゴ「そうそう、グリーンバックで合成してるみたいだけど、あれパクりたいな(笑)」

加「ゴー☆ジャスさんなら芸能人ゲーム実況のパイオニア的な存在だし、許してくれるんじゃないですか」

ゴ「そんな大それたものじゃないですよ。でも当時は、芸能人の進出をYouTuberの方が歓迎してない印象で、ほとんどいませんでしたね」

加「いまでも否定的な方は多いと思いますよ。ライバルが増えるわけですからね」

ゴ「じつは当時から例外的に、『ゴー☆ジャスならいいよ』って歓迎されてたんです。けど、それって脅威に感じてなかったからなのかな(笑)」

加「いや、人がいいからですよ。配信って、ふとした言動や所作に、“素” が出ちゃいますよね。あばれる君さんが、さりげなく奥さんに気を遣っていたり。10年以上見てきましたけど、そういう人のほうが人気が出るし、長続きもするんですよね」

ゴ「やった! でも僕が続いてるのは、見た目が異質だからっていう要因が大きいと思うんです。無言でも、ビジュアルが賑やかだから許されちゃう(笑)。ところで、芸能人の進出についてどう思います?」

加「じゃんじゃん進出してほしいですね。だって、自分なんかが、テレビで活躍している人と同じ土俵に立てるんですよ。僕だってテレビで『わーー』って騒いでみたいけど、できるわけがないから。嬉しいですよ。“競合” ではなく、“共存” したいなと」

ゴ「好意的に受け取ってくれてるんですね。じゃあ、参考にしたい人っていますか?」

加「いや、誰かをまねしたらダメだなと思ってるんです。自分がやりたいようにやるっていうのが、いちばんなので。若い視聴者との “ズレ” は、よく感じますよ。でも、理解しないようにしてます(笑)。流行とか、本当に意識しないですし」

ゴ「そうですよね。僕も、スタッフさんの意図は最低限汲んではいるつもりだけど、過剰に作ったりはしないというか。『ゲームってみんなでやったら、こんなに楽しいんだよ』ってことを伝えられれば」

加「僕も、ゲーム実況の究極は、そこにあるんじゃないかと。小さいころ友達とゲームしてたときって、コントローラーを持てない時間がありましたよね。しょうがなく後ろからガヤ入れるんですけど、意外とそれがおもしろくて。

 僕は、それをネット上の不特定多数の人たちに範囲を広げて、共有したいんです。だから、あえて知識がゼロの状態で実況するようにしています。そのほうがガヤを入れやすいから」

ゴ「僕、むちゃくちゃ下手だから、失敗すると非難のコメントが増える感じ、わかります」

加「以前、動画を拝見したんですけど、『あ、仲間がいたな』って思いました(笑)。僕も下手なタイプなので」

ゴ「そのなかでも、最下層が僕」

加「コメントが荒れるときって、どう対処してますか? 僕のコメント欄って異次元レベルで荒れてるんですけど、ゴミみたいなコメントにも、普通に言い返しちゃうんですよ。『お前、そんなこと言ってんじゃねーぞ』とか。でも、芸人さんって事務所とか、背負うものがたくさんありますよね」

ゴ「ああ、でも僕は芸能人じゃなくて宇宙海賊だから。ひとりで海賊やってるし」

加「そうでしたね! そういう逃げ方もあったんだ(笑)」

ゴ「あと、ある程度売り上げが入ってきてからは、気になんなくなっちゃったかな」

加「そうですよね(笑)」

ゴ「いま、『週計視聴者数世界2位』の記録を持ってますよね。更新したい気持ちはあります? 」

加「全然あります! 手越(祐也)さんに勝ちたいんで(笑)。いつか100万人集めてやろうと。もし結婚したら、安定をとって目指さないですけどね」

ゴ「すごい! 僕は子供が2人いるんで、成人するまでは頑張らないといけないな。まだ子供たちは、僕が宇宙海賊だって知らないんですけど。頑張るしかない、しかナイ、ナイジェリア! それっ……ココ! ナイジェリア! 」

加「すごい、生で見れた! けど強引すぎだよなぁ!?」

 次のページでは、2人がそれぞれ、自身がおこなった印象的な配信を語る!

『#3【アクション】ゴー☆ジャスの「ワンダと巨像」PS4フルリメイク【GameMarket】』より

【ゴー☆ジャス&加藤純一の印象に残っている配信】

《ゴー☆ジャス/YouTubeチャンネル[ゴー☆ジャス動画]》

●『#3【アクション】ゴー☆ジャスの「ワンダと巨像」PS4フルリメイク【GameMarket】』(2018年3月21日)
 加藤も絶賛する名作『ワンダと巨像』を、アシスタントのえなことプレイ。巨像の弱点を見つけ出すまでの仕掛けが醍醐味の本作。

「この作品で、テレビ朝日さんのゲーム番組からオファーをいただきました。僕の実況プレイを見ながらそれをカミナリが実況するという番組で。
 自分のチャンネルで一度クリアしているから、我が物顔でプレイしていたにもかかわらず、あるパートで20回以上死んじゃったんです。最終的には無事クリアできたんですが、カミナリにいじられて、オンエアになったのは、その下手なパートだけでした(笑)」(ゴー☆ジャス、以下同)

●『【Days Gone】大群のゾンビに襲われるゴー☆ジャス』(2019年5月13日)
 サバイバルアドベンチャーゲーム。写真中央のゾンビに囲まれたバイカーの主人公を、ゴー☆ジャスが操っている。

「動画に出す前から自分の中でヒットしていたゲームで、なんとかこのおもしろさを伝えたいと思い、事前にしっかりやり込んで実況に挑みました。でもいざ始まると、うまくプレイできずゾンビにやられまくったんです。
 そしたらアシスタントのコが、『もうやめてー! やめてあげてー!』って泣いちゃって、へんな空気になりまして……。それ以来トラウマで、このゲームをできなくなり、結局、自分ではクリアできていません(笑)」

●『謝罪』(2019年4月1日)
 エープリルフールにアップされた動画。ゴー☆ジャスが、ふだんの衣装ではなく、珍しいスーツ姿でとにかく謝罪し続ける。

「内容を細かくは覚えてないけど、いわゆる『サムネ釣り』かな(笑)」

●『LiSA-紅蓮華をゴー☆ジャスが歌ってみた【THE FIRST FAKE】【鬼滅の刃OP】』(2020年4月1日)
 サムネイルや歌い出しまでの雰囲気、優しい歌声が話題に。

「バズるために、過剰に何かをするってことはないんです。これもスタッフの中で、『流行っているんでやりましょう!』みたいな感じでした」

《加藤純一/YouTubeチャンネル[jun channel]》

●『ポケットモンスタープラチナVer普通にやる。〜超最終回〜』(2019年7月18日)
 2009年の「ポケモン6画面」プレイで、一躍有名になった加藤。以降も、ポケモンの実況は定期的におこなっている。加藤はゲーム実況中、基本的に顔を出さないが、この生放送では、最後の敵との戦闘中、機材トラブルで、まさかの直撮り配信に。

「僕は、 『芸能人の方みたいに、おもしろいことを狙ってできない』と思っているので、トラブルなども含めて、天然の素材を召し上がっていただくという気持ちでやっていますね」(加藤、以下同)

 2020年3月には同作品の “縛りプレイ” をYouTubeで配信し、11万9000人を超える同時視聴者数を集めて話題となった。

●『うんこちゃん モンスターファーム2 Part15』(2012年6月3日)
 2020年秋、Switchとモバイル向けの移植作の発売が決まったモンスター育成&戦闘ゲーム。1999年にプレイステーションで発売され、今も愛される同作を、加藤は2012年にUSTREAMにて実況プレイ。オクレイマンというキャラクターを使用し、劇的な展開を見せた。

「当時、CDのデータを読み込んで、モンスターを生成するというシステムが、すごく画期的で。小さいころもやっていたんですが、大人になってやっても感情移入できて楽しかったです。自分の実況のスタイルが固まる転機となった配信でしたね。すごく心に残っている作品です」

●『クイズ$カトオネアを全クリする』(’20年1月17日)
 ファン有志によって、加藤の顔や声をフリー素材としたゲームやMADなどが、数多く制作されている。この配信では、加藤に関するクイズが出題されるオリジナルゲームに、加藤自身が挑んだ。

●[うんこちゃん切り抜き集]
 加藤自身が運営せず、加藤の動画のおもしろい部分を切り抜いてアップしているチャンネルも、多くの再生数を稼ぐ。

「公認です。『この収入で、子供3人を育ててる』って言われちゃって(笑)」

ごー☆じゃす 
41歳 福島県出身 ネタ見せお笑い番組がブームとなった2000年代後半に多くの番組に出演し、ブレイクした。また、芸人として活躍するかたわら、2014年よりYouTubeにて、ゲーム実況動画を主としたチャンネルを開設。ホラーゲームやスマホゲームなど、多くのジャンルのゲーム実況で人気を博している。現在までの動画総再生回数は、3億4000万回超

かとうじゅんいち 
34歳 千葉県出身 2009年、ニコニコ動画にて、「うんこちゃん」名義で動画投稿を開始。2015年に本名と顔を公表し、以後は「加藤純一」名義で活動。2020年3月には、YouTube Liveの週計視聴者数111万人(世界2位)を記録した。現在のYouTubeチャンネル登録者数は57万人超。「インターネットヒーロー」「初代ニコ生チャンピオン」などの異名を持つ

(増刊FLASH DIAMOND 2020年8月20日号)