レナウンが民事再生手続き入りした5月15日。東京商工リサーチ(TSR)情報部は早朝からバタついていた。大手企業が法的手続き入りするとの情報が関西よりもたらされ、関係各所に水面下で取材を進めていた。
 新型コロナウイルスの影響を大きく受けている宿泊や不動産業者、業績不振が続く電機メーカーではないかとの情報が湧いては消えた。
 社内に蓄積された信用不安企業のリストを洗い出し、上場企業のゴーイングコンサーン(GC)や重要事象注記企業も再チェックした。その中、大手アパレルの名前も入っていた。
 14時過ぎ、TSR情報部員は、名前があがったその大手アパレルの会員向け通販サイトを立ち上げた。サイトでの受付は停止していないか、異変はないかチェックする。特に、変化は見当たらない。商品在庫を確認するため、部員はおもむろに数千円のシャツをカートに入れた。通常1万円近くのシャツが7割引きで販売されていた。値引き幅の大きさに違和感を覚えながら、サイトを閉じ仕事に戻った。

 結果は、(株)レナウン(TSR企業コード:295833440、東証1部)だった。子会社でレナウンに対して債権を持つ(株)レナウンエージェンシー(TSR企業コード:291357725、江東区)が民事再生を申し立てる異例の展開だ。
 18時過ぎ、レナウンの担当者は東京商工リサーチの取材に対し、「申請代理人はわからない。私も先ほど聞かされたので、詳細は答えられない」と述べた。民事再生手続きでは、裁判所より監督委員が選任されることが通常だが、今回はより強い権限を持つ管財人だ。これについてレナウンの担当者に聞くと、「監督委員と管財人はどう違うのか」と逆に質問されるほどの混乱ぶりだった。
 関係筋によると、民事再生手続きの適時開示は18時に設定されていた。しかし、開示されたのは20時半だった。今後は管財人が主導し、スポンサー支援型の再生を模索する。ただ、関係筋は「全くのゼロベース」と打ち明ける。
 今のところ会見の予定はなく、実施についても管財人が主導するという。中国・親会社グループへの売掛金回収や商流などクリアすべき課題が多いレナウン。異例の民事再生スキームの動向を多くのステークホルダーが見つめている。