彼らを研究するテキサス工科大学のアシュリー・ランドラム博士によれば、ユーチューブ動画を見てフラット・アーサーになった人が多い。「Eric Dubay: 200 Proofs Earth is Not a Spinning Ball」と題された約2時間の動画は、現時点でおよそ84万回も再生されている。内容はタイトル通り、「水平線や地平線はどこで見ても常に平らだ」など200もの「地球が平らである“証拠”」を紹介している。

 ランドラム博士がインタビューした「フラット・アース国際会議」の参加者の一人は、「私が頼れるのは自分の目だ。その目で、はるか100キロメートル先の平原を見渡すことができる。これこそが地球が平らである証拠だ」などと話している。他のフラット・アーサーもおそらく同様に、自身の感覚や直感を信じている。

 学校で教わったことが、自分の直感からすると、どうもピンと来ない。そんな時、自信満々に、しかもビジュアル要素も入れながら、その直感を巧みに証明してくれるユーチューブ動画と出会う。すると「こっちの方が信頼できる」と思ってしまうのも仕方ないのかもしれない。

まだ人類は「科学に慣れていない」のか
 このように、どうやら「直感と信頼」の組み合わせが、科学不信の有力な容疑者のようだ。だが、ちょっと待ってほしい。少なくとも「信頼」については、科学不信者ではない私たちも、科学知識を得る際に使っているのではないか。

 測量や調査を行って「地球が丸い」ことを自分自身で証明したという人は、ほぼ皆無だろう。二酸化炭素がオゾン層を破壊して温暖化の原因を作ったという科学的な証明ができる人も少ないはずだ。

 地球が球体であることも、地球温暖化の原因や進化論も、私たちは、学校の教室で教師から教えられたか、メディアを通して国際機関の見解を知るなどのプロセスで知識を得たにすぎない。要は、「信頼」できる人や組織が言っているから、という理由だけで、エビデンスを深く追究することなく「科学的事実」を知識として呑み込む。

 『ルポ 人は科学が苦手』の著者、三井誠さんは、そもそも人類は「科学的に考えるのが苦手」なのではないか、との仮説を立てている。長い人類の歴史の中で、「科学」が登場したのは、ごくごく最近だ。まだ人類は「科学」に慣れていないというのだ。

 原始時代の狩猟採集生活や、その後の農耕社会で、人類は、集団生活を守り、子孫を残すべく生活を営んできた。そこに科学が入り込む余地は、ほとんどない。何より、生き残るために大切なのは「信頼」や「共感」だったはずだ。