岩渕との連携から鮮やかな同点弾を叩き込んだ長谷川。大一番でついにW杯初ゴールを決め、称賛された。(C)Getty Images

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 現地時間6月25日夜、女子ワールドカップの開催国であるフランスのメディアは、決勝トーナメント1回戦で残酷な敗北を喫した日本女子代表の話題でもちきりになった。

 この日も、ライブ中継局は『Canal+』。実況アナとゲスト解説者の顔ぶれも、グループリーグ第3戦のイングランド戦と同じく、ステファン・ギーとジェシカ・ウアラ=ドゥモーさんだった。その2人が叫び声をあげたのが43分。1点を先制された日本が、同点に追いついた場面だった。

 「なんとマニフィック(壮麗)なアクション! 小さなスペースで動き回り、イワブチ(岩渕真奈)の素晴らしいパスと、ハセガワ(長谷川唯)の素晴らしいシュートで決めました!」と、まずジェシカさんが興奮。その後も「ワンタッチ、ツータッチで、トライアングル・プレーを展開しましたね。これこそが以前からの日本の強み。その典型パターンです!」とまくし立てた。

 ステファン・ギーはと言えば、「コレクティブなアクションから決めたゴールでは、今大会開幕以来、最も美しいゴールです」と称え、後半に入っても「スガサワ(菅澤優衣香)、イワブチ、ハセガワのあのアクションは、きわめて高級なものでした」と振り返り続けた。

 後半の会話はすっかり日本中心に。ジェシカさんは「2011年と2015年の(ワールドカップの)日本を見ているような気がしてきました」「またマニフィック! イワブチのタロナード(ヒールパス)、素晴らしいです」「スギタ(杉田妃和)やミウラ(三浦成美)といったミッドフィルダーまでゴール前に出現してきていますよ」と叫び、ステファン・ギーも「スタジオではちょっと日本を過小評価していましたね」と皮肉を挟みながら、「サメシマ(鮫島彩)のすごい仕事ぶりです」「モミキ(籾木結花)のなんという入り方!」と、刻々とアナウンスしていった。

 それだけに終了間際の熊谷紗希のハンド直後には、「彼女に意図的なものはまったくなかった」(ステファン・ギー)、「わたしにはあまりにも滑稽に見えます。これはひどい。これでオランダがPKを入れて勝ったとしたら、オランダはまるで勝利に値していなかったと言っていいと思います!」(ジェシカさん)と、審判の笛に異議を唱えた。

 そしてその通りの結果になると、「ジャポネーズ(注・日本女性を意味するフランス語)にとってなんとキツイことか! 彼女たちが後半に見せたレベルは巨大なクオリティーだったのに、本当に残酷です」と締めくくった。

 だが「なでしこ」の話題はその後も止まらなかった。夜の人気討論番組『L’EQUIPE DU SOIR』の最初のお題は、「日本は勝利を盗まれたと思うか」。

 これで激論を戦わせたのは、いずれもTVジャーナリストのヨアン・リウーとカリーヌ・ガリ女史。リウーは、「残酷さがひどすぎる。VARもおかしいし、PKとイエローの二重制裁などもってのほか。恥もいいところだ!」と激怒した。
 これに対してガリ女史は、「VARにも二重制裁にも反対だが、この程度のハンド判定はいくらでもある。それより日本がチャンスを決め切れなかったことが敗因だ」と反論した。

 ここで断固トーンを上げたのが『L’EQUIPE』紙のスター記者、ヴァンサン・デュリュックだ。

「VAR導入以来、PKが急増している。審判が、怪しくてもとりあえず笛を吹いてしまおう、どうせVARが判定してくれるから、という心理傾向になっているからだ。フットボールのエモーションもVARに殺されている」と重要な議論も提示しながら、「勝利を盗まれた」日本を擁護した。このお題の視聴者投票の結果は、62%を獲得したリウーの勝利だった。

 ところが次のお題も日本。「今大会で最も美しい試合に立ち会ったと思うか」だった。