「性欲は?」にも正直に回答 原田龍二さんの不倫謝罪会見、プロは何点をつける?
週刊誌報道により、2人の女性との不倫関係が明らかとなった俳優の原田龍二さんが、5月31日に謝罪会見を行いました。記者から際どい質問を受けても、自分の言葉で正直に答える原田さんの様子が伝えられ、SNS上では「女性の敵」「子どもが気の毒」などと厳しい意見が上がる一方、「憎めない人」「あそこまで素直だと応援したくなる」といった好意的な声が上がっています。
確かに、謝罪会見では“誠実さ”が求められますが、記者の質問に、素直にありのままを話すのは正しい対応といえるのでしょうか。広報コンサルタントの山口明雄さんに聞きました。
うそは騒動を拡大させる
Q.原田さんは「(性欲は)強いのか」「性欲は抑えられそうか」など記者から際どい質問を受けても、言葉を濁さず正直に返答している印象がありました。例えば、企業や官公庁が謝罪会見を行った場合、記者からの質問に対しては内容を問わず、正直に答えた方がよいのでしょうか。
山口さん「企業の場合、答えられない部分については、はっきりと回答を断るべきだと助言しています。ただし、断る前に答えられない理由を短い言葉で説明することが不可欠です。例えば、『個人情報に関わることですので』『私たちの業界は競争が厳しく、大切な技術秘密や営業秘密に関わりますので』『原因は、警察と監督官庁が調査しておりますので』などです。そうしないと、尊大、無礼、あるいは隠蔽(いんぺい)しようとしているという印象を与えます。
官公庁も同様ですが、『国民のしもべ』だとすれば、答えられない理由が誰にも納得できるものでないと、忖度(そんたく)や隠蔽だと疑われてしまいます。なお、性欲に関する原田さんへの質問は、今回の不倫騒動の核心に関わる質問なので、避けては通れなかったと思います。原田さんが素直に認めて回答した点はよかったと思います」
Q.謝罪会見の注意点は。
山口さん「何よりも素早い対応が大事です。会見が開かれるまでの間に、調査報道や推測ニュースが続出、氾濫することで、メディアやネットの考えが定着してしまうため、会見は早めに開くべきです。謝罪会見では、被害者、関係者、家族、国民への真摯(しんし)なおわびの言葉で口を切るべきですし、質問には誠実な受け答えが大切です。
会見時に絶対にやってはいけないことは、うそをつくことです。ベッキーさんが行った『友達で押し通そう』の対応は第2弾砲、第3弾砲のさく裂を招きました。記者はうそを暴いてなんぼの職業です。うそをつくことで、記者に続報を書く機会を与え、結果的に騒動を拡大させ、長引かせ、当事者の顔に泥を塗ってしまいます。
企業の謝罪会見では、時として当事者意識の欠如が問題となります。例えば、データの偽装や完成車検査の不正が40年も前から行われていた場合、トップの説明に『自分は直接手をくだしていない』というようなニュアンスが見え隠れすると、謝罪どころか反発を招く結果となってしまいます。登壇者は『評論家』になってはいけないと私は常に助言しています」
Q.謝罪会見の注意点の中で、例えば、企業同士や個人同士でトラブルが発生した際の謝罪に応用できるものはありますか。
山口さん「『素早い対応』『被害者・相手側の気持ちを思いやり真摯に謝罪する』『今できること、今後の再発防止策をきちんと話すこと』。これらは、どんな謝罪にも共通します。通常の謝罪では、損害賠償の意向についても話す必要があります。
一方、謝罪会見の場合、第一義の相手は読者や視聴者、すなわち国民で、『ブランドを守っている』『ひどい芸人だ』『ひどい企業だ』などの印象を世間に与えないようにすることが主な目的です。従って、『世間をお騒がせした』というようなあいまいな謝罪をするのではなく、『具体的に何がどのように悪かったのか』『世間の批判を浴びた理由をどう受け止めているか』『同じ事を繰り返さないためにどうしようと思っているか』などをきちんと話すことが肝要です」
Q.笑いのネタにされた印象もありますが、原田さんは謝罪会見を行って正解だったのでしょうか。
山口さん「週刊誌に不倫を報道されたら、芸能人にとって会見を行わないという選択肢はないと思います。先日、お笑いコンビ・ダウンタウンの松本人志さんが、『素直に認めたのにもかかわらず、番組が差し替えとかになると聞くと、最後までしらばっくれたほうが得なのか』と疑問を呈したという記事を読みました。しかし、釈明をしないと、ネットや週刊誌、スポーツ紙などの調査・推測報道はますますヒートアップし、仕事への悪影響はもっと拡大したのではないかと思います。
原田さんが笑いのネタにされているのは、報道された不倫の内容が、性欲のはけ口をファンに求め、『お手軽』な場所でことを済ませたというお粗末さに対してでしょう。奥さんから『ビョーキ』『馬鹿!』と言われ、昨年出演したダウンタウンの大みそかの特番のフレーズにかけて『原田、アウト!』と怒られたなどの話は、自ら自虐ネタをまいているように思えました」
原田さんの謝罪会見は何点?
Q.謝罪会見時の原田さんの対応に点数を付けるとしたら。
山口さん「70点です。そのうち20点は週刊誌のゴシップ記事になったことに対する同情点です。しかし、一部報道によれば、週刊誌に通報したのは相手方だとか。事実だとすれば、ますますお粗末な不倫騒動です。とはいえ、終始深刻な表情で質問に誠実に回答した態度が『憎めない人』『あそこまで素直だと応援したくなる』といった好意的な声を誘ったのだと思います。
謝罪会見の直前に生放送で出演した『5時に夢中』を見たら、原田さんは『丸腰デカ』の裸やお笑いの印象が強いにもかかわらず、根は大変真面目な芸能人のように思えました。記者会見では、その真面目さが隠すところなく出ていました」
Q.不倫の謝罪会見を上手にこなした事例はありますか。
山口さん「三遊亭円楽さんが2016年に行った不倫の謝罪会見は、『まるで落語のようだ』とSNSで絶賛されたと記憶しています。当時、私はテレビ番組で見ましたが、正々堂々としていて、真摯な謝罪あり、涙あり、さすが落語会の大御所とうならせる笑いも満載でした。記者の謎かけも見事にこなし、浮気相手のことは『私が口説いた、相手に非はない』とかばい、奥さんとのやり取りも、『身からでたサビだ』と話したら『サビも味になるわよと言ってくれた。これには参っちゃう』と、具体的で味わいのある話を披露されました。
報道によれば、テレビ局や番組宛に視聴者から厳しい批判が数多く寄せられたそうですが、円楽師匠の仕事にはほとんど影響がなかったということなので、その点ではたいへん上手な謝罪会見だったと言えると思います。謝罪会見は、単に非を認めてわびるだけでなく、企業の理念に基づく日頃の活動や、徹底した原因究明、再発防止策などをしっかりと話して、バランスを取るようにと助言しています」
Q.世間の反発を招かない謝罪会見のポイントは何でしょうか。
山口さん「熟考の上で、反省の気持ちを正直に明確に話すことだと思います。熟考のベースにすべき理念の一つは、他人や社会への思いやりだと思います。思いやりの欠如があれば、その点を正直にしっかりと謝罪すべきです。差別の助長や戦争をあおるような発言が社会の反発を招かないはずがありません。
数年前までは、読者視聴者を『不特定多数』と捉え、世論の形成にはマスコミを通しての不特定多数の説得が大きな役割を果たすとの考えが主流でした。言い換えると、誰にでも受け入れられるであろう、見方によってはどのようにも解釈できる、あいまいな、玉虫色の会見が世間の反発を招かない会見のポイントと考えられていました。
しかし、いまや無名の、たった一人のネット投稿者の明確な主張がマスコミと世論を大きく動かすこともあるのです。『保育園落ちた日本死ね』のブログと、電通過労死の高橋まつりさんが生前に残した悲惨なツイートは、世間を挙げての働き方改革推進の原動力の一部となりました。謝罪会見においては不特定多数向けの玉虫色の謝罪はもはや通じません。逆に、あいまいな点をネット投稿者に指摘され、炎上の原因となることもあるのです」
