PS Vita、近日出荷完了予定と発表。約7年の歴史とソニー携帯ゲーム機の系譜がひとまず終了
SIE

ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)は公式サイトにて、携帯ゲーム機「PlayStation Vita」が近日出荷完了予定であることを発表しました。

対象となるのは、現行モデルのアクアブルーおよびブラック(PCH-2000)。他のモデルはすでに出荷完了となっており、新モデルや後継機の発表もありません。

初代モデル(PCH-1000)が2011年12月に発売されてから約7年目に、PS Vitaシリーズとソニー製携帯ゲーム機の歴史はひとまず幕を下ろすことになります。PS Vitaは、先代の携帯ゲーム機PSPの次世代機として登場。有機ELディスプレイ表示の美しさやマルチタッチスクリーン、背面はマルチタッチパッドを搭載して3G/Wi-Fiモデルも用意された意欲的な仕様で、ニンテンドー3DSに対抗するかたちで発売されたものです。

より高価な3G対応モデルは通信機能が制約されたことや課金への懸念、Wi-Fiのみモデルより重めという事情により苦戦することに。薄型軽量化されたモデルPCH-2000(現行機)ではWi-Fiのみ、有機ELから液晶ディスプレイに変更され、お求めやすさと引き換えに先進性を手放した印象もありました。

先代のPSPとは異なるCPUやアーキテクチャながらもPSPソフトとの互換性を維持、しかしUMDドライブを廃止したために手持ちのUMDソフトは直接使えないという仕様。そのギャップを埋めるためにUMD Passport(対応したUMDソフトを持っていれば、手頃な価格でダウンロード版を購入できる)プログラムが行われていました。

後にPS1のゲームが遊べる「ゲームアーカイブス」も対応した上に、PS3やPS4と連携できるリモートプレイも提供され、他のPSファミリー向けゲームを手軽に遊ぶにはまたとないハードへと進化。その反面で独自のゲーム資産に乏しく(PS3やPS4とのマルチタイトルも少なくない)PSPのハード売上げを牽引した『モンスターハンターポータブル』シリーズの続編も出ないという、器用貧乏で幸の薄い携帯ゲーム機でした。

すでに2018年5月に「2019年3月に専用ゲームカードは欧米で生産終了」と報じられながらも、日本では継続されるかもしれないと一縷の望みも抱かれていました。しかし、結局は新モデルも後継機も発表されないまま、Vitaプラットフォームはいったん生涯を終えることになります。

SIEアメリカの社長兼CEOのショーン・レイデン氏は「Vitaはまだ日本やアジアでは戦えるプラットフォームですが、ヨーロッパとアメリカの壁を乗り越えることはできなかった」と発言していました。ワールドワイドで莫大なシェアを獲得してこそ「ハードウェアで赤字を出したとしても、ソフト売上げとライセンス料で補填する」というゲーム専用機ビジネスが成立するため、「日本やアジア」しか戦えない携帯ゲーム機はもう出せないと見切ったのかもしれません。

とはいえ、PS VitaはPS4のリモートプレイのお供や、nasneで録画したテレビ番組の持ち出しなど、メイン機器のバイプレイヤーとしてはきわめて優秀でした。PS5(仮)が登場するあかつきには、たとえ専用ソフトがない周辺機器扱いとしても、Vita的な「操作性の優れたジョイスティックとタッチスクリーンを備えたリモートプレイヤー」を投入して頂きたいところです。