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会社の経理部員や人事部員たちは、何を考え、どこを見ているのか。お金の問題を甘く見ていると、「想定外」の落とし穴に落ちることもある。「プレジデント」(2018年3月19日号)では、11のテーマについて識者にポイントを聞いた。第11回は「401kの裏ワザ」について――。

年金を増やしたい人がこっそり実践中

確定拠出年金(DC、日本版401k)とは、公的年金に上乗せするために自ら金融商品を選んで運用する「自分年金」のこと。運用商品は預金や保険など元本割れのリスクがない「元本確保型」と、投資信託など元本割れのリスクもある「投資型」がありますが、年金を積極的に増やす目的なら後者です。

投資信託にも、債券中心のものと株式中心のものがあります。一般的に、海外株式、国内株式、海外債券、国内債券の順にハイリスク・ハイリターンだといわれています。海外株式を選べば、年金の上乗せ分も増える可能性はありますが、老後資産が目減りするリスクは軽視できません。

そこで年齢に応じて株式と債券の割合を見直すことが大事です。損をしてもリカバーがきく若いときは株式を多めにし、年をとるごとにリスクの少ない債券の割合を増やしていきます。

仮に40歳を人生の折り返し地点と考えるなら、40代は株式50の債券50の割合で。これを目安とし、10年単位で割合を変えていきましょう。20代では株式70、債券30の割合。30代なら株式60の債券40。50代は株式40の債券60といった形です。海外株式と国内株式の割合は海外株式が少し多くなるよう調整していきましょう。

商品は手数料が安く、世界経済の成長の恩恵をそのまま受けられるインデックスファンドで十分でしょう。企業型DCの場合、自社株を運用対象にしている会社もあります。しかし給与と資産運用を同じ会社に依存するのは、リスクの高い行為なので、避けたほうがいいでしょう。

■「マッチング拠出」を知らないのは損

さて、確定拠出年金には個人型(通称iDeCo)と企業型があります。企業型は企業が掛け金を拠出して従業員が運用するもの。掛け金は勤続年数や役職などに応じて定められており、上限があります。掛け金を増やしたい場合は、従業員自身で掛け金を上乗せできる「マッチング拠出」を利用しましょう。限度額を超えていなければ企業型とiDeCoを併用することもできますが、口座管理手数料は自己負担になる。しかしマッチング拠出なら会社負担です。掛け金を増やすなら、マッチング拠出で上限まで使い切るのがお得です。

ただし、「限度額まで拠出していいのか」を常に念頭におくこと。20代、30代はマイホームや教育費、転職など、ライフイベントに必要な資金づくりを優先し、拠出は余裕資金の範囲でとどめるべきです。そういった意味では無理にiDeCoをするよりも、60歳まで待たずとも引き出せる「つみたてNISA」を優先させてもよいでしょう。

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メリット・従業員の掛け金は全額所得控除になるので、節税になる・運用益は非課税・口座管理手数料は会社負担(iDeCoは個人負担)・従業員の掛け金は給与から天引きなのでラク・企業型DCの口座で一括管理できる
デメリット・60歳までは引き出せない(iDeCoも同様)・会社の拠出する金額を超えて拠出できない・運営管理機関を選べない(会社が選定)

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深野康彦
ファイナンシャルプランナー
1962年生まれ。大学卒業後、クレジット会社を経て独立系FP会社に入社。1996年より独立。『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)など著書多数。

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(ファイナンシャルプランナー 深野 康彦 構成=東 雄介 写真=iStock.com)