鹿島のCBコンビと2ボランチで築かれた強固なブロックに苦しんだFC東京。“したたか返し”をされて連勝が止まった。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 勝てばファーストステージ優勝の芽がグッと膨らみそうだった5月10日の鹿島戦は、ホームで0-1の敗戦に終わった。強固な守備をベースに少ないチャンスをモノにしてきたFC東京が、今節は“したたか返し”をされた格好だ。
 
 前節まで黒星先行の低迷ぶりが嘘のように、この日の鹿島は試合巧者ぶりを発揮。昌子とファン・ソッコのCBコンビに、柴崎と小笠原の2ボランチが加わった守備ブロックを中心に武藤の自由を奪い、さらに太田のセットプレーを幾度となく弾き返した。
 
 押し込まれる展開が続いた最終盤も鹿島は集中を切らさず、土居が34分に決めた虎の子の1点を守り抜いた。殊勲者の昌子は「崩された場面もいくつかあってまだまだですが、とりあえず無失点に抑えられたことが嬉しいです」と試合後に話していた。
 
 FC東京にとっては、今季の合言葉「とりあえず無失点に抑える」を逆にやられた感があり、フラストレーションの残る一戦になったことだろう。4月25日の山形戦(7節)からリーグ4連勝と波に乗っていただけに、“天敵”の鹿島を叩いてより士気を高めたかった。
 
 太田は言う。「今日勝っていれば(ゴールデンウィークの)連戦を最高の形で終われましたが……。結果だけにこだわって戦っていたので残念です」
 
 ただ、幸いにも同日には首位の浦和が仙台と引き分けた。広島を下したG大阪に勝点1差に迫られたものの、ファーストステージ優勝の可能性は十分にある。
 
J1順位表(11節終了現在。上位4チームのみ)
順位 チーム名 勝点 消化試合
1  浦和   24  10
2  FC東京  23  11
3  G大阪  22  10
4  広島   22  11
※浦和とG大阪はACLの関係で1試合少ない。
 5月16日の次戦は、アウェーで浦和と戦う。ここで勝点3を獲得できれば、浦和とG大阪より1試合少ないとはいえ単独首位に浮上。チームの士気は一気に高まるはずだ。半面、浦和に敗れるようなら2連敗以上のダメージを受ける恐れもある。優勝戦線から一歩後退し、「やっぱりFC東京は勝負弱い」などと剥がれかけていたレッテルを再び刻印されてしまうかもしれないからだ。
 
 G大阪、広島とすでに戦っているFC東京にとっては、ファーストステージ最大の山場。そう言っても過言ではない。
 
 浦和撃破のポイントは攻撃面だろう。鹿島戦でも大崩れしなかった守備陣は次節、好調のCB吉本が出場停止から戻ってくる。守護神の権田も鬼神の如く振る舞っており、大きな穴は見当たらないだけに、どうゴールを奪うかが鍵になるのだ。
 
 開幕当初は「武藤の個人技」、7節の山形戦からは「太田のセットプレー」を頼りにゴールを重ねてきた印象があるが、鹿島戦ではその“ふたつの矢”が徹底的に警戒されていた。浦和も間違いなく対策を練ってくるわけで、そう簡単にゴールは奪えないだろう。
 
 必要なのは、3本目の矢だ。トップ下の河野が守備のタスクをこなすのに精いっぱいで、東がゴールに絡めなかった鹿島戦でもっとも可能性を感じたのが前田だった。
 
 最前線でターゲットとなり、身体を張ったプレーと抜群の落としで味方にチャンスボールを供給しつつ、自ら持ち込める時はシュートまで打ち切っていた。ここにきてようやく周りと息があってきたようで、あまり機能していなかった開幕当初に比べて明らかに怖さが増してきた。
 
 今のコンディションなら、浦和戦での先発は濃厚だ。J屈指のストライカーであるはずの前田が本来の実力を如何なく発揮して“3本目の矢”になれれば──。武藤の負担は軽減され、太田のセットプレーからのゴールもさらに増えるかもしれない。
 
 5月8日に正式契約したばかりの技巧派ラサッドは、元チュニジア代表の肩書きがあるとはいえ、いきなり浦和戦で結果を求めるのは酷だろう。やはり、首位攻防戦で最大のポイントになるのは前田。遅れてきた実力者が、ビッグステージでFC東京に勢いをもたらすか見物である。
 
取材・文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)