川平湾は石垣島で最も美しい景勝地のひとつだ/Sam Spicer/Moment RF/Getty Images

台湾・基隆(CNN)台湾からフェリーに乗って、ひと晩寝たら日本に到着――。そんな旅を実現してくれる「やいま丸」が5月末に就航した。

やいま丸はサウナやカラオケルーム、デッキの上のカフェまで完備した国際旅客フェリーで、一見すると、日常から逃れてゆっくりくつろぐ旅に最適な選択肢を提供しているように見える。

先月、台湾で太鼓の音と伝統的な獅子舞に迎えられて就航した。総トン数は2万1000トンで、台湾北部の基隆港と沖縄の石垣島を結ぶ。

ただ、このルートが注目される背景には、中国が台湾に対する軍事的圧力を強め、日本が南西諸島の防衛体制を強化している情勢もある。日本政府は同船を、地域の緊張が武力衝突に発展した場合に住民の緊急避難を支援する船に指定している。

もっとも観光客にとって同フェリーは、日本の一般的な観光地とは違う独特の旅を楽しむチャンスを与えてくれる存在だ。石垣島と東京の距離は約2000キロだが、台湾からはわずか270キロと、はるかに近い。

フェリーを運航するワゴングループのタイガー・ホン氏は「日本ははるか遠くにあると思っている人が多い」「だから実はこんなに近いと知って本当に驚く」と指摘した。

現在、台湾と石垣島をわずか1時間で結ぶ直行便は、航空会社1社のみが運航している。それ以外は那覇空港で乗り継ぐ必要がある。

美しいビーチやエメラルド色の海、和牛で知られる石垣島は、九州から台湾まで全長1050キロにわたって続く南西諸島にある。台湾有事の際は南西諸島は日本の防衛にとって極めて重要な拠点となる。

「中国政府は間違いなく、この展開を快く思っていない。同フェリーサービスの就航で、台湾有事の際の戦略的判断が難しくなる可能性があるからだ」。秋田国際大学の陳宥樺准教授はCNN Travelにそう語った。

一方、当局者や関係者は地域の緊張や安全保障上の影響を重大視しない姿勢を示し、フェリーは観光のみが目的だと強調する。

商船やいまの大濱達也社長は記者団に対し、民間フェリー運航会社として、まずは運航を軌道に乗せることが第一だと語った。

「目が覚めたら日本」

船の旅の時間は8時間。予算重視の旅行者や、ゆったり旅を楽しみたい旅行客に向いているとホン氏は言う。

フェリーは6月は週に1便、7月からは2便を運航する。料金はオフピーク時の最も基本的な客室で1万400円、ピークシーズンの最も高いロイヤルスイートで5万4600円。

台湾と日本の当局者は、この航路が観光活性化や貿易促進、関係深化につながると明るい見通しを示す。

石垣市の中山義隆市長は、日台間の幅広い交流を支える新たな架け橋になるとの期待を示した。

5月29日、フェリーが石垣港に初入港すると、集まった人たちが台湾の旗を振り、横断幕を掲げて訪問客を歓迎した。

CNN Travelが話を聞いた乗客約200人は、目新しさや比較的安い料金、時間が柔軟に使えることなどを魅力として挙げている。

「料金がかなり手頃だし、一晩眠って目が覚めたら日本なんて超便利」(サンフランシスコに住む50代後半の元ソフトウェアエンジニア、ケビン・ヘスターさん)

「飛行機に乗るようなありがちな旅行とは違う経験ができると思って試してみたくなった」(医療業界に勤める30代のサミュエル・リウさん)

60代女性ひとり旅のライ・アスーさんは、船旅ならではの冒険感覚を味わいたいと語った。石垣島は20年前に訪れたことがあり、フェリーの就航日が発表されて再び行ってみたくなったという。

昨年夏にフェリーの就航計画が発表されて以来、楽しみにしていたという乗客も多かった。しかし就航は何度も延期され、実現を疑う声も上がっていた。

ホン氏によると、就航に数カ月の遅れが出たのは船体のオーバーホールや安全点検、必要書類の準備に時間がかかったためだった。

観光公害の懸念

だが歓迎ムードの裏で、オーバーツーリズム(観光公害)が石垣島の豊かな自然環境に影響を与え、インフラを圧迫する可能性についての懸念は残る。こうした懸念は近隣の離島にも広がっている。

X(旧ツイッター)には地元住民というユーザーから、「石垣はただでさえ観光公害に苦しんでいる。台湾からのフェリーが就航して、これ以上開発が進むことは望まない」という内容の投稿が書き込まれた。

日本では今、富士山や京都といった多くの観光地で、そうした観光公害が問題になっている。

政府の統計によると、人口約5万人の石垣島ではこの3年間で観光客が急増し、2025年には過去最高の約150万人に達した。

石垣市によると、これは船で訪れる観光客が増えたことや、クルーズ船の寄港数が回復したことによる。

しかしホン氏は、フェリーの計画が持ち上がった時点で石垣市の当局者から観光公害を懸念する声は上がらず、当局はフェリーサービスを支持する姿勢だったと話している。

日本は1895年から1945年まで台湾を植民地として統治していた。正式な外交関係はなくても、経済的、文化的、歴史的なつながりは深い。特に石垣島や周辺の島には、日本統治時代に台湾から移住した人の子孫が暮らす。

日本政府の統計によると、台湾からの訪問者数は2025年に約670万人に達し、韓国、中国に次いで3番目に多かった。一方、台湾の公式統計によれば、25年に海外へ旅行した台湾人約1894万人のうち、日本への旅行者は35.5%を占めた。

「旅行者にはゆったりとした旅を楽しんでほしい」とホン氏は言う。「石垣島に3〜4日滞在し、十分リフレッシュして仕事に戻ってほしい。休暇はそのためにある」

原文タイトル:This Japanese island is closer to Taipei than Tokyo. A new ferry makes it easier to visit(抄訳)