糖質制限は日本人の体質に合っていなかった…「糖質不足は長期的には寿命を縮める」という衝撃の事実
炭水化物を控えれば、あとは何を食べても痩せる―“甘い”言葉に従って過度に糖を制限した先には、思わぬ落とし穴が待ち受けている。
「たんぱく質を摂れば大丈夫」は本当か
夕食では炭水化物を摂らない、茶碗によそうご飯の量は少なめに―こうした「糖質制限ダイエット」を実践している読者もいるのではないだろうか。糖質さえ控えれば肉や酒は自由に飲み食いできて、ハードな運動も必要ないと、都合よく考えている人は少なくない。
しかし愛し野内科クリニック院長で糖尿病治療が専門の岡本卓氏は、この風潮に警鐘を鳴らす。
「たしかに短期的に見れば、糖質を控えると血糖値が下がって、体重は減ります。しかし長期的に考えると、摂取する糖質を過度に制限すれば、体に多くのデメリットが生じかねません」
そもそも糖質とは、炭水化物から食物繊維を除いた部分のことで、筋肉や脳のエネルギーとして働く。体内で消費できる以上の量を摂ってしまうと、中性脂肪に変わって体内にとどまり、肥満につながるわけだ。
つまり糖質制限ダイエットの発想は、体に入るエネルギーを減らすことで、体重を落とすというシンプルなものだ。
一口に糖質制限といってもさまざまな種類があり、1日の糖質摂取量を70〜130gに収める代わりに、たんぱく質などは制限しない比較的緩いものは、「ロカボダイエット」と呼ばれる。
炭水化物の我慢による副作用
さらに厳しく、1日の摂取量を50g以下に抑えて、糖質の代わりに脂質をメインのエネルギー源とすることで、体脂肪を燃やすのが「ケトジェニックダイエット」だ。ちなみに、茶碗1杯の白いご飯に含まれる糖質は約55g、6枚切りの食パン1枚は約25gだと言えば、いかにハードなダイエットなのか伝わるだろう。
ただし炭水化物を我慢して見た目は痩せられたとしても、「副作用」が体内を蝕んでいる。岡本氏が指摘するのは、栄養バランスの極端な偏りによる影響だ。
「糖質制限を支持する専門家はたいてい、『炭水化物を控える代わりにたんぱく質は多めに食べていい』と主張しています。しかし肉などの動物性食品を摂取しすぎると、飽和脂肪酸が増えてコレステロール値も上がってしまう。血管が炎症を起こしやすくなり、心血管疾患のリスクが増大するわけです」
糖質制限ダイエットの提唱者であり、自らも炭水化物を控えてたんぱく質を多く摂っていたアメリカの医師ロバート・アトキンス氏も、実は心臓病を患っていたとされる。たんぱく質と一緒に脂質を摂りすぎていたせいか、一部では「死亡時の体重は約117kgもあった」とも報じられた。
「しかも糖質を制限するとなると、主食だけでなく果糖を含んだ果物も控えることになります。どちらも体に必須のビタミンやミネラルを多く含んでいるので、過度な制限は考えものです」(岡本氏)
糖質不足だと「死亡リスクは1・5倍」に
加えて、実は炭水化物を控えるのは、腸にとってもダメージが大きい。松生クリニック院長で消化器内科医の松生恒夫氏が解説する。
「炭水化物を控えると、糖質と一緒に摂るはずだった食物繊維も足りなくなってしまいます。食物繊維は腸に達すると、乳酸菌やビフィズス菌といった善玉菌の栄養になって、腸内環境を整えてくれる。エサが足りなければ、善玉菌も失われてしまうわけです。
また食物繊維には、大腸がんを予防する効果もあると考えられています。炭水化物を控える代わりに赤身の肉を摂りすぎると、逆に発がんリスクが上がってしまう」
糖質制限は日本人の体質とも相性が悪いと言われる。日本人は欧米人に比べて、ブドウ糖を血中に取り込むインスリンの分泌量が少ない。そのため体に必要なブドウ糖を確保するには、その材料となる炭水化物を多めに摂取する必要がある。しかし糖質を過度に制限してしまうと、さらにインスリンを分泌しようとして膵臓が疲弊し、次第に機能が低下しかねないのだ。
こうしたデメリットが積み重なっていき、糖質を制限すると長期的には寿命が短くなると考えられている。米ハーバード大学が約1万5000人のアメリカ人を対象に調査を実施し、'18年に発表した論文によると、1日の摂取エネルギー(カロリー)のうち炭水化物が占める割合が40%未満の人は、50〜55%の人に比べて、寿命が約4年も短いことが判明した。
【後編を読む】「糖質制限ダイエット」は脳の老化を早める…「炭水化物抜き」食生活の恐ろしいデメリット
「週刊現代」2026年5月25日号より
