『絶望ライン工 独身獄中記』を読む

人には秘密というものがある。

身内にしか言っていない内緒の話、誰にも言えない自分だけの隠し事。

企業にしても技術的な機密事項や顧客情報に当たるものは伏せられるし、契約時は秘密保持契約(NDA)を結ぶ場合が多い。

なんでこんな事を知っているかと云えば、自分も企業とンダを致しているからだ。

おっとこれ以上は言えねえンダ、ご免よ。

我は動画投稿者として所謂企業案件などはやらぬ主義であるが、その外側には普通の仕事と普通の暮らしがある。

この普通の仕事・暮らしをそのまま映像として発表しようものなら先述のンダに抵触してしまうンダ、だから嘘を織り交ぜる必要がある。

真実の中に虚構が少しでも混ざればそれはもう真実ではない(と思う)。

タライいっぱいに水を張り、アルコールを一滴垂らそうものならそれはもう水ではなく、酒である。

そんなだからフィクションは自分にとって大変心強い味方です。

安心して動画投稿ができるし、そこに演出や脚色があってもいいしなくてもいい。

嘘をつくより真実を伝える事の方が負担になるのだ、まったく不思議な世の中である。

ところで先ほど抵触を誤って「ていしゅく」と打ち間違えた所、貞淑という言葉が出てきた。

エロいなぁ、淫靡とか閨事とか漢字2文字でスケベな言葉はたくさんあるが、貞淑はなかなか上位に食い込むのではないか。そう思った次第です。

この原稿が世の中に発表されるのはおそらく半年〜1年後であると予想する。

今の職場で働き始めて5年、動画投稿者としても5年が経過しているものと思う。

5年経てば時効が成立すると聞いたことがある、数々の嘘や虚偽申告も無罪放免、すべての罪が棒引きになって赦されるのだ。

そこで本稿では、時効に甘える形で自分が犯してきた数々の罪を告解しようと思う。

ひとつよろしくお願いします。

先ずは【38歳独身】派遣ライン工の一日【工場勤務】という動画について。

小田原に出張作業に行く、という内容だったかと思うが、事実と大きく異なる脚色が加えられている。

電車内で竹の皮に包んだ握り飯を頬張るシーンが序盤にあり、後半に土産として買った末廣のあげかまが出てくる。

実は握り飯を包んだ竹皮はこのあげかまの包みなんです。

車窓の光加減を見る限り握り飯は昼、あげかまは夕方に見える。

この部分に嘘はなく、確かに行きの客車で握り飯を食べた。妙だな・・。

トリックでもなんでもなく、実際の出張は日帰りで2日間あったのです。

序盤の握り飯は2日目、後半のあげかまは1日目。

2日目は作業終了が早まり、15時頃解散となったため小田原城まで観光することができたってわけね、ルパン。いやコナン。

本当は2日間あった出張を、さも1日で行ったかのように編集をした。

何故、そんなことをしたのか。

ウケると思ったからです!という訳ではなく、実際の出来事にリアリティを持たせるために結果としてフィクションを選択した。

その頃は動画投稿1年目、私には多くの厳しい疑惑の目が向けられていたの。

悲しくって涙が出ちゃう。(涙は出ないんだけど)

本当に働いているのか、非正規で出張なんかあるのか、何故グリーン車なのか。

そんな状況で「2日間の日帰り出張で小田原行きました」なんてとても投稿できない、現実の出来事なのにリアリティがなさすぎる。

以上が小田原出張の顛末です、もう時効だと思ったので正直に書いてみました。

続いて本当に時効だと思う話を。

顧客との共同開発案件があって、装置の仕様書を自分が書いていたのだが、ずっと「〇〇社内用試作1号機」みたいな仮称で呼ばれていた。

その〇〇社内用試作何号機が同時進行でたくさんあって、もう訳がわからなくなっていたので勝手に「装置名-400D」と名称を決めちまった。

400はスケールサイズで、400ミリメートルの意味であると誰もが納得したが、Dは何か?

「社内用、ドメスティックのDです」と適当に言い訳したらこれも納得されてそのまま通り、なんか客先にもそう説明されている!

それ以降200ミリ径を200LRだとか、ちょっと大きい300ERだとか提案して弊社装置名のボーイング品番化を計略していたことをここに告解します。

最後にもう情報が出ていると思うが、「独身獄中記」書籍化本当におめでとうございます。

よく頑張った自分、編集松原、そして読者諸君。

本当はこれまでの紆余曲折や数々の苦難を乗り越えし冒険譚(主に松原が)を述べたい所であるが、それはまだ書けないンダ。

時効成立となる発行日その日まで、当局による検閲・角川コントロールが入る可能性がありますからね。

(この原稿は2025年5月に書かれたものです)