為替介入もむなしく(C)日刊ゲンダイ

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 手放しで喜べない。厚労省が8日発表した3月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、物価変動を加味した1人あたりの実質賃金は前年同月比1.0%増加。3カ月連続でプラスとなったが、ただ春の夜の夢のごとし。原油価格の高止まりに、変わらぬ円安基調と、再びマイナスに転じる材料に欠かない。

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 基本給にあたる所定内給与は27万1313円と前年同月比3.2%増。33年5カ月ぶりに「3カ月連続3%以上の伸び率」を記録したものの、実質賃金の伸び率は今年2月の2.0%から縮小した。

「4月からマイナスに転じるとみています。年明けから物価上昇が低く抑えられているのは、ガソリン暫定税率の廃止や電気・ガス料金の補助などによって、エネルギー価格が抑えられてきたからです。3月の消費者物価指数では、エネルギー価格が前年同月比5.7%減でした。税金を使って物価を抑え、結果的に実質賃金がプラスになっているだけで、プラス基調に転じたわけではありません。消費者物価の先行指標となる企業物価指数が上昇していることを踏まえれば、いずれ企業間のコスト増は消費者にはね返ってきます」(経済評論家・斎藤満氏)

■補助金財源はすでにカツカツ

「実質賃金3カ月プラス」といえども、実態はエネルギー価格抑制の下駄を履いた演出に過ぎない。しかし、頼みの補助金の財源は早くもカツカツだ。

 経産省によれば、ガソリン補助金の基金残高は先月末時点で約9800億円。7月までに枯渇するとの試算もある。政府は今年度予備費1兆円の活用を念頭に置くが、7〜9月の電気・ガス料金の補助再開も検討しており、予算は最大5000億円に上る可能性があるという。新たな財源確保は必須だ。

 中東情勢の混乱が長期化する中、エネルギー価格を押し上げる原油高・円安の状況に変わりはないのに、高市政権が出してくるメニューは補助金という場当たり的なバラマキだけ。これでは国の財政赤字は膨らみ、さらなる円安・物価高を招く負のスパイラルから脱せない。

「政府は先月末から大型連休中に約10兆円規模の為替介入に踏み切ったとみられますが、これもまた一時しのぎに過ぎません。円安基調に歯止めをかけるには、少なくとも日銀が中立金利まで積極的に利上げする姿勢を打ち出す必要がありますが、インフレ大歓迎の政府はよしとしない。こうして円の実力を示す実質実効為替レートは、1ドル=360円レベルに落ちてしまった。原油高に加え、財政悪化を招く補助金政策で円の価値は毀損されるばかりです」(斎藤満氏)

「日本列島を、強く豊かに」──。改めて高市政権のスローガンが寒い。

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