日本のラーメンが“タイ”で進化、日本初上陸の逆輸入店が名店を脅かすクオリティ
日本のラーメンが海外で独自の発展を遂げている。なかでもタイのラーメン市場は現在、約800店舗規模にまで拡大。日本で技術を学んだ職人が現地の食文化と融合させた一杯を提供。そのクオリティーの高さから、日本へ帰還する「逆輸入」する店も現れ、国内でも注目を集めている。
象徴的なのが、タイで予約困難な人気店として知られる「新道らぁ麺」の日本初上陸だ。
バンコクから車で1時間ほどかかる立地ながら、オープン前に行列ができる同店は、昨年10月から新横浜ラーメン博物館へ1年間の期間限定で出店。店主は日本への留学経験を持つ元エンジニアで、日本のラーメンに魅せられて職人へ転身し、現地で修業を積んで8年前に開業した経歴を持つ。
同店が提供する逆輸入ラーメンは、伝統的な日本の製法をベースにしながら、タイの調味料を取り入れているのが特徴だ。かえし(タレ)には、あさり、昆布、干しシイタケのだしを使用。そこにタイでおなじみのナンプラーやオイスターソースをブレンドし、日本の国産しょうゆと合わせている。
スープは名古屋コーチンなどの動物系と魚介系を融合させ、ムール貝や煮干し油で香りを演出。約7年の歳月をかけて開発された、従来の淡麗系とは異なる一杯に仕上げられている。
実際に店舗を訪れた人々からは、「貝の旨みや隠し味のナンプラーがほんのり香る芳醇(ほうじゅん)なスープでした」「変わったものってことでタイの逆輸入ラーメン!美味しかった」「エスニックな香りと味が後からやってきて、食べたことのない新感覚のラーメン」といった声が上がっている。既存の枠組みにとらわれないアプローチが、日本のラーメン愛好家の間でも評価されているようだ。
現地生産のカップラーメン逆輸入も
こうした店主こだわりの一杯が注目を集める一方で、より手軽な形でタイの味が日本へ里帰りするケースも。それが、現地で生産・販売されているカップラーメンの逆輸入だ。
世界的なブランドである日清食品などがタイ国内向けに展開している「トムヤムクン味」や、濃厚さを増した「トムヤムクリーミー味」、ガーリックとホワイトペッパーの風味がアクセントになっている「ミンスドポーク味」といった現地仕様の製品が、日本の輸入食品店やディスカウントストアの店頭に並び、SNSを中心に話題を呼んでいる。
これらの逆輸入カップ麺は、日本のものに比べて柑橘系の酸味が際立っていたり、麺に唐辛子を練り込んで強い辛味を表現していたりと、現地ならではの強い個性が特徴だ。
本場のハーブやスパイスをぜいたくに使った「尖った味付け」は、従来の日本のカップ麺に慣れ親しんだ層にとって、手軽に異国情緒を楽しめる商品として受け入れられている。
こうした実店舗からインスタント麺に至るまでの多様な逆輸入の動きは、近年ひとつの潮流になっている。
カナダ・トロント発の鶏白湯ラーメン店「RYUS NOODLE BAR」が、ラーメン博物館での出店を経て2024年11月に東京・日本橋に実店舗を構えたほか、サンフランシスコ発の「MENSHO」などが東京・大阪に展開。これらの店舗は、麺にキヌアなどの素材を練り込んだり、現地のトレンドを取り入れたスープを提供したりと、日本の既存店とは異なる視点を見せる。
もっとも、こうした異国の風を取り入れたラーメンが、日本の市場にすべて定着するわけではない。エスニック特有の風味や調味料の使い方は好みが分かれる部分でもあり、リピーターの獲得には課題も残る。それでも、海外の多様な食文化を吸収して育ったラーメンが、国内勢に刺激を与えているのは確かだろう。
