ネットTV「ABEMA」、オリジナル番組で若者の心つかんだ10年…初の黒字化も「当然で通過点ムード」
25以上のチャンネルで様々な番組を配信する「インターネットTV」のABEMAが10周年を迎えた。
昨冬、開局以来初めての営業黒字化を達成し、運営会社AbemaTVの谷口達彦・編成局長は「スタートラインに立てた。一定の安堵(あんど)感はあるが、社内はまだまだ『黒字化は当然で通過点』というムード。さらに大きくしたい」と意欲を燃やす。
ABEMAは2016年4月、IT大手サイバーエージェントとテレビ朝日が「新しい未来のテレビ」を掲げて開局。当初、1週間当たりの視聴者数は500万人を下回り、広告主数は40社程度。営業赤字が約200億円に上る年も珍しくなかった。だがてこ入れを続け、現在は1週間当たり視聴者数が最大3000万人超、広告主数が約1000社に。25年10〜12月期には四半期決算でAbemaTV単体で初めて5000万円の黒字を計上した。
大勝負に出たのが、22年のサッカー・ワールドカップ(W杯)カタール大会だ。巨額の放映権料を支払い、全試合で無料生中継を実施。日本代表がドイツやスペインを破る大躍進をみせたことも追い風となった。本田圭佑の歯に衣(きぬ)着せぬ解説も話題を呼び、谷口さんは「W杯前後では視聴者だけでなく、出演タレント、制作陣、広告主、あらゆる関係者の信頼感、期待値が変わった」と振り返る。
メディアとしての強みは、視聴者層が、高齢者が多い地上波放送と違い、10〜30歳代の若年層が約6割を占めること。番組映像を切り抜いてSNSに届ける専門チームも置く。「地上波でもYouTubeでもない独特のポジションを目指し、『最高品質か唯一無二か』という方針を一貫して掲げてきた」と語る。
スポーツを重視してきたが、放映権料の高騰が続くことを想定し、オリジナルコンテンツの制作にも注力する。高校生たちが2泊3日の“修学旅行”を繰り返す恋愛リアリティーショー「今日、好きになりました。」は、10代女性の間で絶大な人気を誇っている。最近では、のんが女性棋士を目指すヒロインを演じた「MISS KING / ミス・キング」や、柴咲コウ主演の「スキャンダルイブ」などドラマも話題となった。アニメ、将棋、大相撲、麻雀(マージャン)などのチャンネルもそれぞれのファンを獲得している。
10周年を記念し、今月中旬には特別番組「30時間限界突破フェス」を配信。東京五輪柔道の金メダリスト、ウルフ・アロンを起用したバラエティーや、政治家を招いた討論番組、インフルエンサーを起用した生放送など幅広い番組制作力を示した。総再生数は2日間で1億回を超えた。
3月のイベントで藤田晋・AbemaTV社長は展望を語った。「元々『テレビ離れ』と言われる層にアプローチしようとテレビ朝日と始めたメディア。視聴者を呼び戻し、市場を広げていくことを主軸に置いている。ぜひ『新しい未来のテレビ』として期待してほしい」(田上拓明)
