【漫画】本編を読む

 一度しかない人生の中で本当に大切なものとは? そんな普遍的な問いを描くのが、漫画『人生もっとうまくやれたのに 港区女子の絶望と幸せ』(うみの韻花/KADOKAWA)だ。

 東京に憧れ、上京した主人公の美春。彼女は、東京で暮らせば自分もキラキラと輝く都会の一部になれると信じていた。ところが現実はバイト漬けの貧しい暮らしと、お金持ちの友人への嫉妬に苦しむ毎日。なぜ自分だけうまくいかないのか。やがて美春は、飲み会に参加したり男の人とごはんに行ったりするだけでお金がもらえるよ、と誘われ、ギャラ飲みにのめり込み、そして美容整形に依存していく--。

「美春は存在したかもしれないもうひとりの私」と語る作者のうみの韻花さんに、美春が体験したギャラ飲みの実態や、自身も繰り返していたという美容整形について、そして本作を通して伝えたい想いを聞いた。

--ギャラ飲みを続けている美春は、心の疲れをごまかすように稼いだ以上にお金を使い込みます。端から見れば異常な状態ですが、まだギャラ飲みをやめられません。この頃の美春の胸中とは…?

うみの韻花さん(以下、うみのさん):心のどこかで限界は感じているけど、また普通の生活に戻るのが怖いから、もう後戻りできないし、引き返せなくなっていたのだと思います。

 一度上げてしまった生活水準と、周りからちやほやされる快感。それを手放せない依存状態を表現したくて、このあたりのシーンを描きました。

--だからこそ、若返りのための美容整形に興味を持つんですね。本作で美容整形をしっかりと描いた意図はどこにあったのでしょうか?

うみのさん:「女性の市場価値」というテーマを描く上で、美容整形は絶対に欠かせない描写だと思いました。ルッキズムは年々加速しているように感じますが、若さや美しさは永遠のものではないですよね。

 どれだけお金をかけて若作りをしても、本物の若さには勝てないし、若さにこだわったら自分の価値は日に日に下がってしまう。その残酷さを描きたかったという想いがあります。

--どんどん美容整形にのめり込んでいく美春の姿は、病的で痛ましかったです。

うみのさん:外見をどれだけ完璧に近づけても、心が満たされない限り終わりはない虚無感や切実な思いを感じ取ってもらえたら、と思って描きました。美容整形にお金をかければかけるほど、自分本来の価値がどんどんわからなくなっていくような迷子の状態ですね。

--うみのさんご自身も美容整形にのめりこんでいた頃があるそうですね。当時は虚無感を覚えることはありましたか?

うみのさん:日に日に老いていくからこそ、早くキレイになりたくて、毎日のように美容施術を受けていた時期があって。でもやっぱり、心が満たされない限り整形には終わりがないから。焦れば焦るほど、虚無感は増していたと思います。

取材・文=吉田あき