居酒屋とウソをついてキャバクラ勤務、夫にバレて離婚危機 慰謝料や親権はどう決まる? 弁護士が解説
キャバクラで働いていたことが夫にバレました。離婚になったら慰謝料や子どもの親権はどうなるのでしょうかーー。そんな相談が弁護士ドットコムに寄せられました。
相談者は、夫に「居酒屋で働いている」と嘘をついてキャバクラに勤めていました。子ども2人はまだ小学低学年以下で、「夜の仕事をしている間、私の姉が面倒を見てくれており旦那は一切ノータッチでした」といいます。
夫にバレてから離婚話が進んでおり、上の子どもは相談者に「ついていきたい」と望んでいるそうです。もし離婚となった場合に、慰謝料や子どもの親権はどのように決まるのでしょうか。簡単に解説します。
●そもそも離婚原因にあたらない可能性がある
結論としては、夫に内緒でキャバクラ勤務をしていただけで、直ちに離婚や親権を失うことにはならないと考えられます。
この問題は2つに分けて考えると整理しやすいです。
1)キャバクラに内緒で勤務していたことが法律上の「離婚原因」にあたるかどうか 2)仮に離婚原因があったとして、そのことが親権に影響するかどうか
まず1つ目についてです。
まず、お互いが合意すれば離婚できますし、相談者も離婚自体はするつもりなのかもしれません。
しかし、離婚したいわけではないが、離婚せざるを得ないと考えているとすれば、それは誤解である可能性が高いです。
お互いの合意によらず、裁判所が強制的に離婚をさせる「裁判離婚」には、法律上の「離婚原因」が必要です(民法770条1項)。相談のケースで問題となりそうなのは、「不貞な行為」(同条1号)と「婚姻を継続し難い重大な事由」(同条4号)です。
まず「不貞行為」にはあたりません。「不貞行為」とは、基本的には配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをいいます。
性的関係を結ぶことが必ずしも求められるわけではないという議論はありますが、いずれにせよキャバクラ勤務で接客を行った程度では、不貞行為にはあたりません。
「婚姻を継続し難い重大な事由」にも、これだけではあたらないと考えられます。
相談者がなぜキャバクラで働くことになったのかも問題です。たとえば、家計が苦しく、日中は育児があって働けないので単価の高いキャバクラを選んだ、などの事情があれば、「婚姻を継続しがたい事由」とは評価されにくいでしょう。
ただし、キャバクラで知り合った客と性的関係に至っていた場合は、「不貞行為」として離婚原因にあたりえます。
●親権はどうなるか--共同親権施行で見通しは立てづらい状況
次に2つ目、親権の問題です。
仮に離婚することとなったとしても、親権は別の問題です。
まず、従来(改正前)のルールで考えてみます。親権は「子の利益」を最優先に判断します(民法819条、820条)。その判断では、子の意思と、これまで誰が子どもを育ててきたかという実績などが重視されます。
まず、今回の相談では、上の子も「母親についていきたい」と言っています。 子の意思は子どもの年齢が高くなるほど尊重される傾向にありますが、小学校低学年の子どもであれば、重要な要素にはなるでしょう。
また、下の子については意思表示はできないかもしれませんが、乳幼児については主に面倒を見ている人との継続的な関係を重視する傾向があり、この点も相談者に有利な事情といえます。
次に、今回の相談では、夫は夜間の子育てに「一切ノータッチ」とのことです。相談者が夜間に働いている間は、相談者の姉が子どもの面倒を見ていました。
たしかに、夜間に働いていたこと自体は不利な事情になりえます。しかし、その間も子どもが適切に養育されていたかどうかが重要です。
本件では母である相談者がいない間、姉が対応しています。母親不在の夜なのに、夫が子育てに一切関与していない点が親権の判断に影響すると考えられます。
以上のような事情からすると、相談者が親権を取れる可能性はかなり高かったと思われます。
次に改正後はどう考えればよいでしょうか。
2026年4月1日に改正民法が施行され、離婚後の「共同親権」制度が始まりました。はじまったばかりの制度ですので、今後の予測は非常に立てづらい状況です。
新たな制度の下では、父母の協議で親権者が定まらない場合、共同親権か単独親権かは裁判所が判断します。DVや子への虐待がある場合や、父母が協力して親権を行使することが現実的に困難と判断される場合などには、裁判所は必ず単独親権としなければなりません(民法819条7項)。
本件では、父親は相談者が仕事に行っている間、「ノータッチ」だったそうですが、これが上の「困難と判断される場合」にあたるのかは、2つの意味で分かりません。
1つめに、現時点では同条の運用がどうなるかが分かりません。共同親権か単独親権かの具体的な判断基準については、施行直後で裁判所の判例がなく、本記事の執筆時点ではガイドラインも未整備のままです。
2つめに、本件での具体的事情もはっきりしません。相談者の夫が、常日頃から一切子育てに関与していなかったのか、そうではなく、ただ妻が仕事に行っている間の子育てについてはノータッチだったのか、といった事情などです。
そこで、共同親権となり、監護者(同居して子の面倒を見る人)は母親とされる形もあります。この場合、日々の養育は母親が単独で行えます。しかし、進学先の決定や重大な医療判断などは、父母の協議が必要となります。
以上のように、共同親権か単独親権か、また監護者がどのように定められるかについての見通しは、特に現時点では明確なことがいえない状況です。不安な場合は弁護士に相談し、手続きを進めていくことをお勧めします。
●慰謝料は請求されるか
キャバクラ勤務だけを理由に、慰謝料が認められる可能性は低いです。
慰謝料が認められる「不貞行為」とは、基本的には配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをいいます(最高裁昭和48年(1973年)11月15日判決)。必ずしも性的関係がなくても良いという議論はありますが、キャバクラでの接客業務程度では不貞行為にはあたりません。
ただし、キャバクラで知り合った客と性的関係に至った場合は、不貞行為として慰謝料を請求される可能性があります。
不貞のほか、キャバクラ勤務やそれを隠していたことが、婚姻関係が破綻した主な原因と評価されるような特段の事情があれば、不貞行為とは別の根拠で離婚慰謝料が問題となる余地もあります。
ただし、相談内容からだけだと、そこまでの認定がされる可能性は高くないと考えます。
●養育費はもらえるか
養育費は子どもの権利であり、離婚の原因(どちらが悪いか)とは関係ありません。夫が「払う気がない」と言っていても、法的に免れることはできません。
相手が支払いを拒む場合は、家庭裁判所に調停を申し立て、給与などの差し押さえ(強制執行)を求めることが可能です。
監修:小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)
