ビジネスのアイデアがたくさんあがるのに成果があがらないのはなぜか。ビジネス書のベストセラー作家、ケヴィン・ダンカン氏は「必ずしもアイデアの数が重要だとは限らない。重要なのはその質であり、それが本当に実行されるかだ」という――。(第2回/全2回)

※本稿は、ケヴィン・ダンカン『頭のいい人はこう考える The Smart Thinking Book』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。

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■さまざまな問題や刺激がイノベーションの根源

思い込み:天才だけがすごいアイデアを思いつく

頭のいい人はこう考える:すごいアイデアは幅広い執拗な好奇心から

素晴らしいアイデアを思いつく人々というのは、とんでもなく才能があるか、たんにツイていただけだ、と多くの人は考える。

どちらも必ずしも真実とは言えない。それにあなたが革新(イノベーション)を起こす確率を高めることは不可能ではない。

すべては執拗なまでの好奇心をもつところから始まる。

幅広い物事に興味を抱く性格にならなければならない。

光り物を拾い集めるカササギのように、いろいろな刺激をこまめに拾い集めよう。

厄介なタスクや問題を抱えているときは、実質的には、思考の奥深くに指令を出しているようなものだ。

やがて、いわゆる“ひらめき”の瞬間が訪れ、脳がなんらかの興味深い気づきを、そのタスクと結びつけてくれる。

これは運でもなければ、たんなる才能でもない。

あなたがその問題に好奇心を向けたことによる直接的な結果だ。

こうしてイノベーションは生まれるのである。

■頭を真っ白にする

思い込み:新しいものは過去から生まれる

頭のいい人はこう考える:昔と決別しないと斬新さは生まれない

自分自身もしくは同僚が、しきりに過去のことを話しているときには、前に進むのは難しい。

過去の出来事は、つかの間の関心事にすぎない。

それよりもはるかに重要なのは、いま起こっていること、あるいはこれから起こることだ。

だから、新たなアイデアを生み出すときには、過去のことを忘れる必要がある。

戦略家(ストラテジスト)で文筆家のアダム・モーガンは言う。

「目の前の過去と決別せよ」

言い換えれば、知っていることをすべて忘れて、もう一度考えろ、ということだ。

このアプローチは、新たな発想を得るうえで、クモの巣のように張りめぐらされた従来の考え方を一掃し、真に何の制約もない自由な土台を形づくるのに適している。

アイデア出しやブレインストーミングをする際にとても役立つルールでもある。

■代替案を複数用意しておく

思い込み:すごい案をひとつ考え出せばいい

頭のいい人はこう考える:代案は絶対に必要

計画は、だいたい蜃気楼のようなものだ。

入念にA案を計画することは何も間違ってはいない。ただし、まったくその通りに起こる可能性は低い。

だから、B案が必要だ。

それとおそらくは、C案、D案、E案……なども。

人や会社によっては、A案が役に立たないとわかると、大いに苛立ちをあらわにする。

これはたいてい、その案に対する思い入れが強いからだ。

だがそれでは、十分な情報に基づいた方法とは言えない。

なぜなら、もしA案が失敗だとわかったのなら、それを続ける意味がないからだ。

しかも、幸いにしてB案のほうが結果的にはA案より優れていると判明するかもしれないからだ。

写真=iStock.com/Yusuke Ide
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■質のいいアイデアに時間とお金をかける

思い込み:アイデアをたくさん出すのはいいこと

頭のいい人はこう考える:いいと思うアイデアを没にしろ

アイデアの多さを健全なビジネスの指標と考えるのが現代の風潮だ。

しかし、必ずしもアイデアの数が重要だとは限らない。

重要なのは、その質だ。

さらに言えば、それらが本当に実行されるのか、だ。

あまりにも多くのアイデアに手を出しすぎて、十分なリソースを投じることができていないケースが多々ある。

それはアイデアが多くないのと同じくらい、成功の妨げとなる。

だから、だめなアイデアを没にするだけではいけない。

いいアイデアも、多少は没にしよう。

やや物足りないと思っているなら、なおさらだ。

そうすれば利用可能なリソースに余裕が生まれる。真に素晴らしいアイデアに化ける見込みのあるアイデアにそのリソースを投入することができるのだ。

■量は質を凌駕する

思い込み:アイデアは最後にはひとつに決める

頭のいい人はこう考える:二者択一から両立へ

クリエイティブなアイデアを出すには、ときに質より量を優先する必要がある。

ケヴィン・ダンカン『頭のいい人はこう考える The Smart Thinking Book』(サンマーク出版)

使えるアイデアや比較的いいアイデアは、たくさんの案を出してこそ出てくるからだ。

それならば、アイデア出しの場で成果を得られるかどうかは、そのときに使われる言葉に大きく左右されるかもしれない。

イノベーションやデザイン思考で著名な経営思想家ロジャー・マーティンは、次のように述べている。

「経営者は“AかB”という二者択一思考を“AとB”という両立思考に変える必要がある」

つまり、「これかこれならできるかもしれない」というのではなく、「これとこれならできるかもしれない」という考え方を議論の中心に据えるのだ。

これは、多くのアイデアを没にして数個を残すという考え方とは当然ながら相反している。

しかし、クリエイティブで革新的だと評される一流企業(ヴァージン・グループやプロクター・アンド・ギャンブル[P&G]など)の大半が、まずは多くのアイデアを試して、成果が上がったものだけを継続してきたという点は興味深い。

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ケヴィン・ダンカンビジネスアドバイザー兼マーケティングエキスパート
イギリスのベストセラービジネス書作家。広告・マーケティング業界で20年働いた後に独立。14年にわたってさまざまな企業にアドバイスを提供。クライアントの数は400を超え、手がけたプロジェクトの数は1000を超える。クライアントは、ディスカバリーチャンネル、ロンドン証券取引所、ノキア、シェルなど多数。ロンドン大学キングス・カレッジで講義を行う他、テレビやラジオなどにコメンテーターとして出演している。著書は25万部以上を売り上げ、20の言語に翻訳されている。著書に『クリエイティブコンサルタントの思考の技術』(かんき出版)、『頭のいい人はこう考える The Smart Thinking Book』(サンマーク出版)。
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(ビジネスアドバイザー兼マーケティングエキスパート ケヴィン・ダンカン)