田中麗奈 縁に導かれるまま 「“役”と一緒に暮らしていることが普通なんです」

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「ご縁」で繋がった作品

4月3日公開の映画『黄金泥棒』で、十数年ぶりにコメディ作品へ挑戦した俳優の田中麗奈(45)。

俳優デビュー作となった’98年公開映画『がんばっていきまっしょい』では、高校に通いながら憧れのボート部を設立する主人公・篠村悦子(通称:悦ネエ)を熱演。映画のラストパートで悦ネエが「がんばっていきまっしょい!」と声を張り上げる姿は視聴者に爽やかな感動をもたらし大ヒットを遂げた。

以降も『はつ恋』(’00年)や『東京マリーゴールド』(’01年)など立て続けに注目作品へ出演しながらキャリアを積み重ね、現在も第一線で活躍している。あっという間にキャリアは25年超。さらに、昨年8月以降だけで、6本という怒濤(どとう)の映画出演ラッシュを迎えている。

「出演が続いたのは本当にたまたまです。現在上映されている『ナイトフラワー』や『禍禍女(まがまがおんな)』といった映画は、’23年放送のドラマ『いちばんすきな花』(フジテレビ系)や’23年度のNHK連続テレビ小説『ブギウギ』に出演した直後にいただいたお話で。二つのドラマの撮影が終わった後、一気に映画の現場に入ったんです。一つの作品が次を呼んでくれるような感覚で、ご縁に導かれるままやらせてもらっています」

田中は引き寄せる「ご縁」の質も変化していると語る。それを実感したのが、社会派映画『福田村事件』(’23年)への出演だった。

「この作品は関東大震災後に起きた日本人同士の虐殺事件を題材にしているのですが、台本を最初にいただいた時はメッセージ性が強すぎて、『これを世に出して大丈夫なのかな』と。役者として違う色がついてしまわないか、という不安がよぎりました。でも、台本がどんどんブラッシュアップされていったので心配はなくなりましたね。ただ、内容の理解や伝え方などは気を引き締めていかなきゃいけないと思いました。あと、レビューは見ています。伝わる人には伝わるという想定だったのですが、非常に多くの方に共感していただき、心のモヤモヤが一気に解消されたような気持ちでした」

そしてこうも続ける。

「昨年12月に公開した映画『星と月は天の穴』の荒井晴彦監督(79)は、『福田村事件』で脚本を担当された方の一人なんです。一瞬戸惑ってしまうような作品でも、こうしてのちのご縁につながっている。出演してよかったと心から思いますね」

怒濤のスケジュールの中で、まったく異なる役柄を次々と生きていく日々。その圧倒的な没入感は、北川景子(39)主演の映画『ナイトフラワー』でのエピソードからも窺(うかが)い知ることができる。

「『ナイトフラワー』では映画の後半から出演シーンが多くなり、主人公の運命を動かすような重大な役割を与えられた大きなプレッシャーで、常に緊張していました。私自身の撮影日数は少なかったんですけど、作品がクランクインしたと同時に、自分も日々現場に入っているような緊張感でずっと過ごしていたんです。現場にいない時間でも、音楽を聴いている時とかママチャリで全力疾走している時ですら、ふっと役に入るんです。役と一緒に暮らしているという感覚ですね。私にとっては普通のことです」

″お仕事は頑張る、子育ては頑張り過ぎない″

生活の中にまで役を憑依(ひょうい)させる凄み。この出演ラッシュを乗り切った背景には、2年前に下した大きな決断があった。

「子供が生まれて現場に立てない時期もあったので、スキルアップするにはどうすればいいか考えて。これから今までの倍ぐらい働いていくって考えると、『今しかない!』と思って、2年前から演技の基礎を一から鍛え直すアクティングクラス(演技教室)に通い始めました。前から受けたかったんですけど、『レナが来るとみんながびっくりするから』って言われて行けなくて。今でも『信じられない!』『必要ないんじゃない?』って言われることもありますね」

ベテランの鎧(よろい)を脱ぐほど彼女を突き動かしたのは、純粋な芝居への欲求だ。

「そこは本当に自分のためなんで。ある意味、お芝居の筋トレみたいなことですよね。作品の間が空いた時に、すぐに動けるよう脳と身体の準備をしておくんです。それに、基礎やメソッドの知識があればお芝居の幅が増える。『絶対こうしなきゃ』と縛られるわけではないですが、毎回ただ自由にやるのとも違いますし。ある種のベースっていうのは、身につけておいて損はないと思います」

アクティングクラスに通うことで表現の深みをストイックに追求する一方で、カメラを離れれば6歳の子供を持つ母でもある。

「モットーじゃないですけど、″お仕事は頑張る、子育ては頑張り過ぎない″っていう感じですかね。仕事は集中してやっていますけど、子育てはいかに楽するか、いかに頑張り過ぎないか、に徹しています(笑)」

そんな田中に「お子さんは『なっちゃん』を飲むんですか?」と記者が質問してみると、照れ臭そうに頷(うなず)いた。

「そうなんですよ。今、子供が普通に飲んでるんです。『なっちゃん飲みたい!』って。いつか誰かから聞いたみたいで、『これママがやってたんでしょ?』とか言い出して(笑)。そんなふうに我が子が自分の仕事をわかってくれるのも嬉しいですし、以前、情報番組の『あさイチ』(NHK)に出演した時に『自分の子供に″なっちゃん″と呼べる名前や″れな″と名付けました』というメッセージを視聴者の方からたくさんいただいたことにも、本当に感動しました。当時の活動が、今も誰かの人生にそれほど深く残っているんだなって」

海外の作品に出演したい

田中は役者としてスクリーンに立ち続けながら、毎月7〜8本の映画をコンスタントに鑑賞するマニアでもある。『黄金泥棒』の作中では同じ主婦でありながら金に魅せられていく美香子を演じているが、「現実で大金を手に入れたら?」と質問すると、少しはにかんだ。

「映画を作りたいですね。スティーヴン・スピルバーグ(79)の『E.T.』や『グレムリン』といった、自分が小さい時に感動したものを子供と一緒に観てまた感動する機会が最近多くて。もしもっとお金があったら、年代を超えて、ずっと残るような映画を作りたい。でもメガホンを取るより、やっぱりプレイヤー(俳優)でいたいです。

今回ご一緒した森崎ウィンくん(35)はスピルバーグ監督の作品に出演されていて、本当に尊敬の眼差しで見ています(笑)。私は韓国のホン・サンス監督(65)の映画が好きでいつか出演したいです。近年は配信なども盛んで海外との合作も身近になってきたので、そうしたプロジェクトにも積極的に参加していきたいと思っています」

表現者としての野望は尽きない。彼女を突き動かし続ける原動力とは何なのか。

「映画というお仕事は、自分を見つけてくれて、世に出してくれた。とてもご恩があるんです。だからこそ誠実に、純粋な気持ちでこれからも向き合っていきたい。いただいたご縁を生かして、お芝居の内容はもちろん、現場での人間力も必要だと思う。そこは成長していかないといけない。これからも『使える役者』でいたいです」

かつて「誰か私を見つけてくれ」と願っていた少女は、今や映像界に欠かせない存在へと躍進した。

『FRIDAY』2026年5月1・8日合併号より