3Dプリンターで自由に家造り、モルタル絞り出し重ねて造形…工期短縮やコストダウンの可能性
建設用3Dプリンターの活用が急速に広がり、住宅の建設に取り入れる動きがある。
従来の家造りと比べて、自由な造形が可能になったり、工期の短縮やコストダウンなどが見込めたりするという。3Dプリンター住宅の普及の可能性を探った。(山田朋代)
■10日で造形
3月下旬、宮城県栗原市の山あいの集落を訪れると、円筒状の白い建物「ステルスハウス」に目を奪われた。
高さ約6メートルの建物は昨年11月、建設用3Dプリンターを使って建てられた。建設用3Dプリンターの技術を提供した企業「築(きずき)」(宮城)と、設計・施工した建設会社「オノコム」(東京)によると「建築確認を取って販売した2階建て3Dプリンター住宅は国内初」という。
層が積み重なった外壁を触ると、すべすべしている。室内に入ると、洗面所などへの通路はアーチ状の造形が美しく、3Dプリンターならではと感じた。2階には、キッチンと食事用のテーブルがある。延べ床面積50平方メートルとコンパクトだが快適そうだ。
施主は地元企業。20社以上の協力企業の技術を集結させた。設計データを読み込んだプリンターのノズルから、セメントや砂を混ぜたモルタルを搾り出し、何層にも重ねて基礎や外壁などを同時に作り上げた。造形は10日間で終えたが、現在の建築基準法ではモルタルだけの建築物には認定手続きが必要なため、部分的に壁に鉄筋コンクリートを入れ、工期は半年ほどかかった。オノコムの那須貴寛さんは「規制が緩和されれば、より短期で仕上げられるようになる」と話す。
研究開発が活発に行われる背景の一つに、建設業界の人手不足がある。野村総合研究所の2023年の試算では、大工やとび職など住宅の建設にかかわる「住宅建設技能者」の人数は、40年には、20年のおよそ63%の約51万人まで減少する見通しだ。
住宅メーカー「リブワーク」(熊本)は人手不足に危機感を覚え、23年から、家造りに3Dプリンターを活用。今年1月、約100平方メートルの平屋住宅(2000万円台〜)の販売を始めた。
石灰などを混ぜて開発した特殊な土を主原料に、3Dプリンターで外壁を造形。柱などに木を使った木造建築物だ。自然由来の素材で環境負荷を抑えた。同社の永野真史さんは「工期やコストを従来の半分にできれば、職人不足の解決策となる」と期待する。
一方、機材購入など初期費用が高額で、技術者も少ないため、3Dプリンターの住宅は、身近なものとはいえないのが現状だ。「誰でも車を買うくらいの値段で家を買えるように」と掲げるのが、住宅メーカー「セレンディクス」(兵庫)だ。同社の共同創業者、飯田国大さんは、「住宅価格を抑え、自由に生きることを阻害する長期のローンをなくしたい」と強調する。
同社は23年、延べ床面積50平方メートルの3Dプリンター住宅「セレンディクス50」を開発。550万円(税別)で限定6戸を販売し、即日完売した。部材を工場で造形することで、現場での施工時間を短縮し、労務費を抑えた。24年には能登半島地震の被災地・石川県珠洲市で、2人世帯向け住宅を建設。災害復興にも役立ちそうだ。
■規制緩和検討
国土交通省は、建設分野での3Dプリンター活用に向けて、23年度から、新たな工法や材料の基準を検討してきた。
名城大理工学部教授(建築材料・生産)の寺西浩司さんは、「3Dプリンターを使えば、曲面も比較的容易に造形できる。建築デザインの自由度が飛躍的に向上するだろう」と指摘する。ただ、国内外で建設3Dプリンティングの研究開発が本格化してから、まだ10年ほど。「規制のあり方を検討し、ツールを開発するほか、3Dプリンターを用いた設計に詳しい専門家を育てることも重要だ」と話す。
廃棄物活用して内装も
3Dプリンターは、内装や外構にも活用されている。
大和ハウス工業(大阪)は、戸建て住宅の門塀を量産化する研究を進め、近く、注文住宅や建売住宅に導入する予定だ。建設現場や工場から出るコンクリートや断熱材、プラスチックなどの廃棄物を配合し、独自開発した素材を使う。
スペースワスプ(岐阜)は、花の茎や木材など植物の廃棄物から抽出した繊維をもとに樹脂を作り、3Dプリンターを活用して壁や床、家具などを製造している。代表の伊勢崎勇人さんは、「あらゆる植物から材料を作れて、不要になったら作り替えもできる」という。
