【熊本地震10年】「災害を自分事へ」転院による災害関連死で娘を亡くした母の思い
避難生活での身体的、肉体的負担や病院の機能停止による治療の遅れなど、災害が間接的に影響して亡くなるケースをさす「災害関連死」。熊本県によると、熊本地震の犠牲者は約8割の225人が関連死によるものでした。適切な対応をすれば防ぐことができたともいわれる災害関連死。地震から10年、4歳の娘を亡くした母親が医療従事者に伝えたこととは。
16日に行われた熊本地震の犠牲者を悼む追悼式。合志市に住む宮粼さくらさん(47)は本震の5日後、4歳だった娘の花梨(かりん)ちゃんを亡くしました。
■宮粼さくらさん
「10年たったって言われると、多分これから実感してくるんでしょうけど、とにかく今はね、もう会いたいですね。花梨に会いたい。会いたくてしょうがないね。今はもう…」
先天性の心臓の病気を患い、熊本地震の時、熊本市民病院に入院中だった花梨ちゃん。
病院が被災して転院を余儀なくされたのです。その後、体調が悪化し、本震の5日後に命を落としました。
熊本地震の4か月後、花梨ちゃんは地震後の転院による負担が原因で亡くなったとして「災害関連死」に認定されました。
■宮粼さくらさん
「私は(関連死の申請を)しなくていいって、申請をしても花梨が帰ってくるわけじゃない。でも主人は『絶対に花梨は病気に負けたんじゃない。地震があって移動したことへの負担が絶対あるから花梨の頑張りを認めてもらいたい』って言ったんですよね」
避難生活でのストレスや病院の機能停止による治療の遅れなど、災害が間接的に影響して亡くなるケースを指す「災害関連死」。認定されれば災害の犠牲者として最大500万円の弔慰金が支給されます。
ただ、申請をめぐっては課題も。
■災害関連死の認定に携わった在間文康弁護士
「最初のスタートのところで遺族の負担があまりにも大きすぎるので『そんなに大変だったらやめておこう』となる方もいらっしゃる」
災害関連死の申請は遺族自らする必要があり、大きな精神的負担を伴います。さらに在間弁護士は、制度自体を知らない人や周りにも被災者がいる中、弔慰金を受け取ることをためらい申請しない遺族もいるといいます。
3月、さくらさんは医療関係者などが集まる学会で災害関連死について報告をすることになりました。
■宮粼さくらさん
「関連死のことになると『亡くなったか』ではなくて『死期が早まったか』という考え方。でも家族にとって30分とか1時間はすごく重要、すごく大事な時間 それは花梨の事例を通して触れてもらえるといいのかなと思います」
新潟で行われた学会に参加した宮粼さくらさん。熊本地震で、娘の花梨ちゃんの搬送に携わった鹿児島の医師も一緒です。
■花梨ちゃんの搬送に携わった鹿児島市立病院 髙間辰雄医師
「一番伝えたいことは、時間を取って『ここです』って言ってもらった方がいいかな」
■宮粼さくらさん
「やっぱり次の世代に伝えていって、その人たちをどんどん出していかないといかんねって思ってるのが一番」
さくらさんの報告では。
■宮粼さくらさん
「災害関連死という経験を『次の世代の防災意識の向上』と『災害時に命を守る人材の育成へつなげること』を目的としています。遺族による経験の共有から、災害によって何が起きたのかを具体的に知ること。そして、受講者が状況をより深く理解し災害を『他人事』ではなく『自分事』として捉えることにつなげています」
娘と同じような犠牲を生まないために…さくらさんは、言葉を紡ぎました。
■東京都の看護師
「きっとつらい思いをされたけれども、それを次のステップに変えられているそのお気持ちがすごいなと思いました」
■長野県の救急医
「何が現場で起きているかを多くの人が知って、そこからそれをなくしていくには、どういう取り組みをしていけばいいのかという取組みの方へつなげることが必要」
花梨ちゃんがつなぐ、新しい縁。
■宮粼さくらさん
「10年目の花梨と新しくつながったような、そんな気がしますね。10年を迎える前にひとつ取り組めたことは本当に良かったと思っています」
さくらさんはこの先も「娘の生きた証し」を伝え続けます。
