イメージ画像

写真拡大

書店に行けば、人工知能(AI)の急速な普及に伴い、消え去る仕事や注目を浴びる仕事を予想する本があふれている。

まだまだ先の話と思うかもしれないが、デジタル化が進んでいる韓国では、業種ごとの明暗が鮮明になっている。特にこれまで積極的に新入社員を募集していたIT・通信企業が採用枠を大幅に減らしていることに関心が集まっている。

韓国の就職情報サイト「キャッチ」のまとめによると、IT・通信企業の今年3月の新規採用数は、前年比で73.0%も減少した。この流れを裏づける政府のデータもある。

韓国雇用情報院が発刊した「雇用保険統計」(雇用保険加入就業者の総数)によれば、コンピュータのプログラミングおよびシステム統合管理業従事者は昨年12月基準で6万322人だった。2024年3月の6万5441人と比べると、1年9カ月の間に5119人(約7.8%)も減少した。

同じ期間で比較すると、雇用保険加入就業者は約22万人増加していることから、経験の浅い若い開発者の需要が減り、人員整理が行われている可能性がある。

カカオやNCソフトといった韓国を代表する大手IT企業でも人員削減が行われ、AIツールの活用を前提とした業務の見直しが進んでいる。投資銀行業界などでも、既存の投資手法や業務ノウハウを知っている人材がAIを活用することで、新人を必要としない環境が整いつつある。

即戦力の「中古新人」を探せ

ちなみに「キャッチ」のまとめによれば、新規採用数が大きく減った業種は1位が教育・出版(マイナス90%)、2位IT・通信(同73%)、3位販売・流通(同69%)、4位サービス(同58%)、5位メディア・文化(同51%)、6位銀行・金融(同50%)の順だった。AIを積極的に導入し、業務の効率化を図った業種が上位を占めている。

こうした中、企業の採用方針にも変化が生じている。「中古新人」の採用に乗り出す企業が増えているのだ。これは2年程度のキャリアを持ち、現場に配置された後、すぐ主体的に業務に取りかかれる人材を指す新語だ。

「中古新人」を獲得できれば、企業は、新入社員研修にかかる費用と時間を削減することができるというわけだ。

「休む」若者70万人時代

さらに、労働市場の構造的な変化も若者の就職を阻んでいる。大企業では60歳定年制の定着により、年配の経験者が職場に留まる傾向が強まっており、若年層の入る余地が失われている。

韓国では仕事をせず、求職活動もしない「休む若者」が70万人以上いるとされ、社会問題化しているが、働きたくとも求人が少ないことが影響している。

韓国政府の関係者は、有力紙・毎日経済新聞に対し、「今後IT業界を中心に解雇が広がるという話が出ており、AIの衝撃について実態調査を行う」と危機感を語っている。

文/五味洋治 内外タイムス