Image: NASA/Josh Valcarcel, Edited by Gizmodo

たしかに、「なにあれ?」とは思うよね。

NASA(アメリカ航空宇宙局)のアルテミス2は、輝かしい成功を収めて地球に帰還しました。

大気圏再突入の際、オリオンカプセルの耐熱シールドは1,650度に達する高温から宇宙船と乗組員を守りましたが、着水後、宇宙飛行関係者の一部から、一見して異常な損傷のように見える箇所があると指摘されました。

大気圏再突入で見えた異変

先週末にかけて、特に1枚の画像がSNSで拡散されました。拡大された画像には、融除式耐熱シールドが装着されているオリオンの底面から、大きな破片が欠落しているように見えます。

大気圏再突入時には、耐熱シールドが宇宙船から熱を放散させる構造になっているため、制御された融除(熱による蒸発)が発生するのは想定内だそう。それでも、この画像をきっかけに、欠落した破片が異常な融除の兆候なのではないかと推測する声が一部で上がったようです。

テック系ウェブメディアのArs Technicaで宇宙担当のシニアエディターを務めるEric Berger氏が、画像と一緒に「専門家ではないので、これについてはあまりコメントできませんが、近いうちにNASAが何か発表してくれるといいですね」とXに投稿(下の投稿を参照)しました。

NASA長官、真相を語る

この投稿へのメンションで、NASAのジャレッド・アイザックマン長官が事実関係を明らかにしています。

変色は剥離した素材によるものではありません。確認された白い部分は、圧縮パッドの領域に対応しており、その局所的な形状、アブコートと呼ばれる耐熱素材の副生成物ならびに過渡的な加熱環境と整合します。我々は、アークジェット試験でこの挙動を確認しており、この圧縮パッド領域でも同様の現象が起きると予想していました。

要するに、異常は何もなかったというわけなのですが、NASAは予定に従って、オリオンの全システムにわたるデータ検証を実施するそうです。調査結果は一般公開されると長官は付け加えています。

アルテミス1を振り返ってみる

変色が想定外の損傷の兆候だと早合点してしまった人もいるかもしれませんが、そう思ってしまうのも理解できるんですよね。アルテミス1の耐熱シールド損傷が記憶に残っている人たちは、カリフォルニア州サンディエゴ沖に着水したオリオンを、おそらく注意深く見守っていたことでしょう。

アルテミス1計画では、オリオンの耐熱シールドに問題があることが明らかになりました。2022年12月に無人カプセルが地球に帰還した後、エンジニアたちは耐熱シールドの大きな塊が不均一にはがれ落ちていることに気づきました。

その後の調査で、耐熱シールドの融除性外層の内部で発生したガスが適切に排出されなかったために、圧力が上昇して大きな破片が剥離したことが判明しました。

有人ミッションであるアルテミス2に向けてこの問題を解決するために、NASAのエンジニアは耐熱シールドの設計を変更するのではなく、アルテミス1で実施した「スキップ再突入(熱負荷を下げるために再突入中に高度を上げ、再び宇宙空間に戻ってから再突入する方法)」を見直して、急角度で一気に再突入する方式を選びました。

そうすることで、理論上は再突入中も外層が「呼吸」できるようになり、ガスの蓄積や亀裂の発生を防げるはずなのだそう。

残された疑問と成果

この選択には、全員が賛成したわけじゃなかったといいます。特に批判的だったのは、NASAの元宇宙飛行士であるチャールズ・カマーダ氏でした。同氏は、エンジニアたちが耐熱シールド損傷の根本的な原因を完全には理解していないため、変更後の再突入方法でどのような挙動をみせるか予測できないと主張しました。

NASAの調査結果を待っている状況ですが、アイザックマン氏は、着水直後にダイバーが撮影した映像や、ドック型輸送揚陸艦のジョン・P・マーサ艦上での初期点検では、「予期せぬ状況は確認されなかった」と述べています。

調査結果がどうであれ、オリオンに搭乗していた4人の宇宙飛行士が極めて良好な状態で地球へ帰ってきたのだから、耐熱シールドが役割を果たしたのは明らかです。いくつかの厄介な配管のトラブルを除けば、打ち上げから着水に至るまで、宇宙船は見事に機能しました。

いまのところ、耐熱シールドに重大な問題はなさそうですが、とりあえずNASAの調査結果を待ちましょう。

アイザックマン氏によると、来年の打ち上げ、そしてその先にある月面基地の建設に向けて、アルテミス3をスペースシャトル組立工場に搬入する準備を進めているそうです。来年のアルテミス3に続いて、2028年にはアルテミス4が月面着陸を行なう予定とのことです。

【こちらもおすすめ】
GIZMODO テック秘伝の書
1,650円
Amazonで見る
PR