『LOVED ONE』©︎フジテレビ

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 2026年春ドラマのラインナップを眺めると、サスペンスやミステリー作品の多さに驚く。4月8日より放送がスタートする『LOVED ONE』(フジテレビ系)も、変わり者の天才法医学者と崖っぷちのエリート官僚がコンビを組む、異色の法医学ヒューマンミステリーだ。

参考:『ちょっとだけエスパー』大泉洋×ディーン・フジオカ×北村匠海×岡田将生に独占インタビュー

 法医学をテーマにしたヒューマンミステリーといえば、真っ先に思い浮かぶのが『アンナチュラル』(2018年/TBS系)だろう。不自然死究明研究所こと「UDIラボ」を舞台に、“不自然な死”の原因を解明する人々の苦悩と希望が描かれた珠玉のドラマだ。一方、『LOVED ONE』で描かれる法医学専門チーム「MEJ(メディカルイグザミナージャパン)」は、警察に対する調査指示や解剖の決定など、死因究明における捜査権限を有しており、また異なる法医学の世界が映し出されることになりそうだ。

 主演を務めるディーン・フジオカは、本作の台本を読んで「一人ひとりの日記を読むような、愛の記憶みたいなものを1枚1枚ページをめくっていくような、応援歌みたいな作品になればいい」とコメントしている。事件の謎を解き明かすミステリーの側面だけではなく、かつて誰かに“愛された存在(LOVED ONE)”であった人々の人生を紐解く、切なくも温かいヒューマンドラマになる予感が漂っている。

 ディーンが演じるのは、アメリカ帰りの天才法医学者・水沢真澄。「誰に対してもフラットに接し、物腰は柔らかいが、自身の信念は決して曲げない」という彼の性格は、ディーンのどんなことにも誠実に取り組む姿勢を評する言葉としても的確で、非常にしっくりくる。

■『ラストマイル』『ちょっとだけエスパー』などでの好演 ディーンの活躍はモデルや俳優業だけに留まらない。インドネシアで本格的に開始した音楽活動も継続的に行いながら、映画監督やプロデューサーも自らこなす多才ぶりは、とうとう日本最大級のサバイバルオーディション番組の第4弾『PRODUCE 101 JAPAN 新世界』で国民プロデューサー代表に就任するまでになった。海外キャリアでいっそう育まれたチャレンジ精神や、マルチリンガルを活かしたグローバルなコミュニケーション能力など、全世界からメンバーを募集する本番組のコンセプトには欠かせない役割を果たしている。

 また、NHK連続テレビ小説『あさが来た』(2015年度後期)で演じた五代友厚をはじめとして、聡明なキャラクターやミステリアスな雰囲気を醸し出す人物を演じることが多かった彼だが、近年は俳優としてもさらに幅広い役をこなしている印象だ。

 野木亜紀子が脚本を務めた映画『ラストマイル』(2024年)では、巨大物流倉庫のセンター長に任命されたエレナ(満島ひかり)の上司であり、世界規模のショッピングサイト「DAILY FAST」日本支社の統括本部長を務める五十嵐に扮した。冷静な佇まいを崩すことなく、エレナに対して淡々と指示を出す彼の機械的で極端なストイックさは、本作が警鐘を鳴らした物流業界の構造を象徴する存在として、多くの観客の記憶に刻まれたことだろう。

 ドラマ『対岸の家事~これが、私の生きる道!~』(2025年/TBS系)に出演した際は、慣れない育児に奮闘するエリート官僚の中谷を演じ、変わらない表情の中に不器用な一面を覗かせた。厚生労働省に勤める中谷は、2年間の育児休暇を取って、初めての子育てに挑む1歳半の娘の父親。完璧主義でプライドが高いがゆえに、最初は専業主婦の詩穂(多部未華子)や仕事と育児を両立できずに悩む礼子(江口のりこ)にキツくあたってしまうことも多かった。それでも、彼の行動にどこか微笑ましさを感じるのは、ディーンが中谷の生真面目な部分を憎めない愛らしさとして絶妙に表出させたからこそだろう。

 そして、ドラマ『ちょっとだけエスパー』(2025年/テレビ朝日系)では打って変わり、ちょっとおバカな言動で周囲を戸惑わせる“花咲か系エスパー”の桜介を演じ、さらなる新境地を拓いた。徹底した役作りで身体を絞り、日焼けをしたディーンの姿は、五十嵐や中谷を演じた俳優と同一人物とは到底思えない。劇中では天然なキャラクターで場を和ませながらも、徐々に深刻なトーンを帯びる物語とリンクするように、桜介の表情や瞳には影が差していく。ひとつの作品で多様な一面を表現できるのも、ディーンに製作陣が信頼を置く理由に違いない。

 彼がフジテレビ系の連続ドラマで主演を務めるのは、ドラマ『シャーロック』(2019年)以来、約6年半ぶりとなる。その間にも、多くの作品で異なる姿を披露してきたディーンが『LOVED ONE』ではどのような芝居を見せてくれるのか。本作で初共演となる瀧内公美とのコンビも見逃せないなか、主演として作品を牽引する彼の力強くも柔らかく変化する芝居を目に焼き付けたい。(文=ばやし)