1代限りで終了した7人乗りコンパクトミニバンとは?

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コンパクトカーから生まれた3列シートモデル

 現在ではミニバンといえば広い室内やスライドドアが当たり前になっていますが、かつては少し異なる発想で作られたモデルも存在していました。

 そうした中で、コンパクトな車体に3列シートを詰め込んだ個性的なクルマとして知られているのが「キューブ キュービック」です。

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 このモデルは、日産の人気コンパクトカー「キューブ」をベースに誕生しました。キューブ自体は1998年に初代が登場し、2002年には2代目へと進化、さらに2008年には3代目が発売されましたが、最終的には2019年に生産を終えています。

 その流れの中で、キュービックは2代目モデルをベースに派生した存在として、2003年9月に市場へ投入されました。

 最大の特徴は、もともとコンパクトなボディを延長することで3列シート化を実現した点にあります。

 全長は3900mm-3920mm×全幅1670mm×全高1645mm-1650mmというサイズに加え、ホイールベースも2600mmへと伸ばされ、限られたスペースの中で7人乗りを成立させていました。

 現在ではコンパクトなボディサイズに3列シートを備える車種として、トヨタ「シエンタ」(全長4260mm×全幅1695mm×全高1695-1715mm)やホンダ「フリード」(全長4310mm×全幅1695-1720mm×全高1755-1780mm)といったモデルが展開されています。

 しかし、それらよりもさらにコンパクトなサイズ感で3列シートを実現した車種は当時としては珍しく、日常使いと多人数乗車を両立させたいユーザーに向けた意欲的な試みだったといえます。

 外観はベースとなったキューブのデザインを踏襲しつつも、延長されたリア部分が特徴的で、見慣れたスタイルの中に独特の違和感と個性が同居していました。

 内装についても基本構成は同様ですが、シートは2列から3列へと増設され、使い勝手の面でも工夫が施されています。

 3列目はワンタッチで折りたたむことができ、2列目と合わせてフラットな空間を作ることも可能で、荷物の積載や簡易的な車中泊にも対応していました。

 一方で、動力性能についてはやや課題もありました。登場当初は1.4リッターの直列4気筒エンジンが搭載されていましたが、ベース車よりも約100kg重くなった車体には力不足と感じる場面もあったようです。

 そのため、2005年5月の改良では1.5リッターエンジンが追加され、トランスミッションも改良型のCVTが採用されました。

 さらに、前輪をエンジン、後輪をモーターで駆動するe-4WDも設定され、走行性能の底上げが図られています。

 しかしながら、このクルマは必ずしも万人に受け入れられたわけではありません。特に3列目シートはスペースが限られており、大人が長時間座るには窮屈でした。

 また、当時はスライドドアを採用したミニバンが主流になりつつあり、ヒンジドアである点も乗り降りのしやすさという面では不利とされていました。

 加えて、キュービックの発売から2ヵ月後にはダイハツ「タント」が登場し、軽ハイトワゴン市場が急速に拡大したことで、コンパクト3列シート車というカテゴリー自体の存在感が薄れていきました。

 こうした背景もあり、キュービックは1代限りでその役割を終えることになります。2008年11月に3代目キューブが登場したタイミングで販売終了となり、その後同じコンセプトを持つ後継モデルは現れていません。

 それでも、コンパクトカーでありながら7人乗りを実現したという点は非常にユニークで、自動車の多様な可能性を示した一例として記憶されています。

 現在では中古車として流通しており、価格帯は20万円台から60万円台と比較的手に取りやすい水準です。

 取り回しの良さと多人数乗車を両立したい人にとっては、今でも検討する価値のある一台といえるでしょう。