【独占写真あり】Vaundyが惹かれた英国の精神とは?テート美術館 YBA展 公式テーマソング「シンギュラリティ」を語る

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独占写真あり!YBA展を堪能する、Vaundy

2025年にロンドンのテート・モダン(Tate Modern)から歌唱パフォーマンスを届けた実績を持つVaundyが書き下ろした、『テート美術館 ― YBA & BEYOND 世界を変えた90s英国アート』公式テーマソングの「シンギュラリティ」。本稿では、同曲への想いとともに、彼の琴線に触れる英国の音楽やアートについて話を聞いた。

■Vaundy「シンギュラリティという言葉はすごく大きな意味を持っている」

2025年は一年を通じて精力的にツアーを行う傍ら、12ヵ月間毎月シングルを送り出すという驚異的な創造欲を見せつけたVaundy。2026年に入ってからも、キャリア初にして男性ソロアーティストとして史上最年少でのドームツアー『Vaundy DOME TOUR 2026 “SILENCE”』を全公演完売で成功させた彼が先頃、早くも真新しい曲を届けてくれたことは周知の通り。

現在東京の国立新美術館で開催中の『テート美術館―YBA&BEYOND 世界を変えた90s英国アート』(2026年5月11日まで/同年6月3日~9月6日には京都市京セラ美術館で開催)の公式テーマソング「シンギュラリティ」である。

主に数学や物理学の世界で使われる“singularity(シンギュラリティ)”は“特異点”を意味し、通常の基準やモデルが適用できないポイントを指す言葉だ。

「『シンギュラリティ』にはもともと原型があって、それも英国で作った曲でした。1~2年前に作って完成していなかったものを、せっかくだからこの機会に仕上げたら合うんじゃないかなと思ったんです。歌詞も、僕なりに芸術とか、もの作りとか、人に見せるとか、そういうことを人はどういう心境でやっているのかな? それって一種自分の中の特異点を探す作業だったりするのかな? とか、いろいろ考えて作りました」

つまり言い換えれば、ひとりの表現者としてのVaundyの日々の取り組みが、気持ちよく転調を繰り返すこのVaundy流ファンクチューンには凝縮されている。

「僕はいろんなものに合流地点があると思っていて、ものを作る側とそれを消費する側もそうだし、僕自身も“自分のもの作りってなんなんだろう?”とか、“自分が本当にやりたいことって何なんだろう?”といったことの合流地点を探していたりする。そして、アートというカルチャー全体がもうやり切り過ぎて特異点に達する──みたいなところもあるし。でもそれを突破しないと新しいものは出てこないよね…とか、シンギュラリティという言葉はすごく大きな意味を持っていて、今回にぴったりだなと感じたんですよね」

■ジャケットには『Eye of the Storm』を使用

そう、そもそもYBAとはYoung British Artistの略であり、ダミアン・ハーストやトレイシー・エミンを始めとする、90年代の英国で活躍した若手ビジュアル・アーティストたちの総称だ。

作品のスタイルも手法も大きく異なっていた彼らだが、それぞれに個性は強烈で、既存のルールに従わず、批評精神に富んだ独自の価値観に則って活動。自ら展覧会を企画するなど自己プロデュースに長けており、自身のパーソナリティを前面に押し出し、ある種スター性を醸すことで、同世代のブリットポップ系ミュージシャン共々、ブリティッシュ・カルチャーのアンバサダー役を担った。

まさに特異点を追求していたようなところがあり、Vaundyに重なる部分が少なくない。

他方でここ数年度々ロンドンを訪れていた彼は、YBAの作品を多数収蔵するテート美術館に足繁く通っていたという縁もあり、「シンギュラリティ」のジャケットには、『YBA&BEYOND』展に参加しているアーティストのひとりで、ダミアンらが学んだゴールドスミス・カレッジで教鞭をとり、この時代の作家を育てる立場にあったマイケル・クレイグ=マーティンの2002年の作品『Eye of the Storm』を使用している。

「マイケル・クレイグ=マーティンの作品は一回観たら絶対に思い出せるというか、目に入ったあとに“あの人だ”と言って作品が出てくる。どの作品を観ても“この人ってこうだよね”があるという時点で、僕はすごいと思っちゃうし、今回は僕が観たなかでいちばん好きだなと思った作品をジャケットに使わせていただきました」

■英国の音楽との接点が自然に確立されていったと語る、Vaundy

こうしたアートへの関心もさることながら、やはりVaundyと英国を結んでいるのは何よりもまず音楽だ。

洋楽を本格的に聞き始めたのは10代後半だったそうだが、それ以前から、例えば大好きな映画に使われていたデヴィッド・ボウイの曲などを通じて、自分の中に英国の音楽との接点が自然に確立されていたとか。

「大人になってからボウイって誰なのかちゃんと調べていたら、“あれ、彼の曲だったんだ!”みたいな。あとからあとからいろんなことを知って、蓋を開けてみたら僕は英国からいろんなものをもらっていたんですよ」と彼は笑う。

「そもそも日本の音楽は英国の音楽にめちゃくちゃ影響を受けていますよね。日本人特有のものも持っているんだけど、そこに明らかに英国の文化が入ってきているから、僕の場合もすべての曲にたぶんイギリスの音楽の影響が入っていると思います。最新アルバム『replica』(2023年)を発表した時期は、特にサウンドメイクとかも、向こうでやっているものとかを結構意識していました。イギリスの音楽ってこう、細かいことを考えすぎていないところがいいなと思っていて、僕も曲を作っている時とかミックスをしている時はそういう思想なんです。作った作品によりフォーカスが向いたほうがいいし、コード進行がいいとか、メロディがいいとか、商業的であるとか、そういうことも大事なんだけど、それは大前提として、“もっと生々しい部分を聞かせたいよね”というもうひとつの思想みたいなものを入れるべきだと思っていて。英国の音楽はそれを意識せずにやっているんですよね。僕もやっと、意識せずにナマ感を出すということを考えられるようになりました。それに日本と英国ではスタジオからして違って、日本は反響がほぼ無い美学と言うか基本的にはきれいに録っていく文化なんだけど、向こうではいい渋みや雑味があって、あれをやりたいなとずっと思っています」

スタジオと言えば、これまでにアビーロード・スタジオでテレビ番組『世界遺産』のテーマ曲「軌跡」のレコーディングを敢行したり、ライブ・フィルム『Vaundy LIVE in London』を旧王立海軍学校内の有名なホールで収録したり、『CDTVライブ!ライブ!』では前述したテート・モダンから生中継でパフォーマンスを日本に届けたり、ロンドンで音楽を作り、あるいはパフォームするという体験も重ねてきた彼。現地で得た学びとして、「気張り過ぎない」ことを挙げる。

「力を入れ過ぎずにもの作りをするということですね。英国に行くようになってから、本当に残っていくのは、気を抜いていてもカッコ良いものだよねって思うようになりました。あちらは移民が大勢いたりってこともあるし、文化がすごく織り交ざっている。そんななかでも、“英国って何ですか?”と訊かれた時、大事にしている部分は残っているんですよ。本当にいろんな人がいて、いろんな文化があるけど、全部にイギリスのふわっとした風味みたいなものがあって、それを残すには気を抜くことが大切。意識しないところにこそ、実は本当の味があったりするのかもしれないと思うようになりました。それは日本にいても一緒で、僕が持っているものも、気を抜くことで出てきた風味なのかもしれない──と。そういう風に考え方が変わったかもしれません」

INTERVIEW & TEXT BY 新谷洋子
PHOTO BY 日吉“JP”純平

■『テート美術館 ― YBA & BEYOND 世界を変えた90s英国アート』開催情報

【東京展】

会期:
2026年2月11日(水・祝)~2026年5月11日(月)

開館時間:
10:00~18:00
※会期中の毎週金・土曜日は20:00まで。
※入場は閉館の30分前まで。

休館日:
毎週火曜日
※2026年5月5日(火・祝)は開館。

会場:
国立新美術館 企画展示室2E
〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2

主催:
国立新美術館、テート美術館、ソニー・ミュージックエンタテインメント、朝日新聞社

協賛:
バーバリー

協力:
日本航空、ヤマト運輸

後援:
ブリティッシュ・カウンシル、J-WAVE

【京都展】

会期:
2026年6月3日(水)~2026年9月6日(日)

開館時間:
10:00~18:00

休館日:
月曜日
※月曜日が祝・休日の場合は開館。

会場:
京都市京セラ美術館
〒606-8344 京都府京都市左京区岡崎円勝寺町124

主催:
テート美術館、ソニー・ミュージックエンタテインメント、ABCテレビ、キョードーエンタテインメント、京都新聞、FM802/FM COCOLO、京都市

協賛:
バーバリー

協力:
日本航空、ヤマト運輸

後援:
ブリティッシュ・カウンシル