ハラスメントは「境界の混乱」で起きる? 職場の人間関係は「バウンダリー」の知識で変えられる【しんどい人間関係に境界線をつくる 心地いいバウンダリー】
職場での人間関係の悩みをバウンダリーの視点から見ると
ほとんどが赤の他人同士の職場で、「境界」が混乱したら大変なことです。パワハラやセクハラなどのハラスメントが起きかねません。でも実際に、職場における「境界の混乱」は数多く起きています。それはなぜでしょうか。
肩書き、ポジション、キャリアといった職場独特の要素は、しばしば不平等な関係性を生み出します。
上司や先輩に対して「相手は上の立場の人だから」と過剰に気を遣ったり、ハラスメントを盾にして上の立場の人を責め立てたり。あるいは部下や後輩に対して強く当たってしまったり、プライベートにふみこむ話を強要してしまったり。こうした関係性が「境界の混乱」を生み、バウンダリーが目指す、お互いを尊重するコミュニケーションや対話の機会を奪ってしまうことにもなるのです。
それは本当にあなたのせい?バウンダリーの視点で考えてみよう
たとえば、職場でいつも話が長い先輩がいたとします。先輩の話は仕事の指導もふくまれますが、会社の体制への愚痴やあなたのプライベートを掘り下げるような話も多く、毎回長時間付き合わなければならないあなたはつらいと感じていたとします。
それでも、「仕事ができないからいけないんだ」「指導係の先輩なんだから、話をちゃんと聞くのも仕事だ」と考えて、つらさを抱えながら職場へ通うかもしれません。
そこにバウンダリーの考えを取り入れてみると、「仕事の指導の話は聞く。愚痴やプライベートなどの不快な話は聞きたくない。そういう境界線をわたしは引きたい。でも先輩は境界線よりこちら側に侵入してくるから、わたしはつらいんだ」ということになります。
すると、あなたがつらいのは自分の仕事の出来不出来や気持ちが弱いからではなく、先輩が「境界線を踏み越えてくる」ことが原因だとわかります。あなたの責任ではなく、境界線をどう引き、それをどう伝えるかが課題だということになります。
バウンダリーを学び、スキルを身につけて繰り返される悩みから抜け出す
職場における人間関係の悩みを、バウンダリーの視点で考えることができないと、別の職場に移っても同じことが繰り返されてしまいます。新しい環境でリスタートをはかったのに何も変わらないと、さらに気持ちが落ちこんでしまうことでしょう。
そんなつらいループを繰り返さないためにも、この本でバウンダリーを勉強し、「境界線」の引き方を学んでほしいのです。
先ほどの先輩の例であれば、仕事に関係ない話が長くなってきたときに「それは私の仕事に関するご指導のお話でしょうか?」と返すことで、先輩は「境界線」を意識するようになるかもしれません。
自分から「こういう境界線の引き方をしてほしい」と提案するスキルを身につければ、それは「境界線」を引くためのとてもアクティブな手段といえます。
職場における「境界の混乱」
「責任の境界」が混乱していると……
キャパシティを超える仕事を押しつけられても、「断ればほかの人に迷惑がかかる」と引き受けてしまい、自分の心身をすり減らす。
「感情・意志の境界」が混乱していると……
会議で何かを決めるとき、声の大きい人や立場が上の人の意見に反論できない。自分の意見をいえない。
【出典】『しんどい人間関係に境界線をつくる 心地いいバウンダリー』著:長谷川俊雄/イラスト:高木ことみ
【著者紹介】
長谷川 俊雄
白梅学園大学名誉教授、社会福祉士、精神保健福祉士、NPO 法人つながる会代表理事、social work lab MIRAI 代表。
1981年から横浜市役所の社会福祉職として現場で活動したのち、精神科クリニックのソーシャルワーカーに転職。その後、愛知県立大学での教員経験を経て、2009年に「NPO 法人つながる会」を設立。2010年から白梅学園大学に移り、教育・実践・政策提言に携わる。2023年に「social work lab MIRAI」を開設し、援助職支援や家族支援にも取り組む。「バウンダリー」についてのワークショップを各地で行っている。
【イラストレーター紹介】
高木ことみ
ゆるくてかわいいイラストを制作するイラストレーター。とくに、難しい内容を図やイラストを用いてわかりやすく伝えることが得意。見ている人に親しみを感じてもらえるような表現を心がけている。おもな作品に『ゆるゆる稼げるWeb ライティングのお仕事はじめかたBOOK』(技術評論社/表紙・本文イラスト)、『今度こそ「不安ぐせ」をゆるめるポリヴェーガル理論』(日本文芸社/表紙・本文イラスト)など。
