同期3人。トート役の水夏希さんと、エリザベート役の大鳥れいさんと(写真提供:越乃さん 以下すべて)

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100年を超える歴史を持ちながら常に進化し続ける「タカラヅカ」。そのなかで各組の生徒たちをまとめ、引っ張っていく存在が「組長」。史上最年少で月組の組長を務めた越乃リュウさんが、宝塚時代の思い出や学び、日常を綴ります。第121回は「3度目の正直?救世主は、まさかの”ネックレス”」です。

【写真】救世主のネックレス

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前回「『エリザベート』を演じてきたトップ娘役たち。その姿は少し切なく、どこか誇らしく…」はこちら

頭を悩ませる「衣装問題」

名古屋・御園座にて『エリザベート TAKARAZUKA30周年 スペシャル・ガラ・コンサート』の幕が下りました。
私にとってこの時間は、人生のご褒美のように楽しく、幸せな時間でした。
再びこの作品に携わらせていただけたことに、心から感謝しています。

さて、この5年に一度のお祭りで、毎回頭を悩ませるのが「衣装問題」です。
コスチュームバージョンではない出演者の衣装は、すべて自前。
それぞれが役柄に合わせて用意します。
つまり、個性とセンスが問われる場でもあるのです。

そして私は、過去2回この衣装選びに見事に失敗しています。
(詳しくは、第110回「今まで出演した『エリザベート』を振り返って。シシィのパパ役として、黒い衣装を用意したけど…」の回をご覧ください)

指定は「黒」。

1度目は、何の装飾もない真っ黒で見事に埋もれ、
2度目は、反動でキラキラさせ過ぎて派手すぎ。
さて、3度目の正直となるのか…。

静かな品格を狙い…

「原点に戻ろう」
ガラコンサートとはいえ、私の役はエリザベートの父。
過度な華やかさは必要ありません。
2度目はなぜあんなにキラキラさせてしまったのか。
人は失敗を重ねて、ようやく気づくものです。

時代と役柄を大切に。
デザインはフロックコートにアスコットタイ。
静かな品格というやつを狙いました。

シンプル・イズ・ベスト。
今回はこれでいこうと決めました。

出来上がってきた衣装を見たとき、確信しました。
「よし、今回は間違いない!」
派手すぎず、地味すぎず。
さりげなくつけてもらった黒いストーンも、気持ち程度控えめに光を放っていました。

そしてお稽古の日…

そして、衣装をつけてのお稽古の日。
意気揚々と舞台稽古に臨んだ私の視界に飛び込んできたのは…。

色。
色。
そして、また色。

周りを見渡すと、皆様それはそれは素敵な”色”のお召し物を着ているではありませんか。

……え??
黒は?
黒ベースじゃないの?
どういうこと?

慌てて制作さんからのメールを見返しました。

……書いてない。
「黒ベースで」なんて、一言も。

思い込み…。
毎回黒だったから、今回もそうだろうと勝手に思い込んでいたのでした。
 


ゾフィー役の出雲綾さんと

全身黒ずくめの私

あぁ、やってしまった……。

ゴージャスなピンクのドレスに身を包んだマダム・ヴォルフと、これまた素敵な色のドレスを纏ったゾフィー様の横で、全身黒ずくめの私は、果てしなく落ち込んだのでした。
完全に埋もれるという、なかなかの惨状です。

案の定、
「越乃さん、ちょっと地味です」
と、即ご指摘が。

「ですよね……」
わかっています。
痛いほどに。

2度あることは3度ある。
そんな言葉が頭をよぎります。
久しぶりに本気で落ち込みました。
撃沈という言葉がぴったりの瞬間でした。
 


千秋楽後の楽屋にて

衣装問題を解決したアイテムは…

その後、
「これ、どうですか?」
アスコットタイを黒からグレーに。
そして、ネックレスを追加するという提案をいただきました。

このネックレスが、とんでもない仕事をしたのです。
ライトを浴びるとオーロラのような光を放つのです。

おおおおおぉ!
これぞ宝塚!!!

思わず声が出そうになるほどの変化でした。
アイテムひとつでこんなに印象が変わるとは。
この日私は、撃沈からハイジャンプくらいのテンションアップを果たしました。


毎回、見事にオチがつく私の衣装問題。
今回も学びました。

思い込みは、想像以上に怖い。
そして、ネックレスの威力は、想像以上にすごい。
ということを。

万が一、万が一、次があるとするならば、4度目の正直は絶対外しません。
たぶん…。

過去2回の衣装選びについて語った「第110回「今まで出演した『エリザベート』を振り返って。シシィのパパ役として、黒い衣装を用意したけど…」はこちら