――なるほど。

音無:そのうち「俺の大事な人が出演する実演販売があるので、お前も来てほしい」って言われて行ったら、会員の方が集められていたんです。偏見かもしれないけど、いかにもマルチをやっていそうな人が登壇して「今日は、市販の洗剤と我々が販売している洗剤の洗浄力を比べます」って実演販売をしたんです。

◆違和感だらけの実演販売の現場

――不謹慎かもしれないけど、かなり貴重な場所にいましたね。

音無:でも、私は小学生のときに習った「実験をするときは、条件を絶対に一緒にしないとならない」って言葉を覚えていたので、おかしいなって思ったんです。

――どう条件が違ったんですか?

音無:市販の洗剤は水を使わずに使用して、勧めている洗剤は水を使って溶かして使っていたんです。そんな条件で使えば、市販の洗剤が圧倒的に汚れを落とせないじゃないですか。それを堂々とやっているんですけど、会員の人達は「おお!」って驚くんですよ(笑)。

――怖いですね。

音無:それを見た私は疑問に思ったから「条件が一緒じゃないので、結果に差が出るのは当たり前じゃないですか」って言ったんです。

――勇気がありますね。

音無:そうしたら、会場全体が「シーン……」ってなっちゃったんです。そこで彼から外に連れ出されて「俺の大事な人に恥をかかせるんじゃねえ」って言われて、そこで別れました。だから、知識があれば騙されないけど、知らないと騙されちゃうんだなって思いました。

――別れて正解ですよ。空気清浄機や水の浄化装置は買いませんでしたか?

音無:彼の大事な人の家にも連れていかれたこともあり、プロジェクターがある販売専用の部屋があったんです。そこでパンフレットを出されたんですけど、段階があって、まずは金額的にも買いやすいものから買わせて、次に化粧品、次に家具やキッチン用品、最終的に空気清浄機やお風呂の浄化装置を売るんです。そのときに「これは某芸能人も使っていて、うちにも今2台置いてあるんです。これを使うと眠りも変わるし、体の内面や栄養も変わるので、最終的には買ってほしい」ってセールスするんです。でも、その装置は30万円もするので買えないですよね。

――具体的な話をするんですね。

音無:そこで、私は「何が違うんですか?」って聞くタイプなんですよ。そうしたら資料やデータを出してくるんです。それを聞くと会員しか買えないレア感もあって、ちょっと魅力的に思っちゃうんです。今思えば、騙されなくてよかったです。

――密室、特別感、レア感などマルチの常套手段が揃ってますね。出会いはマッチングアプリでしたが、最初どんな文言がマッチングアプリに書いてあるんですか?

音無:「肉体関係ではなくて、誠実な出会いを探しています」みたいな感じでした。会ってみたら、見た目も30歳に見えないぐらい若い感じで、清潔感もあったし、話しやすかったんです。でも、今思えばその話しやすさが、マルチで慣れていたんだなって思います。

――どういう見た目だったんですか?

音無:髪型のセット、肌の質感や香り、洋服のシワもちゃんと綺麗にしていて、しかも飲食店のキッチン担当なので、ご飯も作れるんです。完璧とまではいかないけれど魅力的な人だったんです。

――そういった雰囲気もマルチのためなんでしょうね。口説き方や振る舞いもスマートでしたか?

音無:聞き上手なんですよ。私の悩みも「大変だったね」「どうしたらいいか、一緒に考えてみよう」って、私との共同作業感を出すんです。

――共同作業は女性が弱いですからね。

音無:私はやっていないんですけど、もし私が知人を紹介していたら、最終的にはその人の収入になるじゃないですか。それをうまく「一緒にやろうよ!」って言いくるめてくるんです。あとプロテインやサプリメントの効果を、次に会ったときに「可愛くなったね」「肌がきれいだよ」って褒めてくるんです。