妻が別の男性とキスやハグ…それでも“不貞じゃない”? 東京地裁判決が波紋 慰謝料が認められなかった理由
あなたの妻や夫が、別の異性とキスをしたり、抱き合ったりしていたら──。多くの人がショックを受けるだろうし、「不倫ではないか」と感じる人もいるかもしれない。
ところが、こうした行為であっても「不貞行為にあたらない」と判断した裁判の判決が報じられて、SNSなどで議論を呼んでいる。
いったい、この判決をどのように理解すればよいのか。離婚・男女トラブルにくわしい玉真聡志弁護士に聞いた。
●キスやハグでも「不貞行為ではない」と判断
読売新聞オンラインは次のように報じている。
「妻は23年7〜8月、東京都内でバーを経営する男性と路上で手をつなぎながら歩いたり、公園のベンチで抱き合ったりキスしたりしたほか、バーの店内で計3回、男性と2人で1〜3時間程度を過ごした」(読売新聞オンライン・3月18日)
報道によると、夫は相手の男性に損害賠償を求めて提訴した。
しかし、東京地裁は、妻と男性について「親密な関係にあったことがうかがわれる」としながらも、キスや抱き合う行為、手をつなぐ行為などは「肉体関係に準じるとは言え」ないとして、不法行為を否定したという。
この判決について、SNSでは「(不貞行為に)当たるんじゃないんだ」「キスしたり抱き合ったりして類推可能なのに」といった声もあがっている。
また、3月に公開されて話題となっている口コミサイト「裁判官マップ」でも、今回の判決を下した裁判官について100件以上の投稿が寄せられている。
●そもそも「不貞行為」とは何か
──キスやハグをすることや、バーで2人きりで過ごすことは「不貞行為」にあたるのでしょうか。
不貞行為とは、配偶者が、夫または妻以外の相手と「肉体関係」を結ぶことを指します。
ただし、現時点では判決文を確認できていないため、報道からわかる範囲での説明になります。
今回のケースでは、妻が別の男性とキスをしたり、手をつないだり、深夜にバーで一緒に過ごしたりした事実までは証拠から認定されたものの、その男性と肉体関係に及んだとまでは認定できなかった可能性があります。
そのため、判決では妻の不貞行為は認められないと判断されたと考えられます。
●キスやハグだけで慰謝料請求はできるか
──キスやハグでも、夫は精神ショックを受けるのではないでしょうか。
一般的に、自分の配偶者が別の異性とキスしたり、手をつないだりしていたと知れば、精神的苦痛を感じる人は少なくないでしょう。
ただし、繰り返しになりますが、判決文を確認できていないので、裁判所が請求を棄却した具体的な理由までは断定できません。
推測になりますが、裁判所は、妻が相手男性とキスしたり手をつないだりした行為が不貞行為にあたらない以上、この事案では「妻による不貞行為は存在しない」と判断した可能性があります。
また、報道によると、こうした行為が長期間続いたものでもない点も考慮されたとみられます。
その結果、慰謝料請求の前提となる違法行為が存在せず、損害賠償請求そのものも成立しないと判断されたのではないでしょうか。
●「キスだけで慰謝料」相談は多いのか
──「肉体関係があったかはわからないが、配偶者がキスやハグをしていたので相手に慰謝料を請求したい」という相談は多いのでしょうか。
「配偶者が別の異性とキスをしたり親密な関係にあったので慰謝料を請求したい」という相談を受けた経験は、私のこれまでの実務ではありません。
ただし、仮にそのような相談を受けた場合には、まず不貞行為の有無を検討します。そのうえで、男女としての親密さの程度を慎重に吟味し、証拠を十分にそろえるようお願いすることになると思います。
【取材協力弁護士】
玉真 聡志(たまま・さとし)弁護士
千葉県弁護士会で法律事務所を主宰。2013年弁護士登録。会社と従業員の労働問題、企業間トラブル(代金未払いなど)、ご家族の間で起きる法律問題(離婚、相続)を専門とする。「法律問題の解決を通じて、相談者様の幸せを実現する。」をモットーに、日々の業務に励む。
事務所名:たま法律事務所
事務所URL:https://tama-lawoffice.com/

