(※写真はイメージです/PIXTA)

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非正規雇用で老後の生活に不安を覚える一代さん(仮名・55歳)。貯金1,500万円が底をつくことを恐れ、生活費を抑えるために500万円で地方の格安物件を購入し、単身移住を決断しました。しかし、車社会での不便な生活や、病気で寝込んだ際に誰も気づいてくれない孤独と恐怖を痛感することに。安易な決断を後悔し、わずか2年で都市部へ戻って生活することになった50代女性の事例を紹介します。

老後不安から「生活費の安さ」を求めて地方移住を決断

都内で派遣社員として長く働いてきた一代さん(仮名・55歳)。これまでにコツコツと貯めた預貯金は約1,500万円ありましたが、非正規雇用のため将来もらえる年金額は少なく、老後の生活に強い不安を抱いていました。

「都内の高い家賃を払い続けていたら、年金をもらう前に貯金が底をついてしまう」と焦った一代さんは、思い切って物価や住居費が安い地方へ移住することを決意します。

そして、ネットの不動産情報で見つけた地方の格安中古物件を500万円で一括購入。「これで一生、家賃の心配はしなくて済む」と安心したのも束の間、実際の生活は想像以上に過酷なものでした。

最寄りのスーパーまでは車で30分。ペーパードライバーだった一代さんは、移住に合わせて慌てて中古車を購入しましたが、慣れない長距離運転は恐怖の連続。気軽に立ち寄れるカフェや飲食店もなく、自炊と家を往復するだけの単調な日々が始まりました。

「都内なら、歩いて数分のコンビニで店員さんと一言交わすだけでも気分転換になっていました」と一代さんは振り返ります。

移住先では外に出ても誰ともすれ違わず、何日も一言も声を発しないことが当たり前になってしまったのです。

インフルエンザで寝込んだ日に痛感した「孤独」

とある冬の日、ひどいインフルエンザにかかって数日間寝込んでしまったことが、一代さんの地方移住への後悔を決定づける出来事となりました。

高熱で車の運転ができず、スーパーに食料を買いに行くこともできません。近くに頼れる友人もおらず、出前やネットスーパーの配送エリアからも外れていたのです。

「熱でフラフラになりながら寝床に向かったとき、もしこのまま私が倒れても、誰にも気づいてもらえないんだと思いました。節約のことばかり考えていましたが、ひとり身の私に本当に必要だったのは、いざというときに歩いて病院へ行ける環境だったんです」

この出来事で強烈な孤独と恐怖を味わった一代さんは、「お金が減る不安よりも、ここに残る恐怖のほうが大きい」と痛感しました。

結局、一代さんは地方への移住からわずか2年で家を売りに出し、生活に便利な都市部の中古マンションへ賃貸で移り住むことになりました。

地方移住相談数は増加も、離脱の最大の原因は「環境の変化」

ふるさと回帰・移住交流推進機構のデータによれば、2025年の「ふるさと回帰支援センター・東京」の窓口相談において、女性の相談者が拡大傾向にあることが報告されています。とくに20代など若い世代から、結婚前におひとり様で堅実な生活設計を立てるために移住相談に訪れるケースが増加しています。単身女性にとって、移住はライフプランの現実的な選択肢になりつつあることがうかがえます。

しかし、単身での移住には特有のリスクが伴います。イエコン(株式会社Clamppy)の調査データを見ると、地方移住をやめた人の約70%が「3年以内」に見切りをつけており、そのうちの29.8%が「1〜2年」で離脱しています。また、同調査では「地方生活をやめた理由」についても調べており、「生活環境の変化に対応できなかった(12.7%)」がもっとも多くの意見として挙げられていました。

一代さんのように、自分を助けてくれる家族が同居していない単身者の場合、移動手段が限られることや買い物が不便なことは、体調不良時にそのまま「命の危機」や「深刻な孤立」に直結します。安易に物件価格の安さに飛びつくのではなく、医療機関へのアクセスや日常の買い物のしやすさといった「生活を守るインフラ」を最優先に見極めることが、単身での地方移住の鉄則といえるでしょう。

[参考資料]

イエコン(株式会社Clamppy)「【地方移住】やめた人の7割が3年以内で離脱!地方移住成功の秘訣とは?(https://iekon.jp/column/survey/32857)」

ふるさと回帰・移住交流推進機構「2025年「ふるさと回帰支援センター・東京」の窓口相談者が選んだ移住希望地」