末盛千枝子84歳ひとり暮らし「岩手に移住して15年。フェイスブックに突然舞い込んでくるメッセージや思いがけない人からの友達申請に心を躍らせて」
彫刻家・舟越保武の長女、舟越桂、直木の姉として芸術一家に生まれた末盛千枝子さん。絵本編集者を経て、すえもりブックスを設立。たくさんの絵本や、上皇后美智子さまの本などを出版してきました。そして84歳の今、東京から移住した、岩手山を望む家にひとりで暮らしています。そんな末盛さんが歳を重ねてわかったこととは――?大切にしている時間や習慣などを綴った著書『今だからわかること 84歳になって』より、一部を抜粋して紹介します。
* * * * * * *
支えられて
この春も、東側の窓の下に、色とりどりの美しいチューリップが一斉に開きました。シルバー人材センターの人が、私から見えやすい場所にと、球根を植えてくれていたのです。
私の日々の生活は、多くの人のサポートによって支えられています。シルバーさんには、引っ越し当初からお世話になっていて、二人一組で1週間に1回1時間、掃除や庭の手入れに来てくれます。
天候や土のことなど、この土地ならではの術を身に付けていて、草花の植え替えなどでも、こんな風にやるんだって、驚くことがいっぱいです。
今は、1週間に3回、体のケアや生活回りの細々したことで、ケアマネジャーさんと3人のヘルパーさん、リハビリのお兄さん(と言っても、4人の子どものお父さん)の力を借りています。先日は、お風呂場にアリの大群が発生。居合わせたヘルパーさんが、すぐに退治グッズを買ってきて、撃退してくれました。

梅の収穫。シルバー人材センターの人たちと一緒にもいだ。(写真提供:『今だからわかること 84歳になって』/KADOKAWA)
楽しみなのは、週に2回のお風呂です。それは丁寧に面倒を見てくれて、本当に気持ちがいいのです。ありがたく思っています。戦争をしている土地の人たちのことを考えて、いつも申し訳ない思いです。
15年の間に、八幡平でも多くの人と知り合い、支え合う関係ができました。雪かきや草刈りをしてくれるお隣のトマト屋さん、折々に美しい花束を届けてくれるお花の先生、世間話に長けたタクシーの運転手さん、盛岡の友人。
私の書いたものを読んで、那須から近くに移住して来た不思議にありがたいご夫妻もいます。
「コブシ野荘」は、時々にぎやか。世の中はまだ広がっています。

『今だからわかること 84歳になって』(著:末盛千枝子/KADOKAWA)

(写真提供:『今だからわかること 84歳になって』/KADOKAWA)
高齢期のフェイスブック
「あなたは末盛憲彦さんの奥さんですか?」と、突然舞い込んでくるメッセージ。フェイスブックで、時々起こるサプライズです。「そうです、そうです」と返信をして、ああ、この方、昔の末盛の同期だった人だとわかった時の感激はたとえようもありません。
末盛は私より12歳年上だったから、彼はなんと96歳のおじいさんです。その年で、元気にフェイスブックをしているなんて、と驚くばかり。
他にも、尊敬していたドラマのディレクターや一緒に仕事をしたIBBYの理事、海外の編集者など、思いがけない人から友達申請が入ってきます。
それなりにみな年を取っていますから、ああ生きていたんだと安堵したり、懐かしさが込み上げてきたり。機械を通じてであろうと、人の息遣いは確かに伝わる。楽しい再会に心を躍らせています。

東の窓辺。庭で摘んだ花を生ける。(写真提供:『今だからわかること 84歳になって』/KADOKAWA)
4年前からフェイスブックを始めて、今では毎日の楽しみになりました。昔であれば、連絡を取るのは電話や手紙でしょうが、今は気軽にひと言、ふた言発信するだけで、反応があります。
話題は色々で、旧知の人とは、昔話から世の中の問題まで。映画を話題にすると面白くて、美形を誇ったあの役者が今ではしわしわのおじいちゃんになっちゃった、とか。
2023年に開催した「末盛千枝子と舟越家の人々」展の図録が出たことを載せたら、翌日には100以上の反応があって、嬉しすぎて、時代にはかなわないと思いました。
知らない方からのメッセージにもドキドキします。私の作った本に感想をくださる方もいて、気軽にコンタクトを取ってくださるのは、この時代ならではの本当にありがたいことです。
※本稿は、『今だからわかること 84歳になって』(末盛千枝子:著/KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
