「オーディション会場には可愛い子ばかりで、これは落ちたなと……。控え室で真横にいた(青木)宙帆ちゃんはサッカーボールを用意していたり、(塩釜)菜那ちゃんはクラリネットを抱えていたり、『それなのに私は何も持ってきてない!』って。でも、その時の全力を出すのは私の人生のモットー。最終審査で空手の型を披露したんですけど、空手をしているときは『私は無敵』と思えるぐらい人格が変わるんですよ(笑)」

◆いつの間にか影を潜めてしまった「自信」

僕青として活動を重ねるうちに、そんな度胸も自信もいつの間にか影を潜めた。団体行動を求められるアイドルグループにおいて、個性の出し方や自分の立ち位置など、「ステージで歌って踊る楽しさ」以外の壁に悩むことが増えていった。

「初期の頃は、ポジティブ思考で何も考えてなかったんです。好きなことにただ邁進しているという、純粋な気持ちで活動してたんですけど、セカンドシングル『卒業まで』以降の選抜発表で大きく変わったかもしれません。シングルごとにポジションが下がっていく現実に加えて、人と比べちゃう悪い癖が出てくるとネガティブな方向ばかりに考えてしまうんです」

◆初めて母ではなく、姉に電話した夜

 そんな彼女に両親がいつも寄り添った。父親は悩みにたいして論理的なアプローチで対策を考え、母親は「泣いてる時間がもったいない。落ち込んでる暇あったら、自分もっとできることあるで」と励ました。

 だが、7枚目シングルの選抜発表で自分のポジションを知った日。初めて母親ではなく、姉に電話した。そして、一度も口にしたことがなかったという「辞めて実家に帰りたい」と話して、息ができなくなるぐらい号泣した。

「僕青で3年間やってきましたけど、どうしていいかわからなくなって。お姉ちゃんはいつも私を肯定してくれるんですけど、そのときに泣きながら『莉杏、今の気持ちだけで動くのは絶対にちゃうで。頑張れるところまでやり切ってから言わんと』って。姉の言葉がなかったら、もう僕青には居なかったと思うので感謝しています」

◆「僕青1本でいこうと腹をくくりました」

雲組単独公演#25の東名阪ツアーを終えた今は「ライブが楽しい場所になった」と少しずつ前を向く。青空組に戻りたい気持ちもある。そのための足りないのは自信だと話す。

「今年3月で高校生活が終わるんですけど、ギリギリまで別の夢のために大学進学することも考えていたんです。でも、叶えたい夢もあるし、僕青1本でいこうと腹をくくりました。今は思いっきり殻を破るその一歩手前にいると思うので、今の感情を超雲にすべてぶつけたいです」

ネガティブだった過去の自分が追いつかないぐらいのスピードで走り抜けてもらいたい。

【秋田莉杏(あきた りあん)】
2007年、兵庫県生まれ。あだ名はりあん。2023年6月15日に結成したアイドルグループ「僕が見たかった青空」(通称「僕青」)のメンバー。5月26日より舞台「紅哭-KURENAI-」に霧音役で出演することが決定。7枚目シングル「あれはフェアリー」が発売中。3月29日(日)KANDA SQUARE HALL(東京)を皮切りに、6都市を回る「僕が見たかった青空 全国ツアー2026」や、6月20日(土)には河口湖ステラシアターにて「結成3周年記念 僕が観たかった『青空野外』ライブ2026」の開催も決定した。最新情報は公式HPをチェック

<取材・文/吉岡 俊 撮影/星 亘(扶桑社)>

―[あの日夢見た雲組]―