学習時間が同じでも、スマホを見る生徒は成績が低下する…4万人の調査で判明「受験生とスマホの最悪の関係」
※本稿は、高橋暁子『スマホで受験に失敗する子どもたち』(星海社新書)の一部を再編集したものです。

■スマホがやめられず受験に失敗してしまった
「スマホ依存が止められなかった。コントロールしたいと思うのにできず、勉強に集中できなかった。結局、志望大学には落ちてしまい、大学入学テスト利用で志望度が低い大学に入学する羽目になってしまった。あんなにお金を出して塾にも行かせてもらったのにこんなことになり、両親には本当に申し訳ないと思っている」
ある大学での講演で、講演の感想に長文を書いてくれた学生がいました。その学生は、前述のような内容の体験を書き記していました。「もっと早く講演を聴いて、コントロールできるようになっていればよかった」というのです。
そうです。この学生はスマートフォンのせいで受験勉強に集中できず志望大学に合格できなかったのです。もちろん、受験はベストを尽くしても必ず志望校に合格できるわけではありません。この学生もスマホがなくても志望校に合格できたかどうかはわかりません。
しかし、少なくとも全力を尽くしたという思いがあれば、こんな発言はしなくて済んだはずです。もし合格できなかったとしても、「ベストを尽くした」と思えるかどうかはとても重要です。少なくとも納得して受け入れることができていれば、入学して何ヶ月も経った後に、後悔を口にしたりはしないで済んだはずです。
■ネット依存に悩む学生が増えている
私は普段、大学で「SNSと情報リテラシー」の講義を受け持っています。講義の中で、学生自身に情報リテラシー分野から、個人や学校、行政なども含めた改善策や対策を提案してもらう課題を出します。
幅広いテーマの中から、多くの学生が自分の悩みや身近な問題を選ぶ中、格段に多いのが「ネット依存」です。これまで多くのレポートを見てきました。その中に頻出する文言をいくつかご紹介すると、
「受験時にはスマホ依存で苦しんだ」
「アプリを消したり利用時間制限機能を駆使したけれど、制限しきれなかった」
「〜という方法がいいと言われるけれど、自分には効果がなく制限できなかった」
「ついついスマホを使ってしまい、成績が伸び悩んだ」
「自分の弟/妹が、たった今スマホ依存に苦しんでいる」
「自分の弟/妹がネットを制限できずに親が困っている」
など。
ネット依存をテーマに選ぶ学生の多さ、エピソードの豊富さやリアルさを見るに、ネット依存が大学生にとって非常に身近なものであることがよく分かります。
■受験だけではなく「卒業」や「就活」にも影響
他にも、「受験時には制限していたけれど、大学生になって自由になってからは使いすぎてしまっている」という学生は少なくありません。こちらも、「受験生には無理でも大学生くらいの年齢なら既に乗り越えているはず」と思う方を失望させるかもしれませんね。
しかし大学生達にとっても、ネット依存は完全に乗り越えた問題などではなく、まだ目前にあるものなのです。今の大学は講義への出席は当たり前に求められることであり、試験やレポートなども多く課されます。スマホにハマりすぎて単位を落としたら、留年や卒業できないなどの事態も現実味を帯びてきます。
経済協力開発機構(以下:OECD)生徒の学習到達度調査、文部科学省・国立教育政策研究所の「PISA2022」(令和5年12月)の結果をご存じでしょうか。(※1)
これは、義務教育修了段階の15歳の生徒が持っている知識や技能を、実生活の様々な場面で直面する課題にどの程度活用できるかを測ることを目的とした調査です。実生活で直面する課題に必要な、読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの3分野において、2000年以降、おおむね3年ごとに調査実施しているものです。各回で3分野のうち1分野を順番に中心分野として重点的に調査しています。
■調査で分かった「スマホと成績の関係」
81か国・地域から約69万人が参加しており、日本からは全国の高等学校、中等教育学校後期課程、高等専門学校の1年生のうち、国際的な規定に基づき抽出された183校(学科)、約6000人が参加しています。
義務教育終了時点で日本の子ども達は、どのくらい生活に必要な学力を身に付けているのでしょうか?
結果は、数学的リテラシー(1位/5位)、読解力(2位/3位)、科学的リテラシー(1位/2位)と、3分野すべてにおいて世界トップレベルとなりました。なお、()内の上はOECD加盟国中、下は全参加国・地域中における日本の順位です。前回2018年調査から、OECDの平均得点は低下した一方、日本は3分野すべてにおいて前回調査より平均得点が上昇しており、素晴らしい学力と言えるでしょう。
気になる詳細なデータは元データで確認していただくとして、こちらで取り上げたいのはこの素晴らしい学力のことではありません。この中に、自国のICT(※Information and Communication Technology:情報通信技術)活用状況が紹介されています。
注目したいのは、「平日の余暇活動におけるICT利用」です。SNSやデジタルゲームに費やす時間が3時間以上の生徒の割合を見ると、日本はOECD平均より少なくなっています。そして、「日本もOECD平均も、SNSやデジタルゲームに費やす時間が一定時間を超えると、3分野の得点は低下する傾向がある」ことが分かっています。
■SNSやゲームの長時間利用は学力を下げる
図表1のグラフから分かる通り、3分野すべてで、ゲームもSNSも1日1時間未満の生徒の得点が一番高くなっています。

次いで「全くない」、「1日1〜3時間」が同程度。そして、「1日3〜5時間」「1日5〜7時間」「1日7時間より多い」と、利用時間が長くなるに従って、得点は下がっていったのです。SNSもゲームも、利用時間が一定以上になると、得点が下がってしまう、これは国に関係なく、世界共通で言える事実なのです。
少々古いですが、よく知られているデータも併せてご紹介しましょう。国立教育政策研究所の「平成26年度全国学力・学習状況調査の結果」(※2)では、小学生と中学生に対して、平日1日あたりの携帯電話・スマホで通話・メール・インターネットをする時間と、国語と算数・数学の平均正答率をクロス集計したものが掲載されています。
メールというのが時代を感じさせますが、ポイントは平均正答率の部分です。インターネットの利用時間が長くなればなるほど、どちらも平均正答率が下がっていたのです。因果関係が明らかにされた調査ではないものの、受験生も保護者も、思わずぞっとしてしまう結果には違いありません。
■同じ学習時間でも成績に違いが出てしまう
因果関係が明らかにされていないと先ほど述べましたが、全国の小学校6年生・中学校3年生を対象とした文部科学省・国立教育政策研究所の「令和6年度全国学力・学習状況調査の結果(概要)」(※3)では、因果関係にも少し言及されています。
調査によると、普段テレビゲームをする時間が1日当たり3時間以上であるグループは、全児童生徒の約30%います。そのグループは、1日当たり3時間未満のグループより勉強時間が短く、就寝時間にばらつきがあるという傾向が見られました。
また、小学校児童の約21%、中学校生徒の約32%が、普段1日当たり3時間以上SNSや動画視聴などをしていたのです。ゲームやSNS、動画視聴などを1日当たり3時間以上など長時間している場合は、必然的に学習時間が短くなり、生活リズムも崩れる傾向にあるのです。正答率が下がることには、このあたりが影響している可能性がありそうです。
同じ学習時間でも、成績の違いが出てしまうという恐ろしい話もあります。仙台市が実施した調査(※4)では、何と視聴時間が長くなると、学習時間が同じでも成績が低下すると報告されています。スマホ等の電子端末では、YouTubeなどの様々な動画サービスがいつでもどこでも視聴できます。ところが「ついつい動画を見てしまう」ことが増えると、成績に悪影響が出てくるというのです。
■動画を見ながら勉強する子どもは危険
図表2は、家庭で平日に動画を1時間以上見ている子どもと、1時間未満に抑えている子どもの勉強時間、睡眠時間と成績との関係を表したものです。偏差値50以上の層がいるところに注目してみてください。

左側の平日の動画視聴1時間以上に注目すると、偏差値50以上は、学習時間が長いところにしか見られません。勉強をすればするほど偏差値が上がるのは、ある意味当たり前です。ところが右側、平日の動画視聴1時間未満のところを見ると、偏差値50以上は学習時間が短いところにも多く現れ、全体として明らかに数も多くなっています。
何と、平日の動画視聴時間が1時間未満の子ども達は、学習時間が短い場合でも成績の伸びがよくなっています。一方、動画視聴1時間以上の子ども達は、たくさん勉強しても成績が平均付近に留まっているのです。
家庭学習中に動画を観ない子どもは、短時間の学習で成績が平均を超えます。一方で、家庭学習中に動画を観る習慣がある子ども達は、3時間以上学習しても成績が平均に届かないという結果となったのです。
動画のながら見は多いですが、学習中に見てしまうと集中力が下がります。勉強をしているつもりでも、机に向かっている時間が長いだけで、実際はほとんど頭に入っていないというわけです。学習時間の見た目の長さではなく、集中して学ぶかどうかが大切なのです。
■受験生がスマホに夢中になるメリットはない
ただ机に向かっているだけでも、やろうという気持ちがあるのですから、十分に偉いと思います。けれど、それが向かっているだけになってしまい、学力の向上につながらないのだとしたら、とても残念に思います。せっかくのやる気が報われていないということだからです。その上、好きなことができているわけでもないのですから。

身になる学習は、集中力がポイントです。動画やSNS、ゲームに気を散らさず、集中して一気に終わらせてしまいましょう。そして、終わらせてから自由に好きなことをする。そのようなメリハリこそが大切なのです。
こちらが注目すべき点は、仙台市内の全市立小学校118校、全市立中学校64校、市立中等教育学校1校の小学5年生から中学3年生までの4万人以上の児童生徒を対象とした大規模な調査ということです。調査対象人数の面から見ても、信頼性は高いでしょう。
いくつかの研究や調査の結果をご紹介してきましたが、このような調査は世界中に数多くあります。そしてそのほとんどが、ご紹介したような結果となっています。
一つ二つの調査を見るだけなら、「結果ありきで恣意的な調査研究をしたのでは」と思うこともできます。しかし、世界中でこのような調査があることを考えると、スマホ・ゲーム・SNSの長時間利用と成績には負の相関関係がある可能性が高いと考えざるを得ません。受験生があえて長時間利用をする理由は、何もないのです。
〈出典〉
(※1)文部科学省・国立教育政策研究所。“OECD生徒の学習到達度調査PISA2022のポイント”。2023-12-05.
https://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/pdf/2022/01_point_2.pdf# (参照 2025-03-19)
(※2)国立教育政策研究所。“平成26年度全国学力・学習状況調査の報告書・調査結果資料”。2014-08-25.
https://www.nier.go.jp/14chousakekkahoukoku/summaryb.pdf (参照 2025-03-19)
(※3)国立教育政策研究所。“令和6年度全国学力・学習状況調査報告書・調査結果資料”。2024-07-29.
https://www.nier.go.jp/24chousakekkahoukoku/index.html (参照 2025-03-19)
(※4)令和3年度「学習意欲」の科学的研究に関するプロジェクト。(小5〜中3)仙台市。
https://www.sendai-c.ed.jp/~oh-ichou/tayori/2022/img20220417_14310250.pdf (参照2025-03-19)
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高橋 暁子(たかはし・あきこ)
成蹊大学客員教授
ITジャーナリスト。書籍、雑誌、webメディアなどの記事の執筆、講演などを手掛ける。SNSや情報リテラシー、ICT教育などに詳しい。著書に『若者はLINEに「。」をつけない 大人のためのSNS講義』(講談社+α文庫)ほか多数。「あさイチ」「クローズアップ現代+」などテレビ出演多数。元小学校教員。
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(成蹊大学客員教授 高橋 暁子)
