《 隙間のニーズを掘り起こす! 》節約志向の中、通販で消費者と直結 湖池屋の『揚げたて直送便』戦略
コメを筆頭に物価高が続き、食費の節約志向が強まる。コストアップでスーパーなど大手小売業界は増収減益と厳しい状況が続く。そんな中、メーカーが直接消費者につながる通販の『直送便』は好調だ。しかも、小売店で販売される商品より数倍高い価格帯の商品が、ここでは売れ筋の商品となっている。メーカーにとっては価格競争から距離を置き、価値重視で勝負できる場となっているのだ。
菓子メーカー・湖池屋では、工場で揚げたてのポテトチップスを3日以内に自宅に届けるという『揚げたて直送便』が好調で、会員数は100万人を超える勢い。4月~7月の累計売上金額は前年比144%。「今後はこの商品を売上3倍に増やす目標が経営トップから示されている」(同社関係者)
また、食品・飲料・調味料等大手総合食品メーカーのカゴメでは2025年上期(1-6月)は減収減益も、通販事業の売上高は前年同期比6.1%増の60億5700万円と伸長。同社通販の『健康直送便』の主力商品となるのは野菜ジュース『つぶより野菜』。通常の商品とは違う味わいで、野菜の食感と旨味が存分に感じられる。同社関係者は「国産素材の魅力や、カゴメ独自の製法による美味しさに価値を感じていただき評価をいただいている」と話す。
両社ともこの高付加価値商品の直送便をスタートしたのは約10年前。なぜ今注目を浴びているのか。湖池屋EC事業部長の実川勝己氏は次のように語る。
「消費者の節約意識は19年比で4.3倍と高まっているが〝節約疲れ〟もあり、自分へのご褒美としてプチ贅沢需要が牽引している。1袋あたり数百円であれば払える金額。さらに、『揚げたて直送便』は1箱6袋売りで鮮度が価値のため、近所や友人におすそ分けやプチギフトにも適する。お店では売っていないので値段も相手にわからず希少性も高く、相手にも気負わずに喜んでもらえるギフトとして選んでいただいている」
スーパー等に並ぶ同社のポテトチップスの店頭価格は1袋120円程度に対し、この〝直送便〟の商品は送料(地域による)を含め約400円前後。ギフトの場合、商品に対して安すぎるものは選ばれず高すぎても手が届かない。しかもこれまで安く店頭で売られていたお菓子も最近原料費高騰で全般的に値上げし、通販のプレミアラインとの価格差が狭まっている。その中で、数百円で身近な人を喜ばせることができるという絶妙な価格設定がギフトニーズにはまった。
出来たて3日以内の出荷体制を取るため、工場は非常に緊張感を持った生産体制となる。夜中の12時から作り始め、できたらすぐに個人宛に配送するという、手間と労力は大きい。
「しかしわれわれが工場で試食していると、本当に出来立ては美味しい。その美味しさをお客様に届けたいということでサービスを始めた」と実川氏。
工場で揚げたてのものを3日以内に出荷するため鮮度が高い商品
今年からは季節限定品にも挑戦。春は「桜えび仕立て」、夏は「海苔と本わさび」味を販売した。いずれも桜エビと海苔は別添えトッピングで、食べる前に客自身が好きな量をポテトチップスにかける仕様。会員は40代~50代が多く、男女比は半々である。
販売期間は年に不定期であるが故に、次の発売を待ち望んでいる会員はメールマガジンやSNSなどで情報を自ら取りに行く。希少性が売りでもあるが、全体に占めるECの売上はまだ低い。更なる認知度向上、顧客への訴求が次の課題である。
お菓子と食事の領域に変化
間食は太る─。そういったこれまでの定説と反し、現在は1日の総カロリーを分散して少量ずつ摂取した方が血糖値は上がりづらく太りづらいという説もあり、若者たちの間で1日3食を例えば6食に分散して食べる人も増えている。コンビニおにぎりが1個約200円の時代にあって、食事代わりに食べる人も増加。そういう中で簡便さのあるお菓子が見直されている。
「以前はお菓子とごはんは明確に棲み分けがされていた。しかし、ポテトチップスはアメリカの食事としてのルーツもあり、おつまみなのか、食事なのか、お菓子なのか、最近その領域が混じってきている。その新しい食領域、新しい食文化を狙った商品をつくっていく」(同)
そうした需要をとらえ、同社はポテトチップス以外にもお菓子と食事の中間にあたるような商品にも挑戦している。
湖池屋が価格競争から脱し、高付加価値路線に舵を切っているのは、同社のアイデンティティでもある〝国産じゃがいも使用〟を死守するためでもある。1962年にポテトチップスを発売以来、原料は国産じゃがいもにこだわってきたからだ。
令和のコメ騒動でも明るみになったが、生産者の経営が持続可能でなければ後継者がいなくなり、生産量や自給率も落ちる。「国内のじゃがいも農家が、儲からないのでやめるということになってしまえば、われわれも立ち行かなくなる」(同)
こうした危機感から、北海道の今金町や、長崎、静岡など全国各地の農協、生産者とつながり、一緒に商品開発を行うことで国産じゃがいもの価値向上につながるブランディングを行っている。オンラインショップには消費者からの感想コメントが掲載され、生産者のやりがいにもつながっている。
オンラインショップを通じ、生産者、消費者とともに高付加価値商品の開発に取り組みを進める同社。売り手よし、買い手よし、社会よしの共存共栄を目指し試行錯誤は続く。
