北村匠海×藤堂日向が『あんぱん』で実現 『世界征服やめた』『東リベ』で築いた信頼関係
3月の終わりに放送がスタートした「朝ドラ」ことNHK連続テレビ小説『あんぱん』は、気がつけば早くも後半戦へと突入。作曲家・いせたくや(大森元貴)や漫画家の手嶌治虫(眞栄田郷敦)といった新キャラクターが続々と登場し、ヒロイン・のぶ(今田美桜)は漫画家としてまだ芽が出ない夫を支えることを決心、ここから一気にアツい展開が花開いていきそうである。そんな展開をさらにアツくさせるのが、六原永輔の登場。演じているのは藤堂日向だ。
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本作は、あの『アンパンマン』の生みの親となった夫婦をモデルに、のぶと、その夫である嵩(北村匠海)の激動の生涯を描いていくもの。時代を超えて日本中で愛され続ける作品とキャラクターがどのようにして誕生したのか、私たちはこの「朝ドラ」をとおして知りつつあるところだ。嵩が漫画家として身を立てることを決意し、のぶはそれを支えていこうと心に決めたのだから、『アンパンマン』の誕生ももう間もなくなのではないだろうか。
そんな本作で藤堂が演じる六原永輔は、気鋭の演出家であり、作詞家にして構成作家。そして、ひらめき型の天才で、変わり者なのだという。番組公式サイトの人物紹介欄には、“嵩・たくやと仕事で関わっていく。”と記されている。この第20週のタイトルは「見上げてごらん夜の星を」だが、同タイトルのミュージカル『見上げてごらん夜の星を』の舞台美術を嵩に依頼することになる。
六原永輔のモデルは永六輔で、大森が演じるいせたくやのモデルはいずみたく。このコンビがかつて実際に生み出したのがミュージカル『見上げてごらん夜の星を』であり、同タイトルのテーマ曲は数年後に坂本九が歌唱し、国民的歌謡曲となった。誰もが一度は耳にしたこと、いや、口ずさんだことがあるのではないか。つまり藤堂は、その後の日本の文化に大きな影響を与えた、言うなれば“ポップカルチャーの巨人”を体現しなければならないわけだ。
今回の出演に際して藤堂は「役者を志した時から、朝ドラに出ることが一つの大きな目標でした。朝ドラ初出演、心の底から感謝の気持ちでいっぱいです」とコメントしている。そう、彼はこれが初の「朝ドラ」である。2025年は『遺書、公開。』、『世界征服やめた』、『夢に生きる』と、出演した映画の公開が続いた藤堂だが、まだそこまで馴染みのない視聴者も少なくないのではないだろうか。しかし、いま知っておくべき俳優なのは間違いない。
現時点における彼の代表作のひとつとなった『世界征服やめた』の企画・監督・脚本を手がけたのは、北村匠海である。“藤堂日向=六原永輔”の登場が今後の『あんぱん』を“さらにアツくさせる”と冒頭で記したのは、これが理由だ。
初監督作品を企画から立ち上げた北村にとって、その看板を背負ってもらう俳優というのは特別だ。よほどの信頼関係とリスペクトがなければ任せられるものではなかったはず。しかも同作は、北村自身の人生観に大きく影響を及ぼした不可思議/wonderboyの代表曲「世界征服やめた」からインスパイアされて生まれたものだ。特別な作品なのだ。
映画の公開前に彼らへのインタビューを私は担当したのだが、互いにリスペクトし合う特別な関係がそこにはたしかにあった。それに鑑賞した方ならば分かると思うのだが、相当な信頼関係がなければ成立しない映画になっている。ままならない現状や漠然とした将来に不安を覚える若者世代の心の叫びを藤堂は体現してみせ、それを北村はカメラに収めた。このクリエイションを経た彼らは、盟友なのだろう。
藤堂は北村が主演を務める『東京リベンジャーズ』シリーズ(2021年~)で、主人公・タケミチと仲良しの同級生役も演じていた。軽やかな芝居を得意とする印象が彼にはあるが、初の「朝ドラ」では“ポップカルチャーの巨人”の役にどのようなアプローチで挑むのだろうか。彼の登場が、ますます『あんぱん』を面白くさせる。アツくさせる。
参照※ https://www.nhk.jp/p/anpan/ts/M9R26K3JZ3/blog/bl/plEA1a8GGl/bp/p4JqB85nLD/(文=折田侑駿)
