喫茶店のモーニングの楽しみといえばやっぱりトースト。それも厚切りならなお幸せ。厚切りトーストに大口開けてかぶりついて、活力ある一日の始まりはいかがですか?

ペリカン製の立方体にかぶりつく贅沢!『オンリー』@南千住

レトロ柄の壁紙に今だ現役の年代物のレジスター。隣の席の常連マダムは町内会の話題に花を咲かせていた。下町&昭和の正しき喫茶店の姿が確かにここに残っている。

「昔から同じことをやっているだけだよ」とマスター。

それはサイフォンで淹れるコーヒーと共にこの分厚いトーストもおんなじで、ずっと贔屓にするのが老舗ベーカリー「ペリカン」の食パン。

厚焼トースト530円、ホットコーヒー450円

『オンリー』(右)厚焼トースト 530円 (左)ホットコーヒー 450円 切れ込みにバターが染みて生地からじゅわっとにじむ

毎朝店に届くそれを、ほぼ立方体に切り出して全面をまんべんなく焼いていく。かぶりつけば外側はカリッと香ばしく内側は密度のあるもっちり感。ただでさえ入手困難なこのパンをこんな贅沢に味わえるとは!イチゴジャムを塗って、はたまたサービスのミニサラダを乗っけてガブッといこう。

『オンリー』

[住所]東京都荒川区南千住5-21-8
[電話]03-3807-5955
[営業時間]9時〜18時(17時半LO)
[休日]日
[交通]JR常磐線ほか南千住駅西口から徒歩4分

シンプル&実直な旨さが光る理想のモーニング『珈琲の店デン』@鶯谷

皿にデンと乗った理想の厚切りに思わず頬が緩んだ。手切りゆえの大らかな誤差はありつつも、この日の計測では高さ7センチ(!)。

モーニングセット500円

『珈琲の店デン』モーニングセット 500円 イチゴジャムが添えられるのもどこか懐かしい風情。玉子も実直な固茹でだ

家庭用のトースターでは到底太刀打ちできないこの厚みを焼くのがガス式のオーブンで、高温&短時間が外側はカリリと、中はもっちり仕上がるコツだそう。

鼻先に漂う香ばしさにたまらず齧りつけば、表面にたっぷり塗られたマーガリンがジワリとにじんで、ほのかな塩気がパンの素朴な甘みを引き立てている。

ちなみにモーニングと謳いつつも12時まで注文可な上にドリンクと茹で玉子付きでワンコイン。早めのランチにも使える懐の深さもうれしくなる。ちなみにこのパン、ほぼ1斤を器にした「グラパン」も名物だ。

『珈琲の店デン』

[住所]東京都台東区根岸3-3-18メゾン根岸1階
[電話]03-3875-3009
[営業時間]9時〜18時(17時LO)
[休日]木
[交通]JR山手線ほか鶯谷駅南口から徒歩5分

朝の時間を彩る上質なコーヒーとトースト『カフェラパン』@御徒町

扉を開けば、たちまちコーヒーの芳香に包まれた。毎日自家焙煎する豆を粗挽きしてハンドドリップで淹れるそれに挑めば、大人の苦味と深みのあるコクがやってきて、爽やかな酸味が余韻になって続いていく。

温度でゆるやかに変わる表情を楽しんでいると、程なくやってきたのがモーニング限定のエッグサラダをたっぷり乗せたトーストだ。

モーニング・セット(タマゴトースト+コーヒー)800円

『カフェラパン』モーニング・セット(タマゴトースト+コーヒー) 800円 注文は11時まで可能。モーニングは他にシンプルなトーストやチーズトーストのセットも

木ベラで丹念に潰した黄身と白身の一体感がありつつもマヨネーズは控えめで、玉子をそのまま食べているかのような感覚。気泡を多く含んだ生地は焼けばサクッと軽やかな食べ心地で、素朴な味わいだからこそ具材の味が立っている。

上質なコーヒーとトーストが紡ぐ優雅な時間。たまにはこんな朝が必要だ。

『カフェラパン』店主 高野勝茂さん

店主:高野勝茂さん「自家焙煎のコーヒー豆も販売しています」

『カフェラパン』

[住所]東京都台東区上野3-15-7
[電話]03-3832-7605
[営業時間]7時〜17時
[休日]日・祝
[交通]JR山手線ほか御徒町駅南口から徒歩3分

第2世代が受け継いだ名喫茶のモーニング『茶房武蔵野文庫』@吉祥寺

食いしん坊ならこの店名にピンと来るかも。

そう、カレーライスが名物の喫茶店だ。サラサラのソースはほろ苦い深みからキレのあるスパイス感が膨んで、粒立ちよく炊いたご飯を進ませる。そんな絶対エースの影に隠れちゃいるけどモーニング限定10食のホットサンドも忘れちゃいけない存在なのだ。

ホットサンド350円、ブレンドコーヒー650円

『茶房武蔵野文庫』(右)ホットサンド 350円 (左)ブレンドコーヒー 650円 さっくりと軽やかで朝にちょうどいい食べ心地。ドリンクの注文必須

表面を香ばしく仕上げたトーストに具材をつめたポケットサンドで、玉子とツナの2種が付く。

前者はマヨ控えめで芯のある塩分がパンの甘みを引き立てているし、後者はカレー風味を効かせたわんぱくな味わいだ。これを作った初代のマスターは昨年勇退したが、現店主の齋藤園佳さんはじめ店を引き継いだ第2世代がこれから先もずっと味を守っていく。

『茶房武蔵野文庫』店主 齋藤園佳さん

店主:齋藤園佳さん「食器は伝統工芸品。温もりある風合いを楽しんで」

『茶房武蔵野文庫』

[住所]東京都武蔵野市吉祥寺本町2-13-4
[電話]0422-22-9107
[営業時間]10時〜21時(20時半LO)
[休日]月(祝は営業、翌火休)
[交通]JR中央線ほか吉祥寺駅北口から徒歩6分

贅沢な素材に丁寧な調理が生み出す幸せの時間『それいゆ』@西荻窪

ひと口目は驚くほどサクっと軽く、噛みしめると上質なバターが小麦の甘みと共にじわ〜。圧倒的なぶ厚さからは想像もできない繊細かつ計算された味わいに、この厚切りトーストは只者じゃないと確信した。

ふんわり厚焼きトーストセット850円

『それいゆ』ふんわり厚焼きトーストセット 850円 サラダ、ゆで卵にコーヒーが付くモーニングは10時から11時半までの限定

聞けば「フライパンを使ってバターを絡めながら焼くことで、ぶ厚いカットでも表面を焦がさず中までふんわり仕上がるんです」と店主。

さらに注文を受けてから一枚ずつじっくりと火入れすることもおいしさの秘訣なんだとか。パンは専門店から卸していることに加え、バターにはあのカルピスバターを惜しげもなく使用。開店してすぐにお客さんで埋まった店内が、トーストへのこだわりを証明する何よりの証拠だという気がした。

『それいゆ』

[住所]東京都杉並区西荻南3‐15-8
[電話]03‐3332‐3005
[営業時間]10時〜20時
[休日]無休
[交通]JR中央線西荻窪駅南口から徒歩3分

やはりモーニングは、働く漢の活力源だった!

産業革命で働く労働者のために朝食が発展した英国と、戦後復興で立ち上がる人々のためにモーニング文化が生まれた日本。時代や国は違っても食べ手を想う心は同じ。そんなふたつの国のモーニングを食べ比べてみました!

このボリューム感こそ本場英国流!『CHRISTIE(クリスティー)』@原宿

若者でにぎわう原宿の竹下通りから一歩裏道へ。人通りが減り、ちょっとした静寂が訪れる隠れ家のような地に店を構えて45年。紅茶専門の喫茶店で楽しめるのが英国式の朝食だ。

フルイングリッシュブレックファースト(ドリンク付き)960円

『CHRISTIE(クリスティー)』フル イングリッシュブレックファースト(ドリンク付き) 960円 具は加熱され、一体感があって楽しい。中央のベイクドビーンズはパンを付けても◎

40周年を機に店主の娘さんの考案で始めた人気メニューで、炙りベーコンや生ソーセージ、スクランブルエッグなどが盛られたボリュームたっぷりのそれは、具材一つひとつが丁寧に調理され、どれもが主役級の逸品。

今ではモーニングとしてだけではなく、午後からお酒のお供に楽しむ方も多いのだとか。作家モームは「英国では朝食を1日に3回摂ればいい」と半分皮肉で言ったが、こんな朝食なら大歓迎だ。

『CHRISTIE(クリスティー)』店主 宮本眞太郎さん

店主:宮本眞太郎さん「暖かい日には外のパティオ席も気持ちが良いですよ!」

『CHRISTIE(クリスティー)』

[住所]東京都渋谷区神宮前1-16-1
[電話]03‐3478‐6075
[営業時間]10時半〜20時
[休日]無休
[交通]JR山手線原宿駅竹下口から徒歩1分

喫茶店モーニング発祥のお店に行ってみた!『ルーエぶらじる』@広島

モーニング発祥の店、諸説ありますがその内のひとつ、広島県の『ルーエぶらじる』さんに伺って来ました。店に入ると、戦後すぐに撮影された「モーニングサービス」の文字が映る写真が。聞けばこの「写真」として記録が残っているのが発祥といわれる所以なんだそう。

Bモーニング700円

『ルーエぶらじる』人気の「Bモーニング」(700円)はサラダ、トースト、ベーコンエッグにぶどうジュースとコーヒーのセット

さっそくモーニングをいただくと、丁寧に作られた王道の味にニンマリ。この味と心遣いが戦後復興を支えた人たちの活力となったのだと改めて実感した。

『ルーエぶらじる』創業74年

[住所]広島県広島市中区大手町5-6-11

撮影/谷内啓樹(オンリー)、浅沼ノア(デン、ラパン、CHRISTIE)、西崎進也(武蔵野文庫、それいゆ)、取材/菜々山いく子(オンリー、デン、ラパン、武蔵野文庫)、編集部(それいゆ、CHRISTIE)

2025年3月号

■おとなの週末2025年5月号は「谷根千さんぽ」

2025年5月号
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