満島ひかり×岡田将生『ラストマイル』対談 14年ぶりの共演や撮影秘話を語り合う
野木亜紀子が脚本を手がけ、塚原あゆ子が監督を務めた『ラストマイル』は、『アンナチュラル』(TBS系)と『MIU404』(TBS系)の世界と繋がるシェアード・ユニバース・ムービーだ。流通業界最大のイベントのひとつ、「ブラックフライデー」の前夜、世界規模のショッピングサイトの関東センターから配送された段ボール箱が爆発する事件が発生。やがてそれは日本中を恐怖に陥れる連続爆破事件へと発展していく。
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事件の舞台となる世界規模のショッピングサイトの関東センター長・舟渡エレナ役で主演を務めた満島ひかりと、入社2年目のチームマネージャー・梨本孔を演じた岡田将生は、『悪人』(2010年)以来の共演となった。そんな2人に、14年ぶりの共演や撮影秘話を語ってもらった。
ーー『悪人』(2010年)以来、14年ぶりの共演になりますね。
満島ひかり(以下、満島):(『悪人』では)車の中で「臭い!」って言われながら蹴られちゃって……(笑)。
岡田将生(以下、岡田):「ニンニク臭い!」って言ってましたね(笑)。
ーー『悪人』では関係のゆがんだ男女の役でしたが、今回の『ラストマイル』では事件解決に奔走するショッピングセンターのセンター長とチームマネージャーという間柄を演じられています。久しぶりの共演はいかがでしたか?
岡田:満島さんの中の大事な部分は何ひとつ変わってないと思いました。現場でも、改めて凄いなと思いながらその姿を拝見していました。
満島:『悪人』の車中での撮影で、監督の演出に応えられずに岡田さんの隣ですごく泣いてしまったことがありました。そのときに「僕はどうすればいいですか……?」って岡田さんを困らせちゃった記憶があって(笑)。
岡田:いやいやいや(笑)。
満島:自然体で隣に居てくれることに安心して、混乱や悩んだ姿も出してしまうんです。いつかまた共演できるときがきたら、頼もしいと思ってもらえるようになりたい。
岡田:そんなことないですよ! 今回もめちゃくちゃ頼もしかったです。でも、その悩まれている姿もすごく素敵で。悩まないことなんてないというか、むしろ悩んでない人の方が逆に怖いじゃないですか。僕も同じように常に悩みながらやっているので、“仲間”という感覚がすごくありました。
ーー『アンナチュラル』と『MIU404』と繋がるシェアード・ユニバース・ムービーという点でも、普通の映画とは違う難しさがあったことが想像できます。
満島:脚本をいただいて撮影が終わるまでは、ひとつの物語と思っていたので、あまり意識をしていなくて。完成作を観てはじめて「すごいことになっている」と緊張したのを覚えています。これまでも二重、三重に複雑さをもつ役柄は経験してきましたが、野木さんの脚本から受け取る舟渡エレナという役は八重くらい人物像にレイヤーがあって。どうしようと考えて……撮影が終わるまで、その後のスケジュールを真っ白にすることにしたんです。ギリギリの危機感を自分に保つために。
岡田:エレナも同じような状況ですよね。
満島:クランクアップの日にじわじわ涙が出てきちゃって……「明日から予定も仕事もない!」って(笑)。
岡田:違う悲しみが(笑)。
満島:でも岡田さんと塚原(あゆ子)監督と共に、先の見えない物語を進んでいくのは楽しい時間でした。
ーーそもそも満島さんはこの作品に出演すること自体、すんなり決めたわけではなかったと伺いました。
満島:何層にも読めるストーリーの中に、私のような性質の俳優が入っていくと、作品を観るお客さんが大混乱になってわからなくなってしまうんじゃないかと思ったんですよね。とっても嬉しいけど、この世界線の邪魔はしたくないし、何をイメージして私なのかがわからなくて。野木(亜紀子)さんに「え? エレナは満島さんへの当て書きですよ」と言われたのは面白かった(笑)。当て書きの真意が、最近ようやくわかってきたところです。
ーーめちゃくちゃハマっていたと思います。
満島:ひとりの人物に多面性の見える、面白いエレナさんになっていましたね。あと、これは後付けですけど、岡田さんも酒向(芳)さんも大倉(孝二)さんも、みんな背が大きいんですよ(笑)。周りのみなさんの身長が高くて。一番小さなエレナが威勢よくしているの、面白かったですね。
ーー一方の孔は、岡田さんが演じているだけに、絶対に何か裏があると思って観ていました。
岡田:最近そう見られがちで……。
満島:いや、昔からそうだよ!(笑)
岡田:ははは(笑)。でも孔は、自分の中では意外と無味無臭というか、熱を帯びているタイプではあるけれど、自らスイッチを切っている印象があって。そんな彼がエレナと出会って、ある出来事に直面することで、少しずつ熱を取り戻していくイメージでした。それが少しでもスクリーンに映ればいいなと。でも、とにかく孔は演じるのが難しかったです。1日に撮る量も多かったですし、スピードも速かったので。その分、みんなで時系列を整理したり団結しながらできたと思うので、それはすごくよかったですね。
ーー『アンナチュラル』と『MIU404』のキャストのみなさんとは同じシーンがなかったですよね?
岡田:そうなんですよ。実は会ってもいなくて(笑)。
満島:え、誰とも会ってない?
岡田:僕は誰とも会ってないです。
満島:あ、松重豊さんと竜星涼くんは同じ支度部屋にはいたよね。私たちのロケセットの隣に『アンナチュラル』のUDIラボのセットがあったり、「『MIU404』チームの撮影をしてきたよ」ってスタッフさんから聞いてわくわくしたり。
ーー「シェアード・ユニバース」ということで、またどこかでエレナや孔に会える可能性もゼロではないんでしょうか……?
満島:どうなんですかね(笑)。ドラマで孔の話を広げるとかいいんじゃない?
岡田:いや、孔は広げてもつまらないよ(笑)。
満島:あとは……毛利(大倉考二)と東海林(市川実日子)のラブストーリーとか?
岡田:ははは!
ーー最後に、お二人がこの『ラストマイル』に参加して思ったこと、考えたことがあれば教えてください。
岡田:『アンナチュラル』も『MIU404』もそうでしたが、野木さんが書く物語は“エンタメ”ではあるんですけど、いま日本で起きている社会問題も含めて、何か僕たちに問いかけてくれるものが潜在的にあるんですよね。『ラストマイル』では物流がテーマになっていて、「こうしないといけない」という提示ではなく、僕たちが自ら考えないといけないと思わせてくれる。作品をご覧いただいたらそれぞれ受け取るものが必ずあると思うので、この作品が少しでもそういうことを考えるきっかけになったらいいなと思います。
満島:1人が自分自身の全てをかけても、悲しいことに世界は変わらなくて。「それでも」とあきらめない私たちは同じものを見ていても、それぞれ違う捉え方をして、1人は右を見て、また1人は左を見て、それぞれ別の感情を持ってしまう。その感情って、育ってきた環境だったり、出会ってきた人たちによって作られている部分も大きいと思うんです。自分だけで作り出したものはゼロに等しい。撮影中は、ずっとそういうことを考えていました。でも、確実に人の暖かさがあって、毎日朝起きて「今日も生きてる」と思えることが幸せだということを感じられる作品でもあると思います。だからどう考えても、孔という役は岡田さんにピッタリでした。
岡田:えぇ!? その流れで急に?
満島:だってね。岡田さんって、ちょっと変じゃないですか(笑)。
岡田:いや、変じゃないですよ! 満島さんが変なんですよ(笑)。
満島:ごめんごめん(笑)。でもそういうことで、本人が思っている自分のことと、他の人から見たその人のことは違うんですよね。そこも孔と繋がるというか。“感情のラストマイル”を受け取る孔という役が、凄まじく可能性の見える岡田さんで本当に良かったなと思っています。
(取材・文=宮川翔)

