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高剛性・軽量であることが生む恩恵

高速道路だけでなく、郊外の一般道でもメルセデスAMG SL 55の有能ぶりは発揮される。深いワダチのあるような古いアスファルトをダンパーが巧みに処理し、落ち着きを失わない。

【画像】ポルシェ911 カレラGTSとメルセデスAMG SL 55 先代と最新のSL 63、GT3も 全101枚

四輪駆動システムによる確実なトラクションで、2速でも4.0L V8エンジンのパワーは路面へ漏れなく伝えられる。左右のロールだけでなく、前後のピッチも含めて、姿勢制御は秀抜。素晴らしい素地として、シャシーは磨かれている。


レッドのポルシェ911 カレラGTS カブリオレとシルバーのメルセデスAMG SL 55 4マティック+ プレミアム・プラス

エンジンは、コンフォートからモードをステップアップさせると、エネルギッシュさが見違える。SL 55にはAMG GTほどの獰猛さは宿らないが、7000rpmまで回る特性とシャープなレスポンスで、軽くない車重を軽々と運ぶ。

若干パワフルで200kg以上軽いとはいえ、後輪駆動のポルシェ911 カレラGTS カブリオレが追従できるのか、一瞬疑問を感じるほど。事実、四輪駆動のSLとは異なり、湿り気味の路面ではドライバーが自信を得るまでに時間を要した。

911 GTSのステアリングホイールは軽く、フロントノーズは外側へ流れようとする。エンジンの重みで抑えつけられているような、SL 55とは違う。

ところが、高剛性で軽量なことは、フロントのドライブシャフトを持たない以上の恩恵がある。運転姿勢は理想的。ドライバーの真正面に配置されたタコメーターが、気持ちを掴む。精鋭のサラブレッドのようなオーラが漂う。

素直に運転する興奮が湧き出てくる

SL 55の方が、不安感なく攻め立てた走りを受け入れてくれることは事実。911 GTSで意欲的にコーナーへ飛び込み、アクセルペダルを傾けていくと、電子アシストが介入する直前にオーバーステアの徴候を示す。エッジは鋭い。

もっとも、この操縦特性はポルシェのリアエンジン・クーペで共通するもの。911 ターボ由来の硬めのサスペンションを備えるGTSは、寒くて湿った路面との相性が少し悪いだけだ。1度感覚を掴めば、すべてを引き出せるようになる。


ポルシェ911 カレラGTS カブリオレ(英国仕様)

SL 55の方がステアリングホイールは重いものの、電動パワーステアリングは911 GTS以上に情報をフィルタリングしていることが見えてくる。2台とも油圧システム並みのコミュニケーション能力は得ていないが、911 GTSの方がより理解しやすい。

踏みごたえの確かなブレーキペダルとともに、グリップ力を保ったまま、カーブへ正確にフロントノーズを導いていける。もちろん、SL 55も妥当なレシオが与えられ正確で操りやすいが、体験としての充足感では及ばない。

路面をひたひたと掴み続ける落ち着きやグリップ力が伴わないとはいえ、911と親しくなるほど、本来の敏捷性も楽しめるようになる。ハイスピードなS字カーブでも、スルスルと自在に縫っていける。

操縦性やシャシー・マナーから感じられる精彩は、911 GTSの方が遥かに上。より鮮明で、素直に運転する興奮が湧き出てくる。クルマから降りても、しばらく冷めないほど。

切れ味が悪く少し単調に思える4.0L V8

対するSL 55は、スポーツカーと呼ぶには少々大柄だろう。ラインを確実に辿れるものの、自在に姿勢を調整していける身軽さはない。コーナーでは、強力なブレーキへ頼りがちになる。

メルセデス・ベンツのSLは、以前からドライバーが求めれば容易に展開できる、オーバーステアが大きな武器だった。ところが、最新のSL 55では少々様子が異なっている。


ポルシェ911 カレラGTS カブリオレ(英国仕様)

アクセルペダルの加減でコーナリングラインを絞っていくことは可能だが、従来ほど自然な印象ではない。アクセルオフでノーズが内側に食い込んでいくこともない。どちらかといえば、必至に安定させようとしている印象がある。

疑いなく、超高速なグランドツアラーではある。だが、モータースポーツ直系のAMGらしさとはいえないかもしれない。911 GTSは高精度で理解しやすく、一緒にダンスするように操れる。幸福感で勝る。

パワートレインにもそのモヤモヤが続く。AMGのティモ・ノードハイム氏が組み立てた4.0L V8エンジンは素晴らしいが、GTS仕様のエグゾーストを備えた、ポルシェの3.0L 水平対向6気筒ツインターボと比較すると、やや切れ味が悪く単調に思えた。

濡れた路面に後輪駆動だから、480psを解き放つことは簡単ではないものの、感覚的には濃厚。機械的なサウンドも心へ響く。アクセルレスポンスは鋭く、電光石火な変速が爽快さを一層強める。

説得力があるSL 55の完成度だが・・

ポルシェは、GTグレード以外の911に自然吸気エンジンを搭載しないことを決め、われわれを落胆させた時期もあった。しかし、気付けば息を呑むような高みに磨かれていた。M177型ユニットも傑作といえるが、3.0Lフラット6も出色だ。

パワーでも僅かに上回り、動力性能は素晴らしいのヒトコト。ワインディングが濡れていたとしても、ポルシェの方が速く楽しい。


レッドのポルシェ911 カレラGTS カブリオレとシルバーのメルセデスAMG SL 55 4マティック+ プレミアム・プラス

さて、有能な2台を乗り比べてみた今回の企画だが、SLはグランドツアラーからスポーツカーへ軸足をシフトしたのだろうか。911のグランドツアラーぶり以上に。

メルセデスAMG SL 55の完成度には、説得力があることは間違いない。それでも、ポルシェ911 GTSにも1日中運転していたいと思える心地良さと輝きが備わっている。最後に運転した高速道路でも、魅力では劣らないように感じた。

新しいSL 55のポテンシャルは高い。しかし、AMGが改良を加えられる余地は残されている。今後に控えた2代目AMG GTに並ぶ、操縦特性を与えることも不可能ではないだろう。その時には、フロントのドライブシャフトが省かれるかもしれない。

ポルシェ911とメルセデスAMG SLのスペック

ポルシェ911 カレラGTS カブリオレ(英国仕様)

英国価格:12万4800ポンド(約1996万円)
全長:4533mm
全幅:1852mm
全高:1300mm
最高速度:308km/h
0-100km/h加速:3.6秒
燃費:8.9-9.5km/L
CO2排出量:239-256g/km
車両重量:1615kg
パワートレイン:水平対向6気筒2981ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:480ps/6500rpm
最大トルク:57.9kg-m/2300-5000rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック

メルセデスAMG SL 55 4マティック+ プレミアム・プラス(英国仕様)

英国価格:14万7475ポンド(約2359万円)
全長:4705mm
全幅:1915mm
全高:1359mm
最高速度:294km/h
0-100km/h加速:3.9秒
燃費:7.8km/L
CO2排出量:292g/km
車両重量:1870kg
パワートレイン:V型8気筒3982ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:475ps/5500-6500rpm
最大トルク:71.2kg-m/2000-4500rpm
ギアボックス:9速オートマティック


レッドのポルシェ911 カレラGTS カブリオレとシルバーのメルセデスAMG SL 55 4マティック+ プレミアム・プラス