1994年に米・ニューヨーク州ハドソンリバー・バレーのパットナム郡で起きた、当時12歳だったジョゼット・ライトさんが強姦・殺害された残虐な事件の再審が始まった。

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この事件では、1997年、当時10代だった2人の男性(アンソニー・ディピッポとアンドリュー・クリヴァク)が逮捕され、それぞれ個別の裁判で懲役25年から終身刑を言い渡され、少なくとも20年服役した。ところが、2016年にアンソニー・ディピッポが再審で逆転無罪となり、賠償金1500万ドルでパットナム郡とニューヨーク州と和解。2021年に「Devil You Know」と題したローリングストーン誌の暴露記事が出ると、警察は近所でも有名な性犯罪再犯者に尋問していなかったなど、捜査に重大な落ち度があったことが明らかになった。そして今、残る1人のアンドリュー・クリヴァクが無罪放免をかけて再び陪審と向かい合っている。

パットナム郡地方検事局のロバート・テンディ検事は、今回も1997年の検察と同じ主張をするに違いない。クリヴァクとディピッポは、クリヴァクの父親のワゴン車でライトさんを縛り上げ、強姦して窒息させた後、森の中に遺体を捨てたのだ、と。その証拠として、クリヴァクの自供、ワゴン車に同乗して犯行を目撃したという女性の証言、ワゴン車から発見されたライトさんの2つの指輪を持ち出すだろう。1月18日(水)に始まった再審で、検事はこれら証拠が「ゆるぎない」ものだと述べ、クリヴァクが1994年10月3日にライトさんを殺したのは「明白かつ疑いようもない」と陪審に語った。

弁護側代理人のオスカー・ミシェレン氏とカレン・ニューワース氏は、クリヴァクは自供を強制されたと主張するだろう。目撃者とされる人物は起訴を逃れるために、刑事から言われた通りに話をでっちあげたのだ、問題の指輪はジョゼットさんのものではなく、母親もそれを認めている、と。さらに弁護側は、ジョゼットさんを殺したのがハワード・ゴンバートだと主張するつもりだ。性犯罪の前科があるゴンバートが、失踪直前にジョゼットさんを車に乗せていたという目撃証言もある。また女性たちを縛り上げ、さるぐつわをさせることでも知られていた。

弁護側は、検察が犯行日時を取り違えていると考えている。ローリングストーン誌も報じたように、1994年に宣誓陳述を行った2人の証人はコロンブス記念日の週末にジョゼットさんを地元のショッピングモールで見かけたと証言しているが、その日付は検察の言う犯行日よりも後だった。捜査官が証人に圧力をかけ、陳述を変えさせたというのが弁護側の言い分だ。

ジョゼットさんは1994年10月に生まれ育ったニューヨーク州カーメルから姿を消した。事件は1年以上進展がなかったが、1995年11月にハンターが近隣のパターソンの森で白骨化したジョゼットさんの遺体を偶然発見した。ジョゼットさんは両手を後ろ手に縛られ、口には下着が詰め込まれていた。

1996年7月、クリヴァクとディピッポが逮捕された。クリヴァクの弁護士ミシェレン氏は、2人の若者を容疑者に絞り込んでからプットナム郡保安官事務所は視野が狭くなっていた、と非難した。弁護側の主張によれば、逮捕にいたったのは別の若者が無関係の事件で罪を逃れるために、クリヴァクとディッポが森で遺体を発見したと話しているのを聞いた、と警察に証言したからだという。同じころ、ゴンバートから被害を受けた女性たちは、ジョゼットさんが失踪直前にゴンバートの車に乗っていたと警察に供述した。だがローリングストーン誌の報道によると、警察は一度もゴンバートに事情聴取を行わなかった。2021年、服役中のゴンバートにコメントを求めたところ、ジョゼットさん殺害は否定したものの、面識があったことは認めた。

検察側の重要証人だったデニース・ローズさんは、事件当夜にクリヴァクとディピッポの車に乗り込んで外出したが、車内にはすでにジョゼットさんがいたと証言した。自宅まで送り届けてくれとローズさんが言うと、2人は車を道端に停め、ローズさんが車内にいるにもかかわらずジョゼットさんに襲いかかったという。先のローリングストーン誌の報道で、ローズさんの父親は警察の事情聴取が6時間も続いたと語った。のちに本人も、捜査官から犯行の日時や場所などの情報を吹き込まれたことを認めた――犯行現場の写真を見せられ、「話のつじつまを合わせないと」逮捕するぞ、と脅されたそうだ。

2011年にディピッポは有罪判決を撤回されたが、2012年に再び有罪となった。2016年に行われた3度目の公判で複数のゴンバートの被害者が証言し、ディピッポは無罪放免となった。ローリングストーン誌も報じたように、ある女性は宣誓供述書で交際をそそのかされた時の様子を語った。当時彼女は12歳、ゴンバートは16歳だった。「彼は私にないものをひたすら与えてくれました。タバコとか、お酒とか」とその女性は語った。2人は性的関係を持つようになったが、ゴンバートは彼女を縛って無理矢理襲った。その際によく口に下着を押し込まれていたそうだ。知り合いの別の女性は、ゴンバートに似た覆面姿の男性から道路で声をかけられてレイプされた――もちろん下着を口に押し込まれて――と警察に通報した。襲撃があった日はジョゼットさんの失踪のわずか数カ月前だった。2021年、ゴンバートはローリングストーン誌との取材でこれら容疑をすべて否認した。

2016年の裁判では、複数の証人が偽証を強要されたと証言した。「向こうの汚いやり口に従うことにしました」と、そのうちの1人は証言した。「まるでお粗末な映画のようでした……『お前が嫌でも、こっちの聞きたい話をしゃべってもらうぞ』と言われました」

ディピッポが無罪放免を勝ち取ったゴンバート関連の証拠にもとづき、2019年にはクリヴァクに再審が認められた。2020年10月以来、クリヴァクは再審まで自宅軟禁下に置かれている。18日(水)、クリヴァクは公判前に地元メディアの取材に応じ、「気分は上々です。法制度を信じています」と語った。

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