実家暮らしをするアラフォー世代の考えは?

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 日本には昔から、「自立=親と離れて暮らす」という考え方があります。就職後すぐ、あるいはある程度、社会人として年数を重ねた後は1人暮らしをするのが当たり前のように思われがちです。しかし、アラフォー世代になっても、実家暮らしを続ける人が一定数いるのは事実で、そうした人たちに対する見方もさまざまです。では、具体的にどのような意見があるのか、いくつか紹介したいと思います。

「甘えている」と言われたことも

 まず、実家暮らしをしている未婚の人たちから。Aさん(37歳、男性)は金融系の会社に勤めていて、年収1000万円前後です。さぞ、ウハウハな暮らしをしているかと思いきや、「趣味は貯金」というだけあって、実際は質素な生活をしています。

「結婚できれば、すぐにでも家を出ようと思っていましたが縁がなく、ズルズルとこの年まできました。『実家暮らしは居心地がいい』ということもありますが、むしろ、『家を出る理由がない』という方が大きいです。職場は実家から通える距離で貯金はたっぷりできるし、金銭面でわずかばかりでも両親の助けになればと、家に入れる生活費も多めにしているつもりです。両親は70歳を超え、僕がいることでサポートできることも多いので、ますます実家にいた方がいいかなと…」(Aさん)

 しかし、その生活にやや引け目を感じているのも事実だそうです。

「いい年をしたおじさんが親と同居っていうのもなかなか格好悪いかなと…。昔はたまに合コンに参加していたのですが、『親と住んでいる』と言うと引かれてしまいそうな気がして、だんだんと行かなくなってしまいました」

 フリーターを続けながら、ミュージシャンとして成功することを目指すBさん(41歳、男性)は実家のありがたみを痛感しています。

「20代の頃から、親元を離れて1人暮らしをしていましたが、30代半ばで実家に戻りました。家の手伝いはもちろんしますが、1人暮らしに比べて圧倒的に生活が楽になりました。今は作曲や楽器の練習など自分の活動の時間をなるべく多く取りたいので、本当に助かっています。

実家暮らしが世間からどう思われているかは人一倍意識しますし、面と向かって『甘えている』と言われたことも一度や二度ではありません。本当にその通りだと思いますが、今は『恥を忍んでも自分のやることを優先すべきだ』と自分に言い聞かせています」(Bさん)

 AさんもBさんも「実家暮らしでいいでしょ!」と開き直りきれない後ろ暗さを感じているようです。

 一方、公務員のCさん(43歳、女性)はAさんと同様、結婚したら家を出ようと考えつつも縁に恵まれず、実家暮らしを続けてきましたが、「周りの目は気にならなくなった」と話します。

「『結婚しないのか』『親元を離れて暮らさないのか』という目で散々見られてきて、20代、30代の頃は心底、気に病んでいましたが徐々に達観して、最近ではほとんど気にならなくなりました。この年になって、結婚をほぼ諦め、デンと構えるようになると、自然と周りも気軽に接してくれるようになったと感じます。もちろん、未婚アラフォー女性に対する気遣いはさせてしまっていると思いますが」(Cさん)

 実家暮らしをしている人は世間の目を気にするあまり、自意識過剰に陥ってしまうことも考えられますが、Cさんのように泰然と構えられれば、心安らかな境地が手に入れられるかもしれません。

実家暮らしの男性を「マザコンでは?」と警戒

 では、1人暮らしをしている人からの見方はどうでしょうか。1人暮らし歴が約20年のDさん(38歳、男性、未婚)は実家暮らしには肯定的です。

「特に思うことはありません。強いて言うなら、『うらやましい』かな。私は学生時代に上京して、ずっと1人暮らしですが、学校も職場も実家から通える範囲にあるなら、実家暮らしがよかったです。実家暮らしの仲のよい同僚がいて、飲みに行くと急に決まったときや朝まで飲むとき、実家に一報を入れるのを見ていて、若干『面倒そうだな』と感じることはありますが、本当にそれくらいで。いってみれば、実家へ最低限の気遣いをする程度の煩わしさで済むのですから、やはりうらやましいです」(Dさん)

 一方、別の見方もあります。こちらも1人暮らし歴約20年のEさん(40歳、男性、未婚)です。

「実家暮らしの人はまとっている雰囲気が違うので分かります。どこか、のほほんとしたところがあるというか。それはそれで長所かもしれませんが、一緒に仕事をやるとなると難しいものを感じます。同じように『やるぞ!』と意気込みはするものの、根っこの部分でテンションが合わない、具体的には『必死さが足りない!』と感じる経験が何度かあり…」(Eさん)

 それが先入観からなのか、真実を言い当てているのかは定かでありませんが、少なくともこう感じる人はいるようです。

 もうちょっと過激な声もあります。Fさん(38歳、男性、既婚)は「実家暮らしの男性はよくない」とはっきり言います。

「『男性は1人暮らしをして、自活する苦労を経験して、やっと一人前になれる』と思っています。実家暮らしをしている男性を見ると、どうしても『甘えている』と思ってしまうのです。自分は学生の頃、生活費のためにバイトをして、奨学金で大学を卒業したので、その反動から、全く対極にいる実家暮らしの人に非難の目を向けてしまいがちなのかなとも思っています」(Fさん)

 Gさん(35歳、女性、未婚)も1人暮らしですが、また違った切り口で見ています。

「女性の実家暮らしは『家族(親)と一緒に過ごせていいな』と思います。男性の実家暮らしは基本的に『いいな』ですが、結婚相手として見たときはいったん警戒します。『生活力はどれくらいあるのだろう』『ひょっとしてマザコンではないだろうか』などと思ってしまい、特に、長男で実家暮らしをしている人に対しては『家族に対して、わがまま放題じゃないかな?』と最大レベルの警戒をします。過去に交際した男性で痛い目を見ているので(笑)

現在、絶賛婚活中なので、出会う男性は皆、『将来の伴侶となり得るか』という目で見てしまいます」(Gさん)

 Gさんは個人的体験に基づいて、「実家暮らしの男性は結婚相手として、地雷の可能性が1人暮らしの男性に比べて高い」という説を自分の中に構築しています。とはいえ、「懸念する事項がクリアされれば、もう何も心配はありません」(Fさん)とも話しているので、実家暮らしそのものがマイナス材料というわけではないようです。

 総務省統計研修所が2017年に公表した分析によると、アラフォー世代にあたる35歳〜44歳未婚者の親との同居率は1980年に35歳〜44歳の全体人口のわずか2.2%でしたが、2015年には17.0%となっています。このデータを参考にするなら、“未婚者の親との同居”に対する価値観も現代では昔と比べて、それなりに変わってきていると思われます。そのためでしょうか。今回聞いた声を通じて、“未婚者の親との同居”について理解を示す声が意外にも多かったという印象を受けました。