「道をふさいでいて邪魔だったので『どけろ』と言ったら、生意気なことを言ってきたので蹴った。腹が出ていて蹴りやすかった」

【画像】犯行現場となった札幌市内の道路

 蛮行を働いた男は取調べに対し、反省するでもなくそのように述べたという。

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 6月23日、札幌南署は札幌市に住む無職の男・A(51)を暴行の疑いで逮捕した。Aは4月13日の午前7時半頃、札幌市内の路上で、20代の妊婦の腹部を足で蹴ってそのまま立ち去ったが、防犯カメラの映像などから特定に至った。


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 社会部記者の解説。

「現場近くに住むAは、7歳と5歳の子供を連れていた、当時妊娠7カ月の女性に言いがかりをつけて暴行に及んだ。幸い、胎児に影響はありませんでした。被害者もAに言い返したようですが、妊婦だと認識した上で暴力をふるっているので犯行は悪質。粗暴犯で、過去にも傷害事件を起こしていることから、逮捕に至った。ただ、所持金が少なく逃亡の恐れがないため、現在は釈放されました」

 Aとはどんな人物だったのか。自宅アパートの近隣住民が語る。

「彼は生活保護を受給していたようですが、昼間から酒を飲み、毎日のようにパチスロに興じていました。建築現場で日雇い労働をして働くこともあったようです。アパートの同じ階の方は『米を買う金がない』『灯油を買う金がない』などと理由をつけて、お金を無心されることもあったとか。一度貸したお金も戻ってこなかったみたいです」

父は裁判所の事務官、母は1万円を残して家出

 今はその日暮らしのAだが、以前は札幌市内のマンションで両親と一緒に30年近く暮らしていた。父は裁判所の事務官、母は専業主婦という家庭で、兄と妹の3人きょうだいだった。

「兄と妹は早くに独立したのですが、Aさんはてんかんの持病があり、定職にはついていなかったようです。よく怒鳴り声や大きな物音が聞こえてきて、Aさんが暴れているんだなと思っていた。6年ほど前にお父さんが亡くなってからは、お母さんと2人で暮らしていたのですが、やがてお母さんも限界を迎えてしまって。3年前に置き手紙と1万円を残し、家出してしまったんです」(実家の近隣住民)

 母親はその後、マンションの部屋を売却。居場所がなくなったAが2年ほど前に行き着いたのが、現在住んでいる家賃3万5000円のアパートだ。Aを何度か現場で使ったことがあるという道内の建築関連会社の社長は、次のように話す。

「とにかく変わった人でしたね。フェイスブックを出会い系サイトと勘違いしていて、休憩時間に急にアカウントを作り、すすきののニュークラブの女の子たちに友達申請をしまくっていた。外国人の不法就労で3年前に逮捕された暴力団組員に使われていたこともあったし、金には困っていたようです」

 別の知人が続ける。

「現場に派遣すると、だいたいクレームが来てしまう。派遣先から苦情が来なければラッキーという感じでした。お金が無くなると泣きついてきたり、『俺を仕事で使わなかったら覚えとけよ』とか、脅迫めいた留守電を残したりもする。金が入ると現場をドタキャンすることもよくありました。プライドが高く、ちょっとでも見下されたと感じると、すぐに癇癪を起こすタイプです」

Aの携帯に電話すると……

 家族とは疎遠になっており、東京に住む兄はAの電話に一切出ないという。

「それでも、ずっと面倒を見てくれていたお母さんのことは気にしていて、『母を探してくれ!』と警察に何度も相談していた。ただ、お母さんに手をあげることもあったようで、家出もそれがきっかけ。置き手紙には『最近のあなたは何を考えているかわかりません。もう一緒に生活できないと思いました。人に振り回されず、自分を持って生きていってください』と書いてあったそうです」(同前)

 Aの携帯に電話し、事件について尋ねると、「知らないよ、そんなの。冗談じゃない、電話なんかよこすなよ。取材なんか受ける気ないぞ、俺は」と告げられ、そのまま切れてしまった。

 事件後、動機について「バカアホ扱いされてカッときた」と周囲に話していたというA。どんな理由があろうとも、身重の女性に対する一方的な暴力が許されることなどない。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2020年7月9日号)