「癖」はなおらない

写真拡大

 束の間の「勝利の余韻」に酔おうとしても、あの国が簡単にそれを許すはずがない。GSOMIAの破棄は回避されたが、残念ながら韓国の嫌がらせはこれからも続くという。

 ***

 二日酔いは懲り懲りなので二度と深酒はしない、明日からは決して遅刻しない、気になるけど傷跡が残るのでかさぶたはもう剥がさない。

 そう誓ってはみるものの、やっぱりもう一杯頼んでしまうし、二度寝の誘惑からは逃れがたいし、ついついかさぶたをめくってみたくなる。人間の「癖」はそう簡単になおりはしない。

 またか……。

「困ったお隣さん」である韓国の振る舞いを見て、そう感じている方が多いのではないか。GSOMIA(軍事情報包括保護協定)問題が片付いたと思ったら、早速、韓国が日本に因縁を吹っかけてきたのである。

「癖」はなおらない

「日本が韓国を、輸出管理で優遇措置をする『ホワイト国(現在の呼称はグループA)』から外すと決定したことを受け、韓国は『対抗措置』としてGSOMIAを破棄するとやり返してきたわけですが、GSOMIA問題は日本の『完勝』でした」

 と、まずは外務省担当記者が経緯を振り返る。

「外務省の幹部は、『GSOMIAがなくなっても、例えば北朝鮮のミサイル関連情報が取れなくなるわけでもなく、特に日本に実害はない。でも、GSOMIAは対北朝鮮、対中国において象徴的意味合いを持つから、できれば破棄は避けたい』と語っていました。しかし、韓国と直接交渉をしても埒が明かない。そこで、米国から圧力をかけてもらうことにしたんです」

 それが功を奏し、破棄するのか継続するのかが決まる失効期限の11月23日午前0時直前になって、韓国は破棄を凍結、つまりGSOMIAを「やめるのやめた」と方針転換。しかも併せて韓国は、日本が同国に対して行った輸出規制をWTO(世界貿易機関)に提訴するとも息巻いていたのだが、米国からの「脅し」がこたえたのか、これも「とりあえずやめる」と引き下がったのだ。

 対する日本は、何も譲歩していない。「完勝」たる所以(ゆえん)である。その勝利の美酒にしばし酔いしれようとしていた矢先のことだった。同月24日、早くも韓国は「癖」を露(あら)わにしてきたのだ。経産省が輸出管理とGSOMIAは別物で、当面、規制は維持されると発表したことを受け、「GSOMIAを巡る日韓合意に関して、日本側は嘘の発表をしている」「抗議し、日本は謝罪してきた」と……。無論、その翌日に菅義偉官房長官は、「発表内容の骨子は、韓国政府と事前にすり合わせた」「政府として謝罪した事実はない」と否定している。日本が「動画」という決定的証拠を開示しているにも拘(かかわ)らず、なお韓国が「挑発してきたのは日本」と嘘を言い続けた昨年末の「レーダー照射事件」が思い出されるばかりである。

「言った、言わない」という“寝技”

 兎(と)にも角(かく)にも、再びの韓国によるイチャモンによって、せっかくの美酒の味は苦いものになってしまったのだった。その上、

「これからも韓国が嘘を言い募り、自分たちの正当性を主張してくることは間違いありません」

 と、美酒に酔うのではなく「懲りないコリア」に警戒すべきと釘をさすのは、『悪韓論』(新潮新書)の著者で評論家の室谷克実氏だ。

「元来、韓国という国は『恨(ハン)』の思想を持っていて、何かにつけて『日本が悪い』『米国が悪い』となりがち。今回も必ず日本に仕返しをしてくるはずです。一番考えられるのは、『GSOMIAの継続を決めたのは、我が国をホワイト国から外していたが、それを元に戻すと約束したからだ』との嘘を対外的に言いふらすこと。もちろん、日本はそんな約束はしていないわけですが、『言った、言わない』という“寝技”の論争に持ち込むのは韓国の得意技ですからね」

 韓国出身で拓殖大学教授の呉善花氏は、そのココロをこう読み解く。

「韓国大統領府は、今回のGSOMIA破棄の停止は『いつでも協定の効力を終了させることができる前提のもと』でのものだと発表し、あくまで主導権は自分たちにあり日本より立場は上であるとの姿勢を崩していません。なぜなら、ホワイト国から除外されたことでプライドを大きく傷つけられたからです。ソウルでのデモでは、参加者が『経済侵略』という言葉を使ったほど。その損なわれたプライドを保つためにも、上から目線の物言いが必要なわけです」

 そしてプライドに留まらず、

「ホワイト国除外で韓国の国際的イメージも損なわれました。ですから、来年4月の総選挙までに、文在寅(ムンジェイン)大統領としては何とかしてホワイト国に戻してほしいと考えているんです」(同)

 また龍谷大学教授の李相哲氏は、上から目線の「いつでも」発表そのものが、文政権の「嘘つき体質」を物語っているという。

「そもそもGSOMIAは自動的に1年間延長され、『いつでも』破棄できる性質のものではない。仮にその途中で破棄したら、国家間の協定を反故にするわけですから、日韓関係の破綻を覚悟しなければなりません。つまり、『いつでも』というのは、国内外に向けた強がりのパフォーマンスであり嘘と言えます」

 こうして識者の解説に耳を傾けてみると、いまさらながら「GSOMIAの勝利」に浮かれている場合ではないことを思い知らされるのである。

五輪の安全性に問題!?

 では、韓国は、これからどんな対日姿勢を取ってくるのだろうか。前出の李教授は、

「GSOMIAの継続は、この問題が起きる前の状態に戻っただけのことで、日韓関係は何も変わっていない。徴用工問題に関する交渉をようやく始められるようになったに過ぎません」

 と、現況を分析した上で、韓国の出方をこう読む。

「とはいえ、韓国側が現実性のある妥協案を示すとも思えず、日本側も譲歩しない。そうなると、韓国は別の問題を日本に仕掛けてくるはずです。例えば、福島第一原発の処理水の問題を再びフレームアップし、東京五輪の安全性には問題があると、国際世論に向けたネガティブキャンペーンを展開する可能性は大いにある。五輪会場に旭日旗を持ち込むのはけしからんということも、これまで以上に声を大にして主張してくるかもしれません」

 さらに前出の室谷氏曰く、

「来年の総選挙で与党が大敗すれば、文大統領は支持率アップのために東京五輪のボイコットすら言い出しかねません。『放射能に汚染された五輪は危ない』『我々は正義のために五輪を辞退する』と」

 再び李教授が指摘する。

「福島第一原発と東京五輪を関連付けようとする韓国の主張を、『馬鹿げている』と高を括(くく)り、放置してはいけません。韓国はこうした情報戦に長(た)けていますから、日本は今から対応策を準備しておくべきだと思います」

 言わずもがな、五輪はGSOMIAとも、また徴用工問題とも全く別次元の話である。それを一緒くたにされても……。

「週刊新潮」2019年12月5日号 掲載