充電1回で100km走行、トヨタ「超小型EV」の実力

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 トヨタ自動車は17日、1回の充電で約100キロメートル走行可能な電気自動車(EV)「超小型EV=写真」を2020年冬ごろに発売すると発表した。高齢者の買い物や法人の巡回訪問など、近距離移動向けを想定して開発した。歩行支援向けのEVも同年から順次発売する。EVの利用や新たなビジネスモデルを検討する法人や自治体は、現時点で100程度に上るという。

 超小型EVは乗車定員が2人で、最高速度は時速60キロメートル。サイズは全長2490ミリ×全幅1290ミリ×全高1550ミリメートル。充電時間は約5時間とした。歩行領域を支援するEVでは座り乗りや立ち乗り、車椅子連結タイプをそろえた。企業や自治体と連携してEVの普及を加速させ、新たなビジネスモデルの創出につなげる。

 トヨタはEVを販売するにあたり、リースを充実させ車両を確実に回収する方針。使用後の電池の状態を査定した上で中古車として流通させるほか、電池の再利用も検討する。充電や保険など周辺サービスも整備する。
日刊工業新聞2019年10月18日

仲間づくり加速 
 トヨタ自動車とスズキが資本提携を決めた。協業関係をさらに発展させ、両社の関係をより強固にするのが狙いだ。小型車やインド市場の攻略などを含め、より全方位で技術や市場をカバーしたいトヨタと、ハイブリッド車(HV)などの環境技術や自動運転といった次世代技術の開発力を求めるスズキ。競争が激化する自動車市場に対する両社の危機感が、一層の関係深化を後押しした。

 トヨタのスズキへの出資は「仲間づくり」の一環だ。自動車業界はCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)と呼ぶ次世代技術が台頭。米グーグルといった大手IT企業を中心とした異業種も巻き込み、競争が激化している。新技術に対応するための開発負担は重く、1社単独で生き残るのは厳しくなっている。

 トヨタの協業の姿勢は「ウィン―ウィンであれば基本的にはオープン」(トヨタ首脳)だ。ただし単に規模を追う“数合わせ”ではなく「部品やパワートレーン単位など、どこかで実際の連携が起きなければ意味がない」(同)。そこで資本提携のもう一つの狙いとして浮かぶのが、スズキが得意とする「安価な小型車づくり」の自社への取り込みだ。

 走行性能ももちろん重要な要素だが、自動運転やシェアリングなど車の使われ方が変わる中、これからの車ではニーズがサービス軸にシフトする。ソフトウエアや人工知能(AI)、センサーといった新たな技術分野への投資が大きくなり、そうなれば今以上に車を安く作る必要性が高まる。

 トヨタはこれまでも、お家芸であるトヨタ生産方式や原価低減で低コストのクルマ作りに取り組んできた。しかし「ともすれば過剰になりうる品質要求で、トヨタ車はまだまだ高いとのイメージがある」(トヨタ関係者)。安価な小型車を作る点ではスズキに強みがある。

トヨタ電動車普及チャレンジ
 さらにトヨタは、目的地までの最終短距離移動「ラストワンマイル」を担う超小型EVを、EV普及の一つのカギと捉える。スズキは18年にトヨタとマツダ、デンソーなどが参加するEVの基盤技術開発会社「EV C・A・スピリット」にも加わった。今回の自動運転分野での協業と合わせ、小型EVでスズキの車づくりの知見を生かせれば、競争力をより高められる。

 出資比率のさらなる引き上げも想定されるが、トヨタ側は「今回の出資で協業の十分な体制が整った」とする。豊田社長も「従来のような資本の論理で仲間をつくるのは通用しない。互いの理念を共有することが求められる」との考えを示す。

 16年の協業検討開始時、豊田社長はスズキの魅力として「変化に対応する力」と「周囲を巻き込む力」を挙げた。この二つは、CASEを軸とする新時代に「モビリティーサービスプラットフォーマー」を目指すトヨタにとって欠かせない要素だ。トヨタは国内を中心とした陣営拡大により足場を固め、「100年に1度」と呼ばれる産業構造の変革を乗り切る構えだ。